ついに浦安でも...なんてね
どうやら浦安市内で新型コロナウイルス感染症COVID-19に罹患した市民が確認されたようだ。そういえば一日に何度もサイトにアクセスしてくる人がいるが、もしかして浦安市役所の職員か?
以下は私感。
浦安市のサイトを見た限りでは、行政として様々なことを想定していたようで、市民への情報発信が早い。
とはいえ、もう少し落ち着いた方がいい。今回の患者は感染のリンクを追跡することができている。
市民に対して冷静になれと言っている浦安行政が激しく動揺しているように感じる。これでは市民の方が不安になる。
ただ、浦安市は人権への配慮というページまで作って公開しているが、確かにそれは必要だな。
例えば保育園や小学校、児童育成クラブで感染者が確認された場合、誰が最初に新型コロナウイルスの感染が確認されたのかを保護者の中で詮索することだろう。
8割の感染者にとってこの感染症は風邪程度だ。というか本人にとっては風邪だな。
しかも、子供たちの場合には軽症か無症候が多い。
それなのに風邪にかかって、世帯もろとも他者からイジメや陰口を叩かれるような事態にならないように行政や教育現場が対応する必要がある。
COVID-19の場合には、重症化や重篤化といった個別の状況と、全てではないが一人から多くの人たちにウイルスが伝播するという集団としての状況、その両方をケアする必要がある。
街の行政においては、市民が新型コロナウイルスに感染するという前提の下で、集団でのウイルスの伝播を可能な限り食い止め、重症例あるいは重篤例を救うという冷徹さも必要になる。
市民と行政とのインターフェイスを担う市職員として、その考え方は時に辛く、市民からの相応の突っ込みもあることだろう。それでも耐えてほしい。
また、すでにデータが蓄積し、重症化あるいは重篤化しやすい人たちの層が高齢者や基礎疾患を有する人たちであることは分かってきている。
日本はまだのんびりしていて、70代を中心としたシニアやマスコミ等がPCR検査を何とかと文句を付ける余裕があるが、他国ではすでに戦時下のシステムに移行していることが珍しくない。
それは国家とウイルスとの戦争という意味なのだろう。それなのに、我が国には同じ日本人の足を引っ張ろうとする人たちが目立つ。
しかも、その人たちの多くが、私の親の世代であることに絶句する。
今回の場合、高齢者が日本の対応を批判したとして、それらの行動によって日本の対応が遅れたり医療が崩壊したら、結果として困るのは高齢者だ。
もちろんだが、シニアにも徳があって敬服に値する人は多い。だが、同世代が明らかに偏った行動に出ているのに、どうして止めたり反論しないのか。
ツイートを眺めてみれば、体制批判のアジテーションに絡めた罵詈雑言が多い。
この人たちは自らの主張を通して社会を壊すつもりなのか。70年近く生きてきて、人生で得た考え方がそれなのか。
感染症対策において原発を引き合いに出す必要はあるのか。どのようにリンクしているのか。感染症対策を体制批判に繋げたいのか。
繰り返しになるが、高齢者が重篤化あるいは死亡に至ることが多い状況では、日本の対応を批判しても仕方がない。
医療関係者でさえ専門外であれば間違ったこと言う時があるのに、ワイドショー等の情報を真に受けて主張を展開することは避けるべきだ。
また、今回の感染症は公衆衛生や人的被害というレベルではなくて、世界レベルでの経済的なダメージを生じることが間違いない。
そうなると、マスコミを支えるスポンサーにも当然ながら損失が生じるわけで、スポンサーが広告費用を削ることになって困るのはマスコミだろう。
ここから一気に浦安市というローカルな話になるのだが、うちの子供は児童育成クラブ、いわゆる学童に通っているが、多数の子供たちが狭い空間に入れられている。
厚労省からも子供と子供の距離を離すようにアナウンスがあったはずだが、この対応で子供たちの距離を保てると思うか。
せっかく小学校が休校しているのだから、浦安市は休校中の小学校の校舎を使って学童保育を行えばよいではないか。
学童に通っていない子供たちのために校庭を開放しているようだが、どのような線引きなのかが分かりかねる。
共働き世帯が今回の休校でいかに苦しんでいるのかを、浦安の行政は理解しているのだろうか。
学童の施設に多数の子供たちを受け入れた状態で一人でも検査で陽性者が出たら、浦安市はその施設を閉鎖することだろう。
そうなると、共働きの世帯の場合には子供たちを預ける場がなくなり、勤務状況にも影響を生じる。
浦安市は、そこまで考えているか。
このような状態を続けていて学童で感染者が確認されたら、その子供はずっと心の傷を抱えるのに、浦安市の行政は配慮しないのか。
あくまで一人の市民として、そして政治的な意味を排除した上で言わせてもらうと、市長が交代した後の浦安市は、地道かつ堅実に行政を続けてはいるが、突発的な事象に対してあまり強くない気がする。
それは先の大型台風の時においても感じたことだ。市長というよりも市職員がトップダウンに慣れすぎてはいないか。
彼ら彼女らにはもっと高いポテンシャルがある。ベテランの管理職は責任をとることにして、中堅や若手の力を発揮すればいい。
まず、この状況において大切なことは、市の担当課の区分についてこだわらず、市庁舎の中で頭の切れる優れた職員たちを市長や副市長の直轄、つまりブレインとして配置すること。
イエスマンは必要なく、とりわけ情報収集やデータ分析で技能を有している職員が必要だ。
次に、浦安市内において感染者の集まりであるクラスターの発生を注視すること。
新型コロナウイルスの伝播様式としては、クラスターを形成しながら感染を広げるという特徴がある。
市内で1人の感染者が認められただけで慌てる必要はない。国が策定したガイドラインに基づいて対応するのみだ。
ただし、クラスターを形成していた場合にはデータに基づいて封じ込めに入ることになる。
クラスターの分析においては地理情報システム(GIS)による局所的な動態解析が役立つかもしれない。浦安市にはこの技術に秀でた職員がいる。
浦安市内には保健所がないので、市川保健所が積極的疫学調査を実施するはずだが、その間に浦安市はクラスターが生じた場合の対応を考えておくことが大切だな。
浦安市にはディズニー関連のホテルがたくさんあって、今は客がいなくて空いているが、クラスターを丸ごと隔離するといった話に応じてくれるような気がしない。
ここで焦ってクラスターごと入院させたりすると医療に負荷がかかる。
そうなると、クラスターを構成している市民は自宅待機という話になるかもしれない。
自宅での待機の場合、浦安の行政はどこまで市民を支えることができるのか。食品や日用品を自宅まで届けるのか、あるいは情報面でサポートするのか。
また、クラスター発生時に、浦安市は市民に対してどのように情報を伝えるか。それも重要だな。
過度に不安を煽るアナウンスはよろしくないが、中身のない安心を振りまくこともよろしくない。
浦安市の場合、今回の対応におけるエビデンスとしては、国や県からの情報に基づいていることがほとんど、というかかなり綺麗にトレースしているので、おかしな舵取りになるとは思えない。
それと、浦安市としてもテレビや新聞から情報を集めていると思うが、それらの情報をあまりに受け取ってしまうと動揺するので、信頼がおける一次情報を中心に戦略を立てた方がいい。
そのようなデータ分析に長けた職員は、浦安市役所にたくさんいる。職位に関係なく、そのような人たちでタスクフォースを編成して、できる限り幹部の近くにおいて参謀にした方がいい。
イエスマンや周辺自治体の動向ばかり気にする職員は参謀には向かない。
わずかな判断の遅れが結果に影響することを考慮し、幹部の思い付きではなくて、明確なエビデンスの元に方針を決定するわけだ。
ところで、ツイッター上では「ついに浦安にも...」という趣旨のツイートが増えているが、これだけマスコミやネット経由の情報がアレだと、そう信じてしまうのも止むをえまい。
しかし、これらの市民は何かを勘違いしているようだ。
これまでも、浦安市において新型コロナウイルスに対する十分な防壁が存在していたとは思えない。
ディズニーに人が集まり、市民と観光客を含めた人口密度が非常に高い状態で、浦安市民は生活を続けてきた。
それが何を意味するかは分かるだろう。
春節の時期には多数の中国人等の観光客が公共交通機関を使ってバリアフリーなディズニーにやってきて、ホテルに滞在し、街中を歩いていたわけだ。
当時の日の出地区は、ここが日本なのかと思うくらいに外国人がとても多かった。
また、今でも浦安市民の多くは混み合った電車に乗って、東京都内に出勤し、働いた後で浦安に戻ってくる。
昼間には明らかにリスクが高いはずの高齢者が浦安市内を出歩いていて、マスクだかティッシュだかの購入のために行列に並ぶことも多かったようだ。
平日の浦安市内の動態について私は知らないが、今回ほど高齢者の存在の大きさを感じるインシデントは経験したことがない。元気だな。
この状況では、感染者の発生を未然に防ぐこと自体が不可能だったわけだ。それでも、現状が維持できている。
その理由が、市民の行動変容なのか、イベントの中止なのか、施設の閉鎖なのか、あるいは街のデザインそのものなのかは分からない。
しかし、浦安市内でリンクを追うことができる感染者が確認されても、浦安行政が動揺する必要はないと思う。
この状況で足りない部分が出てくるのは当然のことだ。それらを随時修正しながら、より気を引き締めて対応するだけの話だ。
ただし、リンクが追えない散発例、さらにはクラスターの発生については気をつけた方がいい。
クラスターがさらに大きくなってメガクラスターを形成した時、大きな脅威がこの街にやってくる。
市としてのマスクや消毒薬の備蓄は十分とはいえず、保育園や学童の感染防止策は甘いように感じる。
保育園や学童のスタッフは必死になって頑張っているのに、浦安市が背中を守っていると言えるだろうか。
浦安市や千葉県の場合には政府との繋がりが強いようなので、崖に向かって突っ走る蓋然性は低いと思うけれど、自治体のトップの方針によって医療崩壊が近づいている自治体まで見受けられる。
むしろ、浦安市や千葉県の場合には、上からの連絡を待っている間にレスポンスが遅れることを懸念している。首長だけの話ではなくて、実働となる職員がいかに対応しうるかどうか。
感染しても8割の人たちは風邪程度で治癒する。治癒した市民には免疫が賦与される。しかし、集団免疫は数年のタームになるし、かなりの長期戦になることを覚悟した方がいい。
それと、くどいようだが、新型コロナウイルスに感染した人が全て周りに感染を拡大するわけではなくて、一部の人からクラスターが生まれる。
つまり、クラスターの発生を見極めることが重要なプロセスになる。
この状況では、浦安市としてのアクションは限られているし、これまでも市内のイベントの中止や施設の閉鎖など、可能な限りのことを続けてきたと思う。
学童の状態はお世辞にも優れているとは思えないし、足りない部分も散見されるが、完璧な対応は困難だ。それでも、今後も人の集まりをコントロールすることは大切だな。
また、浦安市がオーバーリアクションをとって市民にパニックを起こさないよう、しかし若い世代を中心として楽観的にならないように注意を喚起する必要がある。
いや、むしろ、シニア世代が楽観的にならないことが重要かもしれない。
私には新浦安のことしか分からないが、元町のシニアはどのような感じなのだろう。リスクが高いはずなのに、自分は関係ないとでも思っているのだろうか。
最後に、これは浦安市に限ったことではないが、日本の医療は平時でも余裕がない状況だ。とにかく医療機関をパンクさせないこと。
市内には大きな病院が数える程しかなく、中規模の病院が数か所。クリニックにも限りがある。働き盛りの世代が多い街ではあるが、かなりの数の高齢者が生活していることも確かだ。
市民が全く感染しないように防御するというフェーズはすでに終わり、重症あるいは重篤な患者をいかに救うのかという点について考えるフェーズになっている。
ウイルスが自分で家の中まで入ってくるわけではないし、8割の人にとっては風邪と変わらない。
検査で陽性が出たとしても、症状が軽ければ慌てて入院を要求する必要もないことだろう。
市民が混乱して医療機関に負荷をかけるという事態、および厳しい容態になった場合に市民が治療を受けられないという事態は避けねばならない。
一方で、浦安市の行政としてはこれらの事態が生じる可能性から目を背けず、千葉県と連携を密にしておく必要もある。
それにしても...自治体の首長という存在は、市民を守る上でとても大切なのだな。つくづくそう思う。