2022/07/07

ブルーノ・スキッパーにトピークのリアキャリアを取り付ける

1ヶ月に数回程度なのだが、ネット検索でHYPSENTにアクセスしてきて猛烈な勢いで自転車の録ばかりを読み、その後は音沙汰が全くないというネットユーザーが現れる。彼らの意図は分からないが、ミニベロが欲しくなった人の背中を押したのであればそれで良しとしよう。この自転車は毎日の生活を少しだけ豊かにする。

もしくは、ロードバイクを専門に扱っているサイクルプロショップのスタッフがミニベロのカスタムについての情報を探しているのであれば、それは大切な着眼点だと思う。この先、ロードバイクという趣味はさらに人口が減り、プロショップとして別の経営の切り口が必要になる。


いつもながらどうでもいい長文の考察が続くので、ブルーノに取り付け可能なリアキャリアを探している人たちは、以下の「◆」マークまでスキップすると時間の節約になる。

ロードバイクに乗り始めたのは2010年くらいのことだったろうか。それから10年以上にわたってロードバイクを趣味として楽しんできて、昨年、つまり2021年にロードバイクという趣味をやめることにした。

その直接な背景は「これでは落車しても入院先が見つからない」というコロナによる医療現場の逼迫だったが、千葉県内に広がっている谷津道という農道を走る楽しさに気付き、もっとタイヤが太い自転車に乗りたくなった。また、五十路が近づいてきたので、そろそろ自転車に乗って車道を疾走する歳でもないかなと感じるようになった。

しかしながら、サイクリストという視点で眺めてみると、私はロードバイクという趣味が最も楽しかった時代を堪能したという充実感がある。

もちろんだが、趣味の魅力は時間が経過したところで必ずしも色褪せるものではないし、今でもロードバイクという趣味を楽しんでいる人を否定するものでもない。

2010年から2020年くらいの期間はロードバイクという趣味が社会的なブームになっていたのだろう。ヨーロッパのサイクルレースは日本人から見て遠い世界にあったが、その模様をリアルな映像として受け取ることができるようになり、彼らの格好良さを知ることになった。

加えて、日本国内でもホビーライダーを対象としたレースが盛んに開催されるようになり、レースを題材とした漫画やアニメが年齢層や性別を越えてヒットした。

自分なりにこの趣味が面白く感じたのは、世界トップクラスのレーシングシーンで使用されるロードバイクの機材の進化が、ホビーライダーたちにとってあまり遠くないところにあったということだ。

F1で使用される車体を一般人が購入することは不可能に近い。しかし、その当時は一般人が頑張って貯金すればツールドフランスで使用されている車体と同じものを手に入れることができた。

同じ趣味を楽しむ人たちが多ければ多いほど、価値観を共有する存在が増え、仕事や家庭以外の自分の居場所が大きくなる。

ロードバイクがひとつのブームとなり、必ずしもひとりで楽しむ趣味ではなくなった。そのような趣味の広がりがブームをさらに勢い付けた。

しかしながら、最近ではロードバイクブームが下火になってきた。とりわけ、機材の高額化は深刻だ。当時は10万円程度で購入することができたロードバイクのエントリーモデルが、最近では15万円どころか20万円くらいの値段になり、105グレードのロードコンポーネントでさえ電動化してフルセットで20万円という時代になってきた。しかも、一般的な収入が増えない中での製品の大幅な値上げ。

コロナによるサプライチェーンの停滞は今でも続いており、パーツや消耗品が欠品したり、納期が未定になっていたりもする。

シェアの大半を握ることになったシマノの経営戦略がホビーライダーをどのように位置付けているのか分からないが、この流れがホビーライダーたちの要望に沿っているとは思えない。ディスクブレーキや電動コンポをゴリ押ししたところで、新規ユーザーの参入は減り、趣味人口も減る。

他方、小径ホイールのミニベロの世界においては機材のグレードについて考える必要はなく、あくまで本人がその自転車を気に入っているかどうかというだけの話になる。

ある程度のスペックに達したロードバイクの場合にはホイールやタイヤを替えるくらいしかカスタムの面白さがなかったりもするが、ミニベロの場合には乗る度にオプションを変更して楽しむことができたりもする。

ドロップハンドルを取り付けてロードタイプにカスタムしようと、フラットハンドルに太いタイヤで街乗り仕様にカスタムしようと、乗っている本人が良ければそれでいい。もちろんだが、より速く走る必要もないし、より長く走る必要もない。

サイクルウェアを着ようが普段着で走ろうが、そんなことはどうでもいい。スーツを着て走っていても通勤だと思われるだけ。何の違和感もない。

そして、自分が心地よくサイクリングを楽しむことができればそれでいい。ロードバイク乗りによくある不文律はミニベロの世界では存在しないし、その自由度がとても気楽だ。

個人経営もしくはそれに近い小規模経営によってロードバイクを中心に販売および整備しているプロショップは、5年から10年で一気に数が減ると思う。その流れはスキーやカメラ、模型といった趣味を対象とした店舗が国内で珍しい存在になってしまったという事例とよく似ている。

最近ではロードバイクの洗車をメインに扱うショップまで現れたが、同業者が増えれば激しい競争になる。

趣味として手を出しやすい価格帯のミニベロを幅広く取り扱うショップの場合には、車体の販売ではなくてカスタムの工賃やオプション品の販売というメリットがあり、ショップ主催のサイクルイベントの開催も容易だ。

近場にもそのようなプロショップができてそれなりに繁盛しているらしい。ただし、値上がりが続く高級なミニベロに重点を置いて在庫が積み重なるとキャッシュフローが滞り、モデルチェンジのたびにセールで利益が飛んで経営が傾く可能性もある。

値上がり前の駆け込み需要で高級ミニベロがよく売れたことで、二匹目のドジョウを狙って在庫を増やしてしまった場合には頭を抱える問題でもある。

また、国内で幅広く展開している自転車の大手チェーンが、経営破綻したプロショップの元店員を安価で雇い入れて技術力を高めた場合、他のプロショップは生き残ることができるだろうか。

なるほど、それはそれで難しいものだ。



さて、税込の定価6万円で手に入れたブルーノ・スキッパーというミニベロだが、思いのままに自分でカスタムして、今でもそのカスタムは続いている。カスタム自体が終わることはないことだろう。とりあえず走る状態にしたという内容は以下の録に記した。

 細かすぎて伝わらないミニベロカスタム BRUNO SKIPPER

「ブルーノ カスタム」というキーワード検索において、サイクルショップのブログに混じってこの録がヒットしてしまうことが気恥ずかしくも感じる。

日本の場合、自転車のカスタムというとサイクルショップで交換もしくは取り付けてもらうというイメージがある。しかし、ヨーロッパ、とりわけ金にシビアなオランダ人やドイツ人たちはサイクルショップでパーツやアクセサリーを購入して自分で交換することが多いらしい。

「自転車のことは自転車屋に任せる」という餅は餅屋的な日本人の考えは、すなわちサイクルショップを経営する上での大きなヒントになる。街中の小さな電気屋がどうして倒産しないのかという原理にも重なる。

自転車屋にカスタムを任せる人がいて、自分でカスタムを楽しむ人もいる。その二峰性はミニベロの良さだ。

今回は、ブルーノ・スキッパーにリアキャリアを取り付けてみることにした。

自転車で通勤するためにバッグを取り付ける必要が生じたとか、これからキャンプライドを始めるのでキャリアが必要になったというわけではない。

五十路のオッサンが堂々と紹介する話ではないことは承知で記すと、以前、「少女終末旅行」という極めてシュールなアニメ作品を観た。

私はデフォルメされた少女たちを眺めて喜ぶタイプのオッサンではない。人類が絶滅する瞬間を描いた世界観に圧倒され、その状況であっても淡々と生きる登場人物たちに何かを感じた。そして、あまりにインパクトが有りすぎたので、以下の録に当時の心境を記した。

 仲良くなったのかも。絶望と。

登場人物たちといっても、二人の少女以外にはほぼ全ての人類がいなくなってしまっており、作中で出会うキャラクターも二人。その二人も途中でいなくなる。

このように絶望的かつ孤独な状況においても、登場人物である二人の少女が「ケッテンクラート」というキャタピラが付いた乗り物でゆっくりと、しかし地道に進むシーンが印象的だった。

おそらく、この乗り物は彼女たちの生き方を示唆するメタファーとしても表現されているのだろう。

ケッテンクラートは第二次世界大戦期にドイツで開発された半装軌車で、オートバイの後輪がキャタピラになったような形態になっている。前輪操舵ではなくてキャタピラだけで左右に曲がることもできたらしい。

少女終末旅行では、登場人物たちが日用品や燃料、水などを後部の荷台に載せて走っていた。現実に存在していたケッテンクラートにおいても、その小さな車体からは想像しえないくらいの積載能があったそうだ。

この作品を観た人の多くが感じることかもしれないが、私もケッテンクラートが欲しくなった。

家庭があって子供を育てていても、オッサンの人生なんて孤独なものだと達観しつつある。進んだ先に楽園があるわけでもなく、終末があることを察しながら、それでもコツコツと地道に進むという精神世界が、この物語ではケッテンクラートという乗り物で表現されているのだろう。

現実的にはケッテンクラートが容易に手に入るはずもなく、キャタピラが付いた農業用のトラクターは何だか違う。

ならば、ケッテンクラートそのものではなくて、あの世界観に重なる乗り物はどうか。そのオマージュも難しい。中古の軽トラックやカブを買ってカスタムしたところでケッテンクラートにはなりえない。

そうか、乗り物自体の存在感というよりも、乗り手の「生き様」が組み合わさることで初めて意味が生まれるということか。

自室で縦方向にぶら下げて保管しているスキッパーを眺めながら酒を飲んでいた時、「ケッテンクラートみたいに荷物を積めるようにならないかな...」と思った。

自転車の後輪にキャタピラを取り付けるなんてことは不可能だが、小さな車体ではあってもたくさんの荷物を積むことができて、孤独な環境であってもゆっくりと、かつ地道に進むイメージは素敵だなと思った。

ということで、どこでロジックを踏み外したのか自分でも分からないのだが、その動機がアニメだとは他のオッサンたちに決して紹介することができないような理由ではあるけれど、トピークのリアキャリアをスキッパーに取り付けて、江戸川の河川敷を走ってみた。トピーク製を選んだ理由は後述する。

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とりあえずの間に合わせとしてサドルに輪行袋やスペアタイヤを取り付けたままの状態なので、何とも不格好だ。サドルの荷物はそのうち何とかしよう。

ブルーノには純正のキャリアというものが販売されているのだが、デザインもカラーリングも気に入らなかったので却下。洒落た街乗りとしてブルーノに乗り、荷物を載せることがあるというシチュエーションであれば純正キャリアも素晴らしいかもしれない。

しかし、ほぼ全ての人類が絶滅した孤独な世界をミニベロで走る時に乗るというイメージには合わない。

ネット上で検索してみると、サイクルショップの店員たちが「どうです凄いでしょ」とドヤった文体で職人的な工夫によってブルーノのミニベロに他社製のリアキャリアを取り付けていることを知った。

ブルーノ・スキッパーの場合には、TIOGA(タイオガ)のリアキャリアを取り付けているサイクリストがいたので、なるほどそうかとタイオガのリアキャリアを手に入れてみた。

本体は中空かつ軽量で気に入ったが、問題はスキッパーの方にあった。このモデルにはリアエンドにキャリア用のダボ穴があるのだが、シートステーにダボ穴がない。

しかし、シートステーのダボ穴に代わる台座を増設しても、タイオガ製のリアキャリアに付属していた連結部品が長すぎてスキッパーには合わない。

簡単な金属加工で解決するのであれば工夫したいところだったが、これは厳しい。

ネット上の具体例のようにリアキャリアの取付パーツをシートポストに増設した台座まで延長すると、取付パーツが目立って不格好になってしまう。

また、タイオガ製のリアキャリアには、テールライトを取り付けるための台座が溶接されていない。BBBが汎用型のライト台座を販売しているのだが、長期に欠品してしまっている。

ということで、タイオガ製のリアキャリアよりも重いけれど、よく似たデザインのトピーク製のリアキャリアを手に入れた。

この製品は、「TOPEAK(トピーク) スーパーツーリスト チューブラーラック」というリアキャリア。

この製品はミニベロでの使用を前提としていないが、ブルーノ・スキッパーに取り付けることができる。その他に必要となる部品は、後述するシートステー用の台座のみ。この部品については他社製品を流用することができる。

トピーク製のリアキャリアは、同社のトランクバッグをワンタッチで取り付けることができる。大きな荷物を載せる際にはパニアバッグを側面に配置する予定だが、トランクバッグも試してみたい。

耐荷重は25kg。同じラインナップのキャリアを使って日本を一周した人までいるそうだ。そこまで載せる予定はないけれど気に入った。

リアキャリアをスキッパーに取り付ける際には、本体に付属している金属製のステーを車体のシートステーに固定する必要がある。

前述の通り、スキッパーにはフレームのエンドにリアキャリア用のダボ穴があるけれど、シートステーにはダボ穴がない。

つまり、スキッパーのシートステーにリアキャリア用の台座を増設する必要がある。しかし、シートステーに取り付けるリアキャリア用の台座がトピーク製のリアキャリアには付属していない。

今回はタイオガ製のリアキャリアにシートステー用の台座が付属していたので、そのまま流用することにした。市販品としては、NITTOが「CFクリップバンド」という製品名でシートステー用の台座を販売している。探せば他のメーカーにも類似品が認められる。

リアキャリアをシートステーに固定するための部品はミニベロには長すぎたので、金属用のノコギリでカットした。

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リアキャリアを取り付けた後のスキッパーは、少し物騒な小径シティサイクルのような状態になった。

重量としては800グラムくらい増えたようだ。ミニベロの場合にはあまり車体が軽いと不安定になるので、走っている時には気にしない。とはいえ、ミニベロを担いでマンションの階段を登る時には重さが気になる。この点も検討課題にしよう。

ミニベロにリアキャリアを取り付けて走ることのメリットは、所持品を気にする必要がないという点くらいだろうか。

一泊旅行のための着替えを入れて房総半島の温泉宿に向かって走ることもできるし、釣り道具を載せてポタリングを兼ねたフィッシングに出かけることもできる。帰り道に街中でパン屋に寄って家族にお土産を買ったり、農村で果物を分けてもらって走って帰ることもできる。

結局のところ、今の私には遠乗りができて整備が容易な小径のシティサイクルがあればいいというだけの話で、そのイメージに向かってカスタムが進んでいるのかもしれないな。走りを重視するのならばドロップハンドルのロード仕様だが、その気になればカスタムを変えればいい。

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江戸川にかかる橋を渡っていたら、中州のような形で土地が点在していた。

その昔、「プロゴルファー猿」というアニメが放映されていたことを思い出した。ありえない場所にグリーンが設定されて少年と闇ゴルファーが対戦し、負けると厳しい罰があるというシビアな物語が繰り広げられていて、しかも主人公はドライバーだけでパッティングまでこなしていた。

当時はただのアニメだと思って楽しんでいたが、今から考えるとこんなところにグリーンが設定されていたわけだ。ありえない。

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江戸川の河川敷を走った後、旧江戸川沿いをのんびりと走って帰ってきた。堤防沿いにはたくさんの人たちが夕涼みを楽しんでいて、目の前には綺麗な夕焼けが広がっていた。

スキッパーを停めて写真を撮っていたところ、通行者の人たちが私と自転車の間を避けて遠回りしてくださった。場所としては浦安の元町。この付近の人たちは浦安の新町と違って優しいと思った。

ロードバイクでナイトライドに出かける時には、それなりに気を張って走っていたけれど、ミニベロに乗り換えてからはママチャリと同じでとても気楽だ。

リアキャリアに着替えを載せて、房総半島の温泉宿まで一泊旅行に出かけるという考えは、あながち遠い先の話ではないかもしれないな。