2022/11/26

輪行仕様のブルーノ・スキッパーを構想中

ロードバイクを処分してブルーノ・スキッパーという廉価なミニベロを手に入れ、フレームとフロントフォークだけを残してカスタムを施し、これまで訪れたサイクリングコースを一通り走ってみた。一年かけて調整や実走を繰り返してみると、ミニベロには小回りや可愛らしさだけでなく、ロードバイクと違ったサイクリングの面白さがあることに気づいた。

しかし、この半年の私は厳しい浮動性の目眩に苦しんでいて、それ以上のカスタムや新しいルートを楽しんでいる余裕がなかった。最近になって目眩を抑える方法が分かったので、ようやく楽しみを広げることができそうだ。


あえて折り畳み機構のないブルーノのミニベロを選択した理由はいくつかある。ひとつは、単純に見た目の話。ホリゾンタルフレームで小径ホイールの自転車のシルエットが旅の相棒として素敵だと思ったから。

トップチューブとボトムチューブが一体化した丸太からステムやシートポストの長い枝が伸びているように見えるフォールディングバイクの見た目も面白いけれど、いかにも古風なクロモリ製の鉄フレームの方が落ち着く。

もうひとつは、メカニカルな話。ミニベロは自分なりのカスタムを楽しむことができるのだが、折り畳み式ミニベロの場合にはステムもハブも独自規格が採用されて自由度が少なかったりする。

ブルーノの場合には、ハブ、BB、シフター、ディレイラー、ステム、シートポストなど、ほぼ全てにおいてロードバイク用あるいはクロスバイク用のパーツを組み込むことができるので、カスタムの幅が広がる。

最後は、走行性能やフレームの剛性という話。単なるイメージではなくて、過去にTern等の20インチホイールのフォールディングバイクを実際に購入して乗ったことがある。しかし、その乗り心地の悪さに困惑した。

私が試した折り畳み式のミニベロはロードバイクと比較して剛性が足りず、長く伸びたステムが歪み、シートポストやフレームが微妙に撓み、ハンドリングがクイックで安定せず、とりわけ凹凸に乗り上げた時の不安は大きかった。それなりに踏み込めば速度を上げられるものの、走ること自体を楽しめなかった。

折り畳み式のミニベロはコンパクトになるので電車の輪行が楽なのかというと、私個人としてはあまり期待通りとは言えなかった。折り畳み機構を丈夫にするために車体の重量がかさみ、軽く持ち上げて移動することができず、日本の鉄道では輪行袋から出して転がすことも難しい。そのためのキャリアを持ち歩きたくもない。

しかも、20インチのミニベロを折り畳むとかなりの横幅になる。神経質な私は他の乗客に気を遣ってシートに座ることができない。結果、折り畳んだ自転車を足下に置き、自分でも邪魔だなと感じつつ、目的の駅まで立ったまま乗車することになった。

他方、よりコンパクトに折り畳める16インチや14インチのミニベロはどうなのかというと、路面の凸凹やウェットなコンディションに弱いように思える。

実際にブロンプトンに乗って落車して鎖骨を骨折したり、足を解放骨折したり、頸椎を損傷して四肢麻痺になりかけたサイクリストのブログ記事を拝読すると、20インチよりも小さなホイールの自転車に乗りたくないという恐怖心が生じる。

彼らの事故は無茶な走り方によって生じたわけではなくて、車体の不安定性によるものだと思う。通勤程度で短い距離を移動する程度ならともかく、フロントのフルブレーキングだけで前転することがある自転車でのツーリングは恐くて仕方がない。

また、20インチ・406ホイールの場合には様々な銘柄のタイヤが手に入る。街中でよく見かける小径シティサイクル用のタイヤがそのまま入るので、旅先でタイヤが裂けても普通の自転車店までたどり着けば何とかなる。

しかし、16インチや14インチのタイヤは銘柄の選択肢が少ない。コロナ禍ではその懸念が現実になったが、旅先どころか通販であっても在庫が尽きてタイヤ交換が難しくなることがある。

加えて、私は感覚過敏を患っているので、サドルの高さが数mmでも違ったり、角度がわずかに中心から逸れているだけで気になる。短時間で自転車を折り畳むことができても、シートポストの調整だけで以下略。我ながら色々と面倒な人物だ。

一方、折り畳み機構がないミニベロを手に入れた時点で、もはや輪行は不可能だろうと私は思い込んでいた。確たる根拠があるわけではなくて、ロードバイクの輪行のような分解や組み立て作業があり、鉄道での取り回しの大変さに苦しむくらいならば、全行程を自走で行けばいいやと。

だが、現在の私のサイクルライフを考えてみると、一概にミニベロでの輪行を全否定する必要はないように思える。

浦安市内からサイクリングに出かける際には市川市や船橋市を越え、①鎌ケ谷市や②千葉市といった街を経由し、①千葉県北西部に広がる谷津道あるいは②内房にアクセスするというルートを選択することが多い。

谷津道や内房を走りたくないという気持ちがある時は江戸川沿いのサイクリングコースを流している。その場合、谷津道や内房を走りたくないというよりも、市川市や船橋市といった街の道路が混み合っていたり汚れているので、それらを経由することが嫌になっているだけ。

とりわけ357号線沿いはゴミが散らかり、所々に得体の知れない汚物が落ち、場所によっては異臭が漂う。これは精神修行だと信じ込まないと走れない。

この地獄ルートさえなければ、千葉県はサイクリングに絶好の場所なのだが。

私は地理的に自走でのアクセスが可能な白井市や柏市、印西市を中心とした谷津道を走っているけれど、房総半島の付け根のエリアに広がっている谷津道の方がルートが豊富、かつ自然に溢れていて自動車の通行も少ない。

だが、浦安市からこのエリアにアクセスするには、市川市、船橋市、千葉市を抜け、さらに四街道市を越える必要がある。四街道市内の道路もかなりの難所で、自転車レーンや歩道どころか、路肩さえ十分に確保されていないことがある。

 弥富川沿いの谷津道を走って八街市で新緑を味わう

そのように考えると、千葉市の辺りに自宅があれば週末のサイクリングでコースに困ることはないことだろう。手賀沼や印旛沼沿いだけでなく、少し回り道をしただけで内房から外房までがフィールドになる。

とはいえ、都内に職場があって千葉市に住むのは大変かもしれない。朝にJR京葉線の蘇我方面から東京に向かう、あるいは夜に東京から蘇我方面に向かう乗客が電車のシートの上で崩れて疲労困憊の寝顔を晒している姿を見ると、余程にストレス耐性が高くないと千葉市在住の千葉都民という生活は難しいかもしれない。

むしろ、都内ではなくて千葉市内に職場や自宅があるという生活スタイルが理想的だな。そのような同世代はたくさんいるはず。何だか羨ましく感じたりもする。

しかし、現実逃避しても始まらない。私は結婚や子育てを機に東京湾の湾奥に作られた埋め立て地で生活することになった。もう10年以上も辛くてのたうち回っている。それでもサイクリングの度に思う。「市川市や船橋市の地獄ルートを回避して、千葉市内までスキップする方法はないだろうか」と。

最適解は分かりきっている。「浦安から引っ越せばいい」という極めてシンプルな答え。子供が市立小学校に通っているので、市外の私立中学に進むまでの数年の我慢だ。

しかし、嘆くばかりではストレスがさらに大きくなる。この状況の利点を探して生きる楽しみに繋げることができないだろうか。

自室にてフロントホイールにフックを付けて縦方向にぶら下げているブルーノ・スキッパーを眺めていると、頭の中に散らばっていた思考の点が集まり、少しずつ何かの結論に向かって組み上がっていく気がした。なるほど、日々を刻々と生きることで得られる発想もあるということか。思考の点を列挙してみる。

① 折り畳まないミニベロに乗り始めたのはブルーノが初めてだが、このミニベロは20インチホイールの折り畳み式のミニベロと重量があまり変わらない。クロモリフレームとハイテンフォークにNITTOのパーツを組み込んだので、まあこの程度だろう。

② 20インチのフォールディングバイクを折り畳むとホイール間の長さが短くなる。けれど、前後のフレームを重ね合わせることで幅が大きくなり、周囲の乗客に気を遣う。在来線の場合、折り畳み式のミニベロであっても私がシートに座ることはない。つまり、最初から座ることを想定しない。

③ ブルーノのミニベロはホイールベースが短いので、後輪を外さずに垂直方向に立てれば平たい板のようだ。前輪を外してハンドルをフレームに固定し、ペダルの出っ張りを減らし、車体を縦方向で抱えた場合には思ったよりも面積を専有しない。ドアの脇にもたれかかってスマホでゲームを楽しんでいる人たちの方が邪魔なくらいだ。

④ 浦安から自走で市川市や船橋市の地獄ルートを抜けて房総半島にアクセスするのは大変、というよりも危険。このルートが楽しいと感じるようになったら、様々な意味で危うい。サイクリングは自走で往復してナンボという考えでは、いつか落車や事故に遭うリスクがある。

⑤ 京葉線が混んでいるのは平日の舞浜駅を中心とした新浦安駅から東京駅までの区間。休日の場合、新浦安駅から千葉市内の蘇我駅までの下り方面の列車は空いている。休日の上り方面の場合にはディズニー客だけでなく南船橋から乗り込んでくる人たちがいたりもするが、始発の蘇我駅で乗車して列車の端にて壁を向いて地蔵になれば何とかなるかもしれない。

⑥ 過去にロードバイクの輪行によって市川市や船橋市の地獄ルートをスキップしようと試したことがある。

上記③はホイールが小さいミニベロの利点だな。後輪を外さないタイプのロードバイク用の輪行袋があったりもするが、その場合にはかなりの大きさになる。かといって、後輪を外すとリアディレイラーを引っ掛けて破損するリスクがあったり、到着後の組み立てや調整が面倒だ。ミニベロの場合には後輪を付けたままでもあまりサイズが変わらず、立てかけた時にエンドを心配する必要がない。

上記の④については千葉市方面のサイクリングで感じていることで、前回の内房へのサイクリングでさらに思いが増した。蘇我駅から新浦安駅までスキップすれば、より安全にサイクリングを楽しむことができる。

上記⑥については私自身が忘れかけていた。かなり以前に後輪を外す必要がない輪行袋を購入して、新浦安駅から蘇我駅までロードバイクの輪行を試したことがあった。

 内房へのライドでコクーンを試す

確かに後輪を外さないタイプの輪行袋は便利だ。その延長として考えると、在来線で輪行袋を必要とせず、自転車を丸ごと運ぶことが許されるヨーロッパの国々は素敵だな。日本の場合には、自転車どころか子供を載せたベビーカーを畳めと老人や若者が怒ったりもする。

だが、ロードバイクは車輪が大きいので、後輪を外さない輪行は駅や電車の中での取り回しが大変だった。また、輪行時に外したフロントホイールをフレームに固定するとフレームの傷が気になった。そもそもロードバイクはスピードを上げることができるので、輪行で手間取っている時間と市川市や船橋市の地獄ルートを通過する時間があまり変わらなかったりもした。

そのため、この試みは全く進展せずに現在に至っている。

もしかしてブルーノのミニベロで輪行しているサイクリストがいたりもするのだろうかとネットで検索してみると、ユーザーではなくてメーカーがブルーノでの輪行を紹介していたりもする。

ブルーノのホイールベースはロードバイクと同じくらいに短く、100cm程度。前輪さえ外してしまえばJRの規程をパスしてしまうことだろう。その他の課題としては、フラットペダルをどうやって引っ込めるか、ならびに車体の重量をどれだけ減らして駅構内で肩に担いだ時の負担を減らすか。

往路にて新浦安駅でブルーノをパッキングして千葉市内の蘇我駅、あるいはその先の内房線や外房線の駅まで輪行で移動し、復路にて蘇我駅から新浦安駅まで輪行で帰ることができれば、市川市や船橋市、あるいは千葉市の中心部の面倒な走行を回避し、落車や交通事故のリスクを減らすことができるかもしれない。

新浦安駅から蘇我駅までは30分程度。その間は車両の先頭か後尾で立ったままミニベロを支えることにしよう。毎日の電車通勤の乗り換えにおいて、私は(合計すれば)30分以上もホームに立ったまま電車を待っている。

なるほど、これは試してみる余地がある。ちょうど生きることに飽きていたところだ。小さな変化や楽しみがあれば、もう少し生きてみようという気持ちになる。

となると、ソロでの長距離ツーリング用に仕上げたブルーノのカスタムを変更して、肩に担ぐことを想定した軽量化に取り組む必要がある。

ツーリング仕様から輪行仕様への完全なコンバージョンではなく、必要なアクセサリーを選択する形で気軽にスタイルを切り替えることができればなお良しだ。

軽量化といっても限界があるが、これまでの1年間であまり使わなかったオプションは潔く取り外してみるか。

それと、輪行の際の利便性を考えてアクセサリーの追加も必要になる。ちょうどブラックフライデーがやってきた。自分へのご褒美として、予算3万円程度でカスタムに取り組むことにしよう。

NISAによる積立投資、節税目的のiDeCo、そして老後のための個人年金保険などを揃えたので、趣味への金のかけ方が地味になった。常識的とも言う。