ミニベロサイクリング+チェアリングでヘリノックスを試す
何かリフレッシュに繋がることはないかと探し、最近ではサイクリングの途中で折り畳みチェアを広げ、そこに座ってのんびりするというチェアリングが流行っていることを知った。藁にも何とやらで、チェアリングで定番となっているHelinox(ヘリノックス)の折り畳み椅子を何種類かポチって試してみた。しかし、実際にはネットで流布されているほどにはチェアリングが容易ではなかった。
ネット上では、「サイクリング×チェアリングで新しい楽しみ!」とか、まあそういったタイトルのブログがたくさんヒットしたりもする。それらは大なり小なり内容を盛っているのだろうか、思ったよりも難しい。
ネット上で嘘を書かない私としては、サイクリングとチェアリングの組み合わせには重要な要素が二つあることに気付いた。
ひとつの要素は、折り畳みチェアのスペックそのもの。座り心地の悪い椅子に座ってリラックスできるはずがない。しかし、チェアが重いと携行が大変だ。
もうひとつの要素は、チェアリングを行う場所。落ち着かないような場所で折り畳みチェアを広げて、落ち着けるはずがない。この要素はとても重要だ。
そして、実際にサイクリングの途中でチェアリングを試みたところ、実際にはチェアを広げる場所がないまま帰宅した。
江戸川でサイクリング+チェアリングを試みたのだが
とりわけ首都圏において、折り畳みチェアを広げて静かな環境でリラックスできる場所がどれだけあるのかという話だ。どこに座ったところで知らない人が通りがかり、余程に精神が図太い人でなければリラックスなんてできるはずがないと私は思う。
自分に合ったチェアを見つけることは難しくないが、チェアリングに適した場所を見つけることは難しい。
しかし、すでにヘリノックスのチェアを買ってしまったので、意地でもチェアリングができる場所を探すことにした。
最初に、サイクリングで徹底的に走りたい場合にはチェアリングは適していない。チェアリングのために自転車に乗って移動するくらいの気持ちが必要になる。ということで、本日は普段着でブルーノのミニベロに乗って出発する。
私が住んでいる浦安市は埋立によって土地が広がっていて、陸の孤島のように海に向かって突き出した場所に位置している。ならば、チェアリングなんて海沿いの場所でどこでも可能だろうと思われるかもしれないが、実際に自転車でチェアリングの場所を探しても、なかなか見つからない。
チェアを置くだけなので物理的には問題がないけれど、浦安市は千葉県で最も人口密度が高い。海沿いにチェアを置いても、その隣をたくさんの人たちが通り過ぎる。このような環境で落ち着いて座っていられるはずがない。余程に周りの目を気にしない図太い性格の人ならば問題ないかもしれないが。
結果、浦安市の海沿いを端から端までミニベロで走ることになった。日の出地区の海沿いはチェアリングに適していない。その隣の明海地区も高洲地区も落ち着ける場所が見つからない。どこに行っても人がたくさんいる。こんな狭い土地に定住人口だけでも16万人だかの人間を詰め込んだら、海沿いに人が溢れて当然だ。
そして、住宅地でのチェアリングは不可能だと判断した私は、激ローカルな工業地帯である鉄鋼団地の方までミニベロを走らせた。このエリアは鉄鋼業の工場が密集しており、ここでチェアを広げて座ることはかなりシュールだと感じたのでパス。
となると、ここしかないと思ってディズニーの裏手にある護岸にやってきた。愛車のブルーノにはリアキャリアを取り付けているので、とりあえずヘリノックスのタクティカルチェアとチェアゼロを両方とも積載して走ってきた。
斎場に向かって自転車で千鳥地区を走った場合、そのまま広がった護岸にアクセスすることは困難だ。護岸に向かう途中で立ち入り禁止のバリケードがある。
しかし、クリーンセンターの脇をディズニーの方向に向かって海沿いに進むと護岸に上がる小道があり、その手前に小さな公園らしき場所がある。そこから遊歩道を逆方向に進むと、立ち入り禁止のバリケードが存在せず、広がった護岸にアクセスすることができる。遊歩道を真面目に通行しているだけ。地元民だからこそ知っているルートだろうか。
新浦安の新町エリアの住民しか知らないことかもしれないが、夢と魔法の国を標榜するディズニーの裏手には浦安市の斎場があり、亡くなった人たちのご遺体が火葬場で焼かれている。
浦安市の斎場のすぐ近くにはクリーンセンターがある。つまり、人が焼かれる施設の隣にゴミを焼く施設がある。
土地が限られているので仕方がないとは思うけれど、若者たちが大騒ぎしている遊園地の裏手で死者が天に帰り、その隣でゴミが焼却されている。かなりシュールだと感じたりもするし、これが世の無常だと感じたりもする。
そして、浦安市の行政が何を考えているのか私には全く理解しえないのだが、斎場のすぐ近くの護岸に海釣りのための公園を建設しようと考えているらしい。
浦安市は既存施設の維持や更新が大変だと言いながら、相変わらず新しいハコモノの建設に取り組んでいる。地場産業の保護や地方政治的なバランスなど、色々な都合があるのだろうか。
浦安市の護岸は消波ブロックが沈められているので、海釣りに適していない。海釣り公園と表現するよりも投釣り公園の方が適切だろう。
市原市や千葉市のように海に向かって人工の堤防を伸ばすのであれば家族連れのフィッシングが可能かもしれないが、何億の予算で足りるはずがない。それ以上の桁が違う予算を投じて海釣りの施設を建設する必要があるのだろうか。
嫌なことを考えると気が沈むので、ヘリノックスの「タクティカルチェア」を広げてみる。
サイクリングの途中でチェアリングを試してみたいと考えた人が、「なるほど、ヘリノックスのチェアが良いのか」と知り、実際に購入を考えたとする。
すると、「チェアワン」というモデルと「チェアゼロ」というモデルが検索でヒットするかもしれない。
チェアワンはヘリノックスの定番かつフラッグシップのモデル。チェアゼロは、チェアワンを軽量化したモデルという理解になる。
そして、多くのサイクルブログは「チェアゼロを使ってみた」というコンテンツを発信している。どうしてチェアワンではなくチェアゼロなのかというと、「軽いから」という単純な理由なのだろう。チェアゼロは明らかに軽い。
チェアワンとタクティカルチェアの重量はよく似ていて、シート部分にメッシュが組み込まれているのがチェアワン、シート部分が丈夫な素材で組まれているのがタクティカルチェアだと解釈して差し支えない。両者のフレームの寸法は同じだと私は理解している。
ヘリノックスのチェアはシート部分だけを別売で入手することが可能なので、タクティカルチェアを購入した後でチェアワンのシートを買って取り付けることは可能だと私は理解している。
私はメッシュ素材が気に入らないのでチェアワンではなくタクティカルチェアを手に入れることにした。だが、サイクリング+チェアリングの定番となっているチェアゼロと比べると重い。
チェアゼロをバックパックに入れて移動することは可能だが、タクティカルチェアをバックパックに入れて自転車を漕ぐ気になれない。ミニベロにリアキャリアを取り付けているので気にならないが、ロードバイクでチェアリングを試すのであればチェアゼロだろうなと思う。
だが、さすがヘリノックスの定番モデルだ。タクティカルチェアの座り心地は半端ない。腰がハンモックに乗ったような感覚があり、とてもリラックスできる。
チェアリングに適した場所を探して走り続けた甲斐があった。視界一面に広がる大海原のパノラマを眺めながら、保冷ボトルに入れたコーヒーを味わう。
素晴らしい。
このデトックス効果は想像以上だ。頭の中のストレスが消えていく。
穏やかで落ち着いた時間が流れ、週末を有意義に過ごせたと言えるほどの満足感がある。なるほど、これがチェアリングなのか。やっと理解した。
浦安沖には多数の大型船舶が停留していて、護岸に打ち寄せる波が断続的に心地良いリズムの音を奏でている。
海辺で休んでいる海鳥たちがたまに空に羽ばたき、また再び別の小さな群れが海面にやってくる。
そして、コーヒーが美味い。
リアキャリアに折り畳み椅子を載せることができるのであれば、ヘリノックスのタクティカルチェアやチェアワンが適しているのだろう。重いこと以外には、何ら不満がない。
30分間近く海を眺めて物思いにふけったり、空気を吸ったので満足した。さて帰ろうかと思ったのだが、せっかくだからと携行していたチェアゼロの座り心地も試してみることにした。
左側がタクティカルチェア、右側がサイクリング+チェアリングの定番になっているチェアゼロ。
ヘリノックスのチェアはシートを取り外すとフレームを迅速に解体することができ、適当にまとめるだけでコンパクトに収納することができる。また、タクティカルチェアには丈夫なバッグが付属しており、そのままリアキャリアに固定することができる。
一方、チェアゼロは軽量化に全振りしたような設計なので、バッグは薄くて華奢な巾着でジッパーもない。フレームも若干細身なのだろう。
実際に海辺でチェアゼロを広げたところ、海からの風でチェアゼロが飛んで行った。チェアゼロが風に弱いというレビューはよくあって、重量を考えると仕方がないことだろう。
タクティカルチェアの場合にはそれなりに重厚なので風で飛ぶようなことは少ないかもしれないが、チェアゼロはペラペラだ。強風時に紐をつけたら凧のように飛ぶのではないかと思うくらいに軽い。
そして、実際にチェアゼロに座ってみる。
うーん、どうなんだ。
たくさんのサイクルブログで、「チェアリングは素晴らしい!」と紹介されていて、それらの記事で使われているのがチェアゼロだったりもする。
そこまで快適か? 新たな発見なのか? 今、そのチェアゼロに私は座っているのだが。
寸法自体はチェアワンやタクティカルチェアとあまり変わらない。見た目がすでに安っぽく感じはするが、軽く仕上げるためには仕方ない。しかし、椅子とは座るためのもので、座り心地が良くない椅子はどうなんだろうか。
携行性を追求した軽量化モデルなので仕方がなく、丈夫なタクティカルチェアに座った直後なのでそのように感じるのかもしれない。
だが、チェアゼロのフレームは座るだけでグラグラとしなる。しなったところで折れる気配はないけれど、やはりグラグラしている。グラグラというか、フニャフニャというか。
そして、シートもペラペラで滑る。タクティカルチェアに座った時のように腰周りがハンモックで包まれるような感覚ではなく、とりあえず座ってみた感が半端ない。
この折り畳み椅子に30分間も座る気になれないので、すぐに畳んでリアキャリアにパッキングし、自宅に帰ることにした。
とはいえ、サイクリングとチェアリングを同時に楽しもうとして、ヘリノックスのチェアを携行する場合、リアキャリアがなければチェアゼロ一択になることだろう。重いタクティカルチェアをバックパックに入れてペダルを回す気になれない。
なので、多くのサイクルブログがチェアゼロ推しになってしまうのだろうな。確かに、この重量でここまでの完成度の折り畳み椅子は希有だ。ウォーキングの最中にチェアリングを楽しむのであれば、私はタクティカルチェアではなくて、チェアゼロを持っていくことだろう。
とにかく、サイクリング+チェアリングにおいては、チェアリングを楽しむ場所の選択が最も重要だということが分かった。気に入った場所で風景を眺めている時間は確かにリラックスできて有意義だ。
そして、チェアの好みついては人それぞれなので、現物に座って感覚を試した方がいいのだろうな。適当にポチって実際に試すというスタイルは無駄が多い。
勢いで買ってしまったチェアゼロをどうしようかと本気で考えている。しばらくはベランダでの晩酌用に使うことにしよう。
とりあえずチェアリングで少しは気分が楽になったので、これでいいのだと満足することにした。