私立中高一貫校に子供が通う場合の塾や個別指導:必要なのか、いつからなのか
我が子が過ごす6年間において、人生を通じて付き合える良き友人、ならびに人生のマイルストーンになる良き師に巡り会うことを望む。併せて父親として思案しているのは、「塾や個別指導といった学校の外での学習サポートをどうするのか?」というテーマ。
「中学入試は親の入試」と呼ばれるように、親の取り組みの比重が大きい。けれど、受験までのプランやスキームがとても分かりやすかった。
子供を大手の学習塾に通わせて、模擬試験や宿題をこなし、志望校を見学する。まるで陸上競技のトラック種目かのように、スタートからゴールまで自分のレーンをひたすら走ればいいという感じだった。
中学受験のための学習塾としては、公立小学校で行われる学習について何ら期待していない。
大手の学習塾が用意する授業や資料は洗練されていて無駄がなく、子供の学力がどの程度なのかを志望校のレベルさらには全国レベルで数値として算出してくれた。
また、入試を行う側の中高一貫校としても、受験の出願の際に提出されることがある公立小学校からの調査書を信頼しているとも思えない。出願の際に調査書を必要としない学校もある。
このような中学受験のゴールデンプロトコールは二月の勝者という漫画で分かりやすく解説されている。内容は架空の設定だが、ロジックは限りなくリアルだ。
二月の勝者と比べて、東大合格をテーマとしたドラゴン桜は内容があまりにファンタジーだな。東大OBにとってはギャグ漫画になってしまっている。
もとい、中学受験時の調査書ではなく高校受験時の内申書の場合には話が違ってくる。どう考えても公平だと思えないような教師の主観や学内試験の結果が選抜に影響するわけだ。
内申書のためにPTAの役員で張り切る親までいるらしい。枠にはめた規格品を量産するためのシステムだと最初から忌避して中高一貫を志向する親子も多いことだろう。我が家もそうだ。
高校入試の場合の学習スタイルについても見当が付く。
私は普通の公立中学から高校受験を経て特待生で私立学校に入学した。実家に金があって私立高校に進んだわけではなくて、成績優秀者に入れば授業料が免除されるというシステムがあったから。当時の実家は億に近い負債があった。
公立中学から私立あるいは公立の進学校を目指す場合、学校の授業に加えて英語や数学の塾に通うことが一般的だろう。私の中学時代には寺子屋のような塾に通っていたが、大手の学習塾もたくさんある。
ところが、私立中高一貫に子供が通っている場合の勉強のスタイルについては全く分からない。高校受験がスキップされ、中学三年生の段階で高校一年生のプログラムが完了し、高校三年生では大学受験を想定した演習になる。
中高一貫の私立進学校に入学した後の次のハードルとは何かというと、言わずと知れたことだが大学入試。このハードルの場合、中高一貫を進んできた若者たちと高校入試を経て進んできた若者たちが、現役や浪人に関わらず乱戦状態のバトルフィールドで競うことになる。
このハードルによって職業人生までが左右されるのは、日本に限った話ではない。
大学受験の場合には一般試験だろうが推薦入試だろうが、受かった人が勝者になり、次の扉が開かれる。そして、望むべくは相応の教養とスキルを取得し、現実的には「○○大学卒業」とか「○○資格」といったレッテルが貼られて社会に出る。
これらのレッテルだけで人生が決まるわけではないが、持ち運びが便利で、必死にアピールしなくても分かりやすく自分を説明してくれる。努力して手に入るのであれば手に入れて損はない。
大学受験という山頂は遙か彼方に見えている。その場所は分かるのだが、山に近づくためのルートが分からない。
仮に上の子供が浦安市立中学に入学した場合には、ルートが分かりやすかった。新浦安駅の近辺で高校入試対策の受験塾を探して放り込めばいい。そして、千葉県内の進学校を目指して高校入試に挑む。その後は大学入試対策の予備校に通えばいい。おそらくスキームとしてはそうなることだろう。
しかし、私立中高一貫校、しかも進学校に子供が入学した場合には、大学受験までのルートが私には分からない。学校以外の学習サポートがどの程度必要なのか、必要だとすれば何が適しているのか。
伝説の賢人ググレカスに尋ねても答えが見つからない。答えは提示されているのかもしれないが、選択肢が多すぎる。
妻は私立中高一貫校の出身だけれど、当時は進学校ではなかったらしく参考にならない。塾に通ったこともないそうだ。
選択肢が多すぎるという背景には、学習のレベルや進捗における私立中高一貫校の多様性の高さがあるらしい。
様々な中学校に通う生徒がひとつの塾に集まる場合、塾側としてはそれぞれの中学校のカリキュラムや授業の進捗を把握する必要がある。
私立中高一貫校の場合には、中学三年生で高校一年生までのカリキュラムを終えることがよくあるが、そうではない学校もあるらしい。ここまで多様性が高いと塾側としても大変だ。
かといって、自宅から遠く離れた学校に通う子供たちの親同士で情報を交換することは難しい。ネットで検索してもこの有様。
私立中高一貫校に高い授業料を納めているのだから、公立中学と民間学習塾の両方の授業を合わせたようなプログラムを用意してくれる気がするが、果たして期待通りになるのだろうか。
また、中高一貫校が用意したカリキュラムだけで大学受験までを乗り切ることが本当に可能なのだろうか。
あれだけ激しい競争を突破した子供たちが難関中学に入学してくるのだから、学校側としても公立中学で上位になるくらいの生徒の学力を中央値として授業を組むことだろう。受験当日に魔法陣を展開して難関中学に入学した上の子供が、ハイレベルかつハイペースな授業に付いて行けず、成績面で深海魚になるという展開が頭をよぎる。
その場合には学校の授業をサポートしてくれる塾なり個別指導なりを考えなくてはならない。
しかしながら、中高一貫校では学校独特のプログラムが組まれていることが多いので、浦安市内の学習塾が学校のプログラムとマッチするとは思えない。
学校の授業と学習塾の授業の内容にギャップがありすぎた場合、学校の授業だけでも大変なのに学習塾の宿題が重荷になるというリスクが考えられる。
公立中学校に子供が通う場合には、学習の内容や進捗スピードが分かりやすいため、学習塾でより早くより深く学び、分からない部分を補強するということが容易だ。しかし、私立の中高一貫校の場合には多様性があまりに高い。
浦安市内の学習塾の中にも「中高一貫校に対応しています」と銘打っている塾があったりもするが、本当に対応しているのだろうか。首都圏には多数の中高一貫校が存在しているし、それらの学校のカリキュラムや進捗をどうやって分析し、塾のクラスの中で平準化するのだろうか。
子供が産まれた段階から旧帝国大学や国公立大学医学部を志向するエクストリームな家庭の場合には、中高一貫の進学校であっても中学1年生の段階で民間の学習サポートを用意し、課金しながらゴリゴリと鍛えていることだろう。
例外としては、地頭が半端ない天才や秀才の類。そのような生徒においては塾や家庭教師も必要ないという絶対領域に入っているだろうし、我が子はそのような無双ではない。
学校の授業で十分なラインであるにも関わらず、そこに塾のサポートを乗せることで逆に負担になってしまうようであれば、中学のスタート段階でつまずいてしまいかねない。ゴールデンパターンが存在しておらず、親としてのリサーチが足りない状態での判断は適切ではないな。
だとすれば、学習塾ではなくて、(最近ではオンラインでの受講が可能な)個別指導を検討した方がよいのだろうか。しかし、受講料が驚くほどに高い。
1科目で月2~4万円。英語と数学の個別指導を受けると、月に4~8万円がかかる。下の子供の中学受験や私立中学への入学までを考えると、ひとりの子供に月8万円の個別指導は厳しい。
ということで、我が家の方針としては、上の子供が入学した後、半年から1年くらいは様子を見て、塾や個別指導の学習サポートが必要なのかどうかを考えることにした。
大学受験というゴールを眺めた場合、中学1年生のスタートダッシュでトップ集団に入っておく必要はない。
そもそも我が子がトップクラスに入ることを私は望んでいない。エリートであることは疲れる。先に進む人たちを道標やペースメーカーとして追いかけた方が苦しまなくて済む。しかし、追いかけるどころか深海魚になって劣等感に苦しむことは避けなければならない。
上の子供が熱心に勉強しているのかどうか、深夜に帰ってくる私にはよく分からないまま数回の定期試験が終わり、学期末の通知表が届いた。
幸いなことに、深海魚になるという展開には至っていなかった。学期末の通知表を確認した限りでは、トップクラスではないが底辺でもない。中くらいの成績だろうか。科目によっては上位に入っている場合もあり、科目によっては苦手分野があることも分かった。私に似てムラがある。
上の子供が通う進学校の授業内容はどうかというと、確かにハイレベルだ。配布されるプリントや課題の質・量ともに先生方がガチになっていることを実感する。勉強の詰め込みではなくて、教材研究が深い。ここまで先生方が準備してくるのかと驚く。
また、定期試験の後には生徒たちに連休が用意される。ただし、試験の合格点に充たなかった生徒には休むことができず、学校での補習授業が課される。
合格点をクリアした同級生たちが試験後の休日や部活動を楽しんでいる間に、赤点になった生徒は学校に通って補習授業を受け、落ちこぼれないように引っ張り上げてもらうということだ。
私立の進学校で落ちこぼれが増えると学校経営に響く。教科担任の責任も問われる。先生方も必死だ。
上の子供が持ち帰ってきた通知表には、「とても楽しそうに生活しています」という担任の先生のコメントが書かれていた。自宅での様子からも上の子供が中学生活を楽しんでいることを察していたが、親としても安心した。
学校の外の学習サポートを付けていない状態では、さすがに英語の成績が芳しくない。この点については何らかのサポートが必要になってくることだろう。
一科目だけであれば、学校の授業との間で内容や進捗にギャップがあったとしても民間の塾に通わせれば何とかなりそうだ。
そういえば、職場に子供を私立の中高一貫校に通わせている同僚がいることを思い出した。ネットではなくてリアルな保護者から話を聞いた方がいいのかもしれない。
同僚の話では、中高一貫校の学習の内容やスピードには多様性があり、中学の段階においては生活圏内の学習塾が対応することが難しいという意見だった。なるほど、私も同じ印象をもった。
また、私立学校においてこれまでになかった新しい人間関係が始まり、公立中学と比べると恵まれた環境の中で子供たちが楽しく生活するというパターンもよくある話なのだそうだ。
しかし、その状況が卒業まで続くわけではなくて、中学三年生の頃には人間関係も一通り構築され、そこからは現実的に大学受験を意識し始めるらしい。同じキャンパスに高校生が通っているので、子供たちとしても先が見えるようだ。
では、個別指導を利用することが王道なのかというと、同僚の家庭においても「そんな金、どこにあるんだよ」という話になったそうだ。一人っ子ならばまだしも、複数の子供を育てていると経済的に不可能だ。
では、中学三年生で高校一年生のカリキュラムを完了させるような授業形態において、それを民間の塾によってサポートすることができるのかという疑問が生じる。そう、私が陥っていた思考のループがそれだ。
同僚の話では、中高一貫校の付近には、その学校の生徒たちが多く通っている学習塾があるらしい。それらの塾の情報をネットで調べても、ただの塾としてヒットするだけなので見分けが付かないそうだ。特定の学校に特化した小規模の塾である可能性もあるし、見慣れた大手の塾である可能性もある。
同じ学校に通っている生徒たちが塾に集まることで学校の情報が把握され、塾講師がカリキュラムを調整しているというわけだ。
そのような学校特化型の塾であれば、個別指導のように月8万円といった高額な教育費は必要にならないし、同級生たちと一緒に学ぶことでモチベーションも維持でき、さらに学校の授業のサポートにもなるというわけだ。
では、自宅から離れた場所に学校があり、ネット検索、あるいは親同士や地域のクチコミが頼りにならない状況でそのような塾をどうやって探すのかというと、子供が同級生や部活の先輩たちから御用達の塾を教えてもらうことができるそうだ。
その後、大学受験が近づいてきた高校生の段階で大手の予備校に通うか、そのままの学習スタイルを維持するかを考えればいい。
なるほど、自分で考えることも大切だが、先人から学ぶことも大切だ。保護者としての先輩のお陰で、やっと納得する答えにたどり着いた。