2022/05/12

モンベルのフラットペダル用シューズ「トレールライダー」を履いて気分良く踏み出す

玄関で履いた時、ミニベロを担いで階段を降りる時、そしてペダルを踏んだ時。このシューズはそれぞれの瞬間で「素晴らしい」と実感する。コロナで医療機関が逼迫した頃、落車による負傷をできるだけ回避するためにスポーツ自転車のペダルをビンディングからフラットに交換した。その後も気に入ってフラットペダルを愛用することにした。

しかしながら、距離として30kmを過ぎた頃から生じる足裏の痛みに悩まされた。街乗りならばともかく、フラットペダルを踏み込むとソールの剛性が足りなくて足裏に負担がかかる。トレッキングシューズやフラットペダル用シューズ、さらには安全靴に至るまで様々なシューズを試し、モンベル(mont-bell)の「トレールライダー」にたどり着いた。モンベルのシューズは店頭でサイズ感を試すしかないと思い込んでいたので、店頭在庫がない時期が続いて購入を戸惑っていた。


サイクリングに出かけて快適に感じる要素、ならびに苦しむ要素は表裏一体になっている。とりわけ「痛み」の影響は大きい。

いくら速く走ることができたとしても、途中でどこかが痛くなった時点でサイクリングは楽しさが減ってしまう。一体、どこが悪いのかと気持ちも落ち込み、モヤモヤした感情を引きずりながら帰宅することがほとんどだ。

他方、50kmを走っても100kmを走っても身体のどこも痛くないという状態であれば、次回のサイクリングが楽しみになる。

ペダルを回す際の効率や踏力感などはビンディングの方がもちろん優れているけれど、これはレース用の機材であって、自動車や歩行者が行き交う一般的な道路では使いづらいこともある。不意の挙動で落車しやすくもあるし、クリートの交換費用もかさむ。

しかも、ビンディングペダルの場合にはクリートの調整が合っていないと表現しがたい不快感があったり、無理すると膝痛を起こして苦しむこともある。

とはいえ、坂道を走っている時や高速走行時に側方もしくは後方を確認する時、ペダルと足が固定されていた方が安全だということは十分に承知している。用途に応じてパーツを変更する点はスポーツ自転車の楽しさのひとつだ。

医療が逼迫している時期には落車して負傷しても入院することができないと思って使い始めたフラットペダルだが、よくよく考えてみるとビンディングシューズを履いてペダルを回す歳でもないかなと感じるようになった。

五十路が近くなると職場では責任ばかりが大きくなり、趣味で怪我をして休むわけにもいかなくなる。ベテランになったことで代わりが利かない存在になったという意味ではなくて、使えなければ元気がある代わりを用意されることがあるという意味だ。上から見れば下は歯車の一部に過ぎない。

その一方、家庭では子供たちの教育費がかさみ、父親は当然のように金を稼いでくる存在になるようだ。「歩くATM」とはなるほど当を得た表現だと思いもするし、年々老いてくる身体を自分で管理し、定年まで金を稼ぐことを虚しくも感じる。

歳をとってから大きな怪我をするとリハビリが長引いて古傷になるわけで、限られた残りの人生において趣味を楽しむ時間が減り、QOLも低下する。停車時にペダルから足が離れなくて落車したり、立ちゴケで鎖骨を折ったりすると笑えない展開になる。できるだけ安全に趣味を楽しもうと思った。

さて、フラットペダルを使い始めてから分かりやすく変わったことがある。それは、膝痛を感じる頻度が明らかに減ったことだ。しかも、サイクリングの最中にペダル上の母指球の位置を変えることで疲労を分散させたり、踏力やケイデンスを微調整することができたりもする。

だが、良いことばかりでもない。フラットペダルで定番となっている三ヶ島の製品を使っていると、スニーカーやスポーツシューズのソールにペダルの凹凸が食い込んでしまう。また、雨上がりのコンディションなどではソールがペダルから滑って足が離れそうになる感覚があったりもする。

そこで、シマノが販売している「SH-ET300」というフラットペダル用のシューズを数ヶ月使用してみたのだが、どうにもしっくりこない。ネット上のユーザーレビューや評判をチェックしても、なるほど人によって評価が分かれる微妙な使い心地だった。

ポタリング程度ならば問題ないのだが、踏力をかけて真面目にペダルを回していると30kmの距離を過ぎる頃に足の裏が痛くなってくる。また、甲高幅広の日本人の足型にあまりフィットしていないように思える。横幅を合わせてシューズを購入すると、足先が余ってしまって収まりが良くない。

シマノは日本にある企業だけれど、経営戦略としては国内企業というよりも外資系企業に近い。アパレルについてはその特色が如実に現れており、日本人ではなくて欧米人が使うことを想定した設計になっていると言わざるをえない。

まあ確かにサイクリング用品の市場規模としては日本よりも世界を考えた方が利益を望むことができるわけで、国内ではパールイズミが日本人に合わせた製品をリリースしてくれている。とはいえ、シューズについてはシマノの方がリードしていることは否めず、シマノのシューズが自分に合わないと選択肢が減る。

シマノのビンディングシューズには日本人向けのワイドサイズがあるけれど、SH-ET300にはワイドサイズの展開がない。

サイクル業界ではなくて、サイクリストの個人ブログをチェックしてみたところ、モンベルのトレールライダーの評価がとても高いことを知った。だが、トレールライダーは安い製品ではないので、ネット通販でこれを購入することに抵抗があった。

シマノのシューズの場合には、これまでに何セットも購入してサイズ感を知っているので通販でも購入することができたりする。モンベルのシューズはどうなのか分からない。ネット上のユーザーレビューにおいては、トレールライダーは通常のサイズよりも1つ下が良いとか、通常のサイズとぴったりだとか、参考にならないインプレが並んでいた。

しかも、コロナ禍でサプライチェーンが滞っているのか、オンラインショップであってもトレールライダーの欠品が続いていた。ずっと待ち続けてようやくネット上で在庫ありと表示されたのだが、店頭在庫がない。

これではサイズ感を確かめることができないと落胆し、半ばキレ気味に通常のサイズをオンラインで注文することにした。

配達されたトレールライダーを試しに履いてみたところ、明らかに普段使いのシューズよりもサイズが大きい。おそらくトレールライダーの足型は、登山靴やトレッキングシューズに基づいて設計されている。これらの種類の靴を履くときには通常のサイズよりも大きいものを選び、厚手の靴下を履くことが一般的だ。

これは失敗した。返品不可のシューズを購入してしまった場合、メルカリに出品しても買い叩かれるだけだ。

しかしながら、モンベルの納品物の中に1枚の紙が入っていた。

商品のタグが外されておらず、傷や汚れがないようであれば、モンベルにサイズの交換や返品を依頼することができるらしい。ここがポイントだな。配達された商品については、外箱を含めて傷や汚れが入らないように慎重に試着し、サイズが合わない場合には外箱を含めて丁寧に梱包して送り返す。

通販で届いた商品については外袋やタグを真っ先に取り外してしまう私だが、今回は最初に試着したので助かった。

あくまで現時点の状況としてモンベルのトレールライダーをネットで購入する場合には、①普段のサイズを目安に注文し、②サイズが合わなければ送料だけを自己負担する形でモンベルに送り返すことで、③交換された商品がすぐに到着するシステムを用意してくれている。

それにしても、オンラインショップで注文する前にトレールライダーのサイズ感を懸命にネットで検索した苦労は何だったのか。トレールライダーを紹介しているサイクリストの個人ブログには、「モンベルでは通販においてもサイズ交換が可能」なんて記されていなかった。

しかも、サイズ交換を希望する場合の送料はユーザー負担だが、商品の金額によって送料無料が適用される場合には、モンベルからの再送分の送料が無料になった。さすが日本国内のユーザーに寄り添っているモンベルだ。シマノとは違う。

では、シマノとモンベルのフラットペダル用シューズを実際に比較する。個人的にシマノの経営戦略はあまり好きではないが、それらの先入観を排除して客観的に比べてみる。

最初に、シマノのフラットペダル用シューズ SH-ET300の外観。

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デザインとしてはトレールライダーよりもSH-ET300の方が気に入っている。また、トレールライダーよりも軽い。例えば、ありえない話ではあるけれど、エンデューロレースにてどうしてもフラットペダルの自転車で出場せざるをえないのであれば、トレールライダーではなくSH-ET300を履くと思う。

また、このシューズは通気性がとても高いので、炎天下のサイクリングでサンダル代わりに履くのであればトレールライダーよりも涼しいと思う。反面、春秋から冬場にかけては足先が凍る。

次に、モンベルのトレールライダーの外観。

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趣味としてアウトドアを楽しんでいる人にとっては見慣れたローハイトのトレッキングシューズだと思う。通気性は確保されているが、春秋に履いても足先の寒さを感じない。まだ履いていないので分からないが、炎天下で履いた場合には多少は蒸れるかもしれない。

また、ビンディングシューズを履き続けてきたサイクリストから見ると、トレールライダーのデザインはスタイリッシュさに欠けると感じるかもしれない。

さらに、BMXやトライアルバイク、ピストバイクに乗っている洒落た若者たちにとっては、CHROMEやVANSといったストリート系の洋物を好むだろうから、まさに中高年が山歩きで使っているような国産のトレッキングシューズのデザインを見るとドン引きするかもしれない。「洋物」と表現している時点で、私が団塊ジュニアのオッサンなのだなぁと実感する。

しかしながら、オッサンになってくると見た目なんて関係なくも感じるわけで、私としては気にならない。トレールライダーのデザインが洋物のビンディングシューズのようにスタイリッシュだったなら、国内どころか海外でも売れすぎて、ただでさえ品薄なシューズの入手がさらに難しくなる。これでいいのだ。

次に、両者のヒールの形状と使い心地について。

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シマノ SH-ET300の場合には、「サイクリングシューズだけれど、歩くこともできる」という設計になっているようだ。かかとを包む部分のサポートはあまり厚くないし、履く際に引っ張るベロも付属していない。観光や輪行程度で歩く分には問題ないが、これを履いてアウトドアで歩き続ける気になれない。

また、上記の写真では、SH-ET300にサイクル用のSIDASのインソールを入れているが、サイクリングに出かけると足裏が痛くなることがあったので、シューズよりも高額なインソールを入れて耐えていた。ビンディング用のインソールは微妙に合わなかったりもする。

モンベルのトレールライダーの場合には、「トレッキングシューズだけれど、ペダルを漕ぐこともできる」という設計だと思う。ハイカットのトレッキングシューズでペダルを回し続けると足首の皮膚がこすれて痛くなったりもするので、ローカットが望ましい。

履いた感触はまさにトレッキングシューズで、アウトドアスポーツや山歩き、普段使いの靴として使えると思った。かかとの菱形のモンベルマークは反射板になっており、想像以上によく光る。夜間の視認性に貢献することだろう。

次に、つま先やソールの形状と使い心地について。

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シマノのSH-ET300の場合には縫い目がシングルで、モンベルのトレールライダーは縫い目がダブルになっている。縫い目がシングルであっても走行中に裂けることはないと思うが、長期的な耐久性を考えるとタフに縫ってくれていた方が助かる。

写真では分かりにくいのだが、アッパー部分の質感は明らかにトレールライダーの方が上質だ。

靴を裏返してソールを比べてみる。写真の撮影前に洗ってできるだけ綺麗にしたのだが、少し汚れが残った。

横溝や複雑なパターンになっているソールがシマノのSH-ET300。六角形の均一なパターンになっているソールがモンベルのトレールライダー。

SH-ET300のソールはスニーカーなどよりも硬く、三ヶ島のペダルがソールに食い込むという感覚はない。しかし、このソールはノコギリのような縦面がある三ヶ島のペダルではなくて、滑り止めのピンが配置されたシマノのペダルでの使用を想定しているようだ。

SH-ET300を履いて三ヶ島のSYLVANやBM7といったペダルを踏むと、横方向の溝の角度とペダルの踏面のギザギザの角度が微妙に合わない。また、ソールの横方向の溝とペダルの踏面のギザギザを噛み合わせた時、母指球の前後位置が微妙にずれる感覚がある。

ウェットな状況でソールとペダルがズレることはないのだが、ソールとペダルが密着しているような感覚がない。また、シマノのフラットペダルと比較して踏面が狭い三ヶ島のペダルを踏み続けていると、足裏が痛くなる。

一方、モンベルのトレールライダーのソールは均一なパターンなので、ペダルの凹凸に関わらず踏面にフィットする。トレールグリッパーと名付けられたソールの素材は、モンベルのトレッキングシューズにおいても採用されているもので、どのような路面でも確実にグリップするように設計されているのだろう。

なお、モンベルのオンラインカタログには、トレールライダーには「ビンディング並のグリップ力」という記載があり、「引き足ができないのだから、ビンディング並はオーバーだろ」とブログで突っ込んでいるサイクリストがいたりもする。

そのような人たちは学生時代の国語の読解力の点数があまり高くなかったことが推察される。ブログの文章を読んでも分かることだが。

確かにグリップという単語には物を掴むという意味がある。しかし、この場合の文脈を考えると垂直下方向あるいは水平方向に力を加えた場合のソールとペダルの固定力を意味している。

引き足に使用する垂直上方向の固定力については、そもそもフラットペダルにその機能がないのだから比較対象として含まれていない。つまり、先のレビューは文脈としてありえない要素をもって矛盾を指摘しようとしている。

では、ビンディングを使い続けてきた私がトレールライダーのソールのグリップを表現するとどうなるか。これが実に面白い。垂直下方向あるいは水平方向の固定力においては、もちろんだがカーボンソールのシューズとSPD-SLペダルの方が確実だ。ダイレクト感もある。

しかし、トレールライダーのソールが滑ったりぐらつくというわけではない。むしろペダルの上でソールが適度にしなっている気がする。ビンディングでシューズとペダルを固定している場合、衝撃が足首や膝にかかって疲れたりもするが、トレールライダーの場合には関節への衝撃がいなされているようにも感じる。

また、シティサイクルによくあるプラスチック製のフラットペダルの場合にはトレールライダーのソールでも滑るかもしれないが、金属製の凹凸が付いたペダルの場合にはペダリング中に足が外れるという恐怖心を覚えない。けれど、信号待ちで足を地面に付けたい場合には、当然だが足首を回してビンディングを解除する必要も、クリップから足先を引き抜く必要もない。このギャップがとても面白い。

加えて、トレールライダーのソールはSH-ET300よりも剛性が高いらしく、私の場合には三ヶ島のペダルを長時間踏んでいても足裏に痛みが生じることがない。そう、これこそがフラットペダル用シューズに求めていた要素だ。

しかも、河川敷や林道等の悪路を走る時にはミニベロを担いで土手や障害物を乗り越える状況があったりもするのだが、トレールライダーはトレッキングシューズと同じグリップなので安心して歩くことができる。

最後に、フラットペダル用シューズの課題としては、冬時期の足先の寒さをどう防ぐのかという点が挙げられる。ビンディングシューズの場合には専用のカバーが多数販売されているのだが、フラットペダルで使用しうるカバーは少ない。

調べてみたところ、PEARL-IZUMI (パールイズミ) が「ウィンドブレーク ライトスニーカーフィット ロードシューズカバー」という製品をリリースしていたので、早速手に入れてみた。どうやら、ワイズロードと共同で開発したらしい。さすが日本のユーザーに寄り添ってくれるパールイズミとワイズロードだ。シマノとは違う。

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このシューズカバーは5℃まで対応しているそうだ。通気性が高いシマノのシューズであれば足先が冷えるかもしれないが、トレッキングシューズのようなトレールライダーにこのカバーを合わせることで、厳冬期でも快適にペダルを回すことができる。

ビンディング用のシューズカバーの場合には、クリートの部分だけが切り抜かれているけれど、フラット用のシューズカバーなので踏面が大きく開いている。

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踏面が広いフラットペダルであればカバーが干渉してしまうかもしれないが、三ヶ島のペダルであればちょうど良く開放部にフィットする。また、このカバーは歩く用途で設計されていないので、自転車から降りて歩く場合には取り外す必要がある。

ということで、今後はモンベルのトレールライダーを履いてサイクリングに出かけることにした。シマノの SH-ET300については、雨の日に走った後でトレールライダーが使えない場合の予備として、もしくは炎天下でのサンダル代わりとして使うことにする。

せっかくなので、 SH-ET300からSIDASの高価なインソールを取り出し、トレールライダーに入れてみた。

トレールライダーを履く場合には、サイクリング用の薄い靴下よりも、ある程度の厚さがある靴下を履いた方がフィット感が良いらしい。トレッキングシューズを履く場合と同じ感覚なので、靴下が薄いと逆にゴワゴワして違和感がある。

トレールライダーをスペアとしてもう一足を手に入れようかと思ったが、磨り減って劣化する気配がないので、数年後にリピート購入しようかと思う。モンベルはシマノのように頻繁にモデルチェンジを繰り返すことがないので、おそらくその頃にも入手が可能だと思う。オッサンになってくると、「変わらないこと」に美学を感じたりもする。

それにしても良い買物だった。