後輪を外さないコクーンの輪行袋
私は数日あるいは1週間くらいよく似たテーマで考えごとをする傾向があるようだ。器用に頭の中を切り替えられれば良いのだけれど、融通が利かない。
また、他者に娯楽や耳寄り情報を提供するためにログを残しているわけではないのでテーマに波があっても気にしない。
電車通勤の最中、前回の内房方面へのロードバイクでのサイクリングのことを思い出していた。千葉市や市原市の車道はとても走りやすくて快適だった。人も街も穏やかでリラックスすることができた。
内房ではなくて外房にも行ったこともあるが、何か寂しげであまり感じることが少なかった。
歩行者やサイクリストなどで混み合っている荒川や江戸川の河川敷に辟易していた私にとって、それらに代わるルーティンルートを得たことは、悪天候が続いて沈んでいた実走への動機付けとして余りあるものだ。
自転車は一人で乗るものだ。今までの私はサークルについて色々と考えすぎて自らのサイクルライフの幅を狭めてしまっていた。自分が心地よいスタイルで走ればよいだけの話だ。
人は一人で生まれて一人で死んでいく。他者を心の拠り所にすることは間違っていないかもしれないが、誰かに期待しているからこそ失望が生まれる。期待しなければ失望も生まれない。残り20年あるかないかの短い人生だ。私は走りたいように走る。
しかし、このルーティンルートにおいて、これだけは考えておかねばというゾーンがある。それは近くの市川市内や船橋市内の道路。
浦安市から内房まで自走で往復するためには、市川市や船橋市の海側の357号線を走るか、海から離れて細かく市街地を遠回りしながら千葉市などに抜ける必要がある。
千葉市や市原市のロードバイク乗りが荒川や江戸川、東京方面に行く際にも、市川市や船橋市のエリアが危険で面倒に感じるかもしれない。
船橋や市川の都市計画に文句を言っても仕方がないが、この二つの街がサイクリストの聖地にならないであろうことは分かる。
しかし、道路は走りやすくても住民やディズニー客の他府県ナンバーの乗用車、さらには鉄鋼団地の大型車が行き交う浦安の民が言える立場でもない。
神経質な私としては、いつ自動車や歩行者が飛び出るか分からない市川や船橋の市街地の細い道路を走るよりも357号線を選ぶ。市街地や住宅街を抜けるルートも気分転換には良いが、続けていると苛立ちが溜まってくる。
ところが、市川や船橋の357号線の車道はサイクリストにフレンドリーではなくて、もはや自転車で走ること自体が無謀だと言える。ソロライドは特に危険で不便だ。
ほとんど路肩がない状態でトラックや乗用車がスピードに乗って迫ってくる。白線のすぐ脇がガードレール。反対側は自動車の列。落車すれば命を落としかねない。言葉通りの命懸けのサイクリングになるので、歩道に回避せざるをえない場所が多々ある。
これは堪らないと歩道を通ると、そこにあるのはゴミだらけの非常に厳しい光景だ。ゴミだけでなく、ガラスの破片、金属片、朽ちた雑誌、尿入りペットボトル。モラルが破綻した地獄の気分を味わうことができる。
市川や船橋の行政は気にならないのかと思ったが浦安も357号線は汚いところがある。地域住民というよりも通りがかるドライバーの道徳が関係するのだろう。自分たちが住む街で同じことをしないはずだ。
しかも船橋や市川の357号線沿いは、自動車の排気ガスをベースに、商業系とも工業系とも判断できない様々な臭いが漂っている。何とかならないだろうかと思った。
長時間の電車通勤でふと見渡すと、たまに縦長の輪行袋に自転車を入れて持ち運んでいるサイクリストの姿が目に入る。朝の通勤時間には迷惑な存在ではあるけれど、とても気を遣って行動していることは分かるので気にしない。
輪行の場合にはロードバイクの前輪と後輪を外して大きな輪行袋に入れて電車に乗るわけだが、駅でロードバイクを解体して梱包する作業が面倒だ。ホイールやフレームに傷が付くことが多く、リアディレイラー周りを破損するリスクもある。
どうやら彼らは前輪を外すだけの輪行袋を使っているようだ。となると、タイオガのコクーンだな。確認してみる。やはりコクーンだ。
コクーンという単語は「繭」を意味する。確かに繭のような形だな。中には虫ではなくて自転車がある。
以前からコクーンの存在は知っていたけれど、後輪を外さない輪行はもっとかさばるのかと思っていた。後輪を下にして立てると、それはそれで乗客には邪魔かもしれないが、思ったよりも横方向にスペースを取っていないことに気付いた。
しかも、後輪だけでキャリアバッグのようにロードバイクを転がしながら運ぶことも可能なのだそうだ。
最近では伸縮性のある素材を使用することでサドルまで覆うタイプのコクーンが販売されている。フレックスコクーンという商品名だ。
よくよく考えると日曜日の早朝の下り方面のJR京葉線は空いている。夢の国にやってきた観光客も夢の中で眠っているだろうし、新浦安駅で速やかにコクーンに入れて輪行で蘇我辺りで下車すれば、もっと楽に内房へアプローチすることができるかもしれない。
しかも、私が気に入っているのはJRの京葉線や内房線に沿って走る内房ルートなので、機材や体調に異変があっても輪行が楽だ。
市川や船橋の357号線沿いの地獄もそれなりに趣があるが、このエリアをショートカットすることができる気がしてきた。あとは重量級の愛車のクロモリロードバイクを担いで運べるかどうかだ。焼け石に何とやらだがロードバイクを少しでも軽量化する必要があるな。
通勤電車を降りた頃には、すでにフレックスコクーンをポチっていた。今度の週末に試してみよう。何か新しい発見があるかもしれない。