江戸川沿いをゆるりと
共働き子育ての我が家は仕事の忙しさに関わらず相変わらずが、最近、妻がガチなウォーキングを始めたことは大きな変化だろうか。
職場でロード乗りのストラバ版のようなウォーキングのコンペが盛り上がっているようで、妻もメンバーとして頑張っているそうだ。
どうせ大した効果はないだろうと思っていたら、妻の腰から足首にかけてスルスルと痩せてきた。
普段から運動をしていない人が運動するとここまで違うのかと驚いた。
妻が美しくなることは良いことだが、夫婦の会話すらできないくらいに忙しい共働きと子供たちの世話がある。夫の心の中にペイズリー調の煩悩が漂ったとしても、結局は営みの機会もなく別室で床につく毎日だ。
妻は早朝出勤、私は深夜残業。お互いに寝ているので「おはよう」や「おやすみ」といった挨拶さえないことがある。
近くの妻の実家から子育てのサポートを受けると色々と干渉してくるということで妻が断ってしまっているので、核家族と同然だ。
義父母としても思うところがあるだろうけれど、私としてはもっと助けてくれると思っていた。力は貸さないが口は出すという昭和の親的な価値観は必要ない。
これで将来の介護と墓の世話をやるのかと思うと気が重い。昔の嫁姑の関係のようなストレス。浦安という完全アウェイな場所での父親業だ。
片働きはどうか知らないが、共働きで複数の子供を育てている夫婦なら普通のことだろう。
結婚式で永遠の愛を誓った夫が、近い将来にスマホやパソコンを眺めながら自家発電なのだから、そりゃ少子化も進むだろうし離婚も増えるだろうよと文句を言っても仕方がない。
しかし、カマキリのオスよりは恵まれていると信じて、我々共働き世帯の父親は前を向いて生きよう。
ということで日曜日にロードバイクに乗ってソロで実走に出かける。
仕事や家庭のフラストレーションをスポーツで解消するわけだ。中学生や高校生の部活にも似ているが、残念ながら私のような中年には心ときめく出会いも、未知なるアドベンチャーも残されていない。
望むことと生きることは別だと、ただひたすら家族のためにレールの上を歩み、たまに立ち止まって休む。まさに歩くATMだな。
おそらく男の人生に楽園やクライマックスなんてものはなくて、こうやって地道に生きて老いて去るのだろう。それでもいいじゃないか。
さて、10月の大型台風では、各地に大きな被害が生じ、今でも傷跡が残っている。
先日、私が世話人を務めるロードバイクサークルのメンバーと江戸川の左岸を走ったが、ダメージは想像以上だった。
今回はソロで江戸川の右岸を走る。路面はいたるところに茶色の砂泥が広がっていたが、すでに乾いてぬかるんではいない。
全てではないがグラウンドも復旧して、野球やサッカーの試合に興じる子供たちや保護者の姿が見える。
ワールドカップの影響だろうか。ラグビーの練習をしている青年が多い印象がある。
一方、ロードバイク乗りの姿はまばらで、歩行者の横を突っ走る太った中年のニワカは何度か見かけたが、まともなローディはあまり見かけなかった。
あの体型でレーシングウェアとカーボンバイクは異様だが、本人たちは気づいていないのだろうか。
痩せたいのであれば、突っ走るよりもゆっくり長く走った方がいい。そのスタイルで突っ走っても格好良くないし、車道でトラックと一緒に突っ走ればいい。
その理由らしきことも分かった。河川敷がジョギングや散歩を楽しむ人たちで混雑している。これではケイデンスが上がらないし、ポタリングになってしまう。
中年のニワカたちは、全く気にせずに駆け抜けていくが、歩行者を引っかけた時にどれだけ大変なのか分からないことだろう。
あの走行は本当に危険だ。ロードバイク乗りたちの危険な走行を規制するような条例なり法律が必要だと思う。
彼らが歩行者と接触して、民事や刑事の案件になれば、ふくよかな腹周りがへこむくらいに仕事でも家庭でも追い込まれると思うが、そのイメージができないから突っ走るのだろう。最近では荒川に続いて江戸川でも道路に釘を撒く人が出没したそうだ。
ニワカに限らず千葉や埼玉のショップチーム、さらには他のソロやチームのロード乗りの危険な高速走行が珍しくない。
ここは自転車専用道ではないし、釘を撒かれるくらいのことをしていることは確かだが、巻き込まれた人たちは迷惑かつ危険でしかない。
もはや現在の江戸サイは気楽に走れる状態ではないが、ポタリング程度に走るのなら楽しい。
グラウンドに近いアンダーパスを走ると、有機物の匂いがする。河川の氾濫で運ばれた泥や水中のプランクトン等が乾いた結果だろうか。
ひどくダメージを受けた河川敷の野球場にボランティアで集まって、一生懸命に枝や泥を集めている少年や保護者の皆さんの姿が見えた。
慣れ親しんだ江戸川沿いが、少しずついつもの状態に戻っていくことに安堵して家路につく。
大型台風の影響でどうなるかと心配していたが、江戸サイに限って言えば何とかなりそうだ。今度はサークルの仲間と一緒に走ろう。