2019/10/31

5年後のターンオーバー

私たちが住む浦安市について関心のない人たちにとっては何だそりゃという話かもしれないが、今年になって「浦安市新総合計画」というプランが策定されて、実際のアクションに向けて動いているようだ。


しかし、とても大きな話だと思うけれど、割とスルーされているように感じることがある。

行政も市民もこの課題にフタをして斜め上を行く議論を重ねている気がしてならない。

それは、日本トップクラスの財政力を有している浦安市の財政が、令和6年度以降は収支が赤字になるという試算。

新総合計画案にその旨がさりげなく記載されていて気になったが、市議会の関係者が指摘することで具体的な額を開示したようだ。

現状のサービス等を維持していたら、わずか5年後に14億円の赤字。

赤字は年々増えて、10年後には60億円を超える赤字が出るそうだ。これらの赤字は単年度の金額。

この事態について広報うらやすや市のホームページで書かれていたかどうかは知らないが、市内のインテリ層の間では5年以上前から話されていたことだ。

最近になって、小学校や中学校の大規模修繕が止まり、他の事業もシビアになったので、個人的には「始まったか...」と感じていた。

浦安市の財政の大きな柱は市民からの税金によって成り立っていて、必ずしもディズニーや鉄鋼団地といった法人からの税金に大きく依存しているわけではないと理解している。

働き盛りの市民が老いてくれば固定資産税はともかく市民税の税収は減るし、街の施設等も老朽化すれば修繕するための予算が必要になる。簡単な計算ですぐ分かることだ。

市民税の減収はやむを得ないとしても、これだけ多くの市の施設があるのだから地道に修繕しておかないとしわ寄せがやってくるということを、市の行政は考えていたかどうか。

年齢分布が偏っている若い街は、時間が来れば一気に高齢化する。その対応にも人手と金が要る。

パンとサーカスというわけではないと思うが、遠くの将来を見据えずに近くのことを考えて、市民受けする施設やサービスに予算を使ってきた結果だと言わざるを得ないし、その勢いを後押ししたのは市民だと言われても仕方がない。

そしてこの街の市民はこの街を気に入り、信頼し、同時に行政への関心を失っていったのだろうか。

あまり踏み込むと政治的マターになって恐い顔をした人たちが寄ってくるので言わないが、賛否両論の音楽ホールの費用で毎年4億円程度。

今になって始めたがそれまでのふるさと納税での減収が毎年4億円程度。減収は毎年のように増えている。

最も新しい昨年度のデータが出れば、さらに深刻な減収になっていることだろう。

不可能ではあるがたとえそれらのマイナスを完全に取り去って、さらに市の入札の条件を絞って節約したとしても、令和6年度の赤字を乗り越えられるかどうかという計算ではないだろうか。その後の赤字はさらに増える。

そのような時に頼りになるのは、各世帯での貯金に相当する財政調整基金だが、最近では130億円くらいあったはずだが、令和元年度末の残高は約74億円まで減少すると浦安市が公開している。

その理由を知っている子育て世代はほとんどいないことだろう。そもそもこの試算において74億円では収支のバッファになりえない。

では、これからの5年間で浦安市の歳入を大幅に増やすことができるのかという話になるが、それが可能ならどの自治体も苦労はしない。以降はあくまで私感でしかないが、おそらく手遅れだと思う。

なぜなら、浦安市の財政の柱が市民からの税金だとすると、これまでのように働き盛りの世代、とりわけダブルインカムの高所得世帯を首都圏から引っ張るというストラテジーになるが、もはやマンションの建設のための土地はあまり残っていないし、老朽化した団地を順次建て替えるにはタイミングが早く5年では時間が足りない。

しかも、先ほどの試算というのは現状のサービスを続けた場合ということなので、新規事業が含まれていないことが推察される。

新規事業を諦めるか、従来の事業の一部を凍結して新規事業の予算を捻出するか。もしくはそれが可能なのかどうか。

最も気になるのは子供たちが育つ環境。シニア世代と違って現役の子育て世代は仕事と家庭で大変で行政に要望を伝える余裕がない。

この規模の赤字になると、影響があることを覚悟した上でダメージをどの程度回避するかという話になりそうだ。

さらに、5年後もしくは10年後の話になってくると、23区の状況がどうなっているか分からない。住宅が余るようになった時、わざわざ千葉都民になるかどうか。

それでも若い子育て世代を浦安に呼び込めるように魅力的な街づくりを展開しようとしても、先立つ予算がないという状況も考えられる。

ここで大切なことがある。浦安市の行政としては市民に対してマイナスイメージを与えるような情報ではあるけれど、それをあえて提供したことは、果たして駄目な対応だったのかという点。

私なりには、近い将来やってくる課題について真摯に向き合い、その情報がたとえ市民受けするような話ではなかったとしても、きちんと伝えることに意味があると思う。現時点で消極的だったとしてもすぐに分かることだ。

この状況を招いた行政や議会の関係者の中にも現役で働いている人たちがいるだろうけれど、当時の体制だと立場的にやむを得なかったのかもしれない。改心して残りの責任を果たそう。

また、将来の財政赤字は現時点の浦安行政の直接的な失策ではないわけだし、引き継がれた課題に対処しているだけならば、堂々と情報を開示すればいい。それが難しい理由はいくつかあるけどここでは論じない。

加えて、潤沢な財政がある状態で行政をスリム化するのは難しいが、赤字が見えてきたら絞らざるを得ない。

市民も足るを知り、行政の大切さをリアルに実感する機会になると思う。