ようやくシクロクロスベースのオールロードが完成
フラットバーのロードバイクは珍しくないが、フラットバーのシクロクロスを見かけたことがない。そもそもシクロクロスをフラットバー仕様にする必然性はなく、私もシクロクロスバイクが欲しかったわけでもない。
ロードバイクをフラットバー化させた後、より太いタイヤを使ってみたくなり、キャリパーブレーキでは限界があるということで他のクロモリ製フレームを探していたら、パナソニックのカンチブレーキ仕様のシクロクロスフレームが世に出ていた。
サーリーのクロスチェックでも良かったのだが、このコロナ禍の自転車ブームで欠品が続いていて、カラーオーダーが可能だということでパナモリにしてみたわけだ。
フレームが到着した後、少しずつコンポやホイールを取り付けて、テスト走行を行った後、再び細部を修正して、ようやくサイクリングに使うことができるような状態になった。
フロントの駆動系はGRXのシングル、リアの変速系はR8000、ブレーキやシフターのグレードは分からないがおそらく105、そして32Hの手組ホイールに32Cのコンチネンタルの四季タイヤ。
量販店の吊しの完成車としては見かけることがないであろう組み合わせでバラ完からオールロードバイクを組み上げて、近くのサイクルベースあさひで防犯登録を済ませた。
若くて礼儀正しい店員さんは、自分で自転車を組んだことよりも、ほとんどのサイクルパーツが在庫切れの状態で部品を用意して自転車を組んだことに驚いていた。
この自転車に乗って浦安の新町を一周してみた感想としては、ロードバイクよりもBBの位置が高めに設計されたシクロクロスのジオメトリーに少しの違和感を覚えた。
しかし、シクロクロスレースを想定しているだけに、ストップアンドゴーが楽だ。このダイレクトな踏み心地は街乗りでも意味がある。
ポジションについては問題がなく、修正が必要なところは見当たらない。
とはいえ、カンチブレーキ仕様のフレームにノーマルアームのVブレーキを取り付けているので、ブレーキングがかなりピーキーだ。カックンブレーキと表現しても差し支えない。
カンチブレーキでは街中での制動力に不安があるのだが、効きすぎるブレーキもそれはそれで怖い。
最近のクロスバイクの完成車では、アームの長さを短くしたショートVブレーキが標準仕様になっていることが多い。これによって、ブレーキの引きしろとトルクを減らすという効果があるらしい。
しかし、それでは太いタイヤの交換でブレーキを開放することが難しいかなと考えてノーマルアームを選択した。
フロントにはパワーモジュレーターを追加しているのでパニックブレーキでもジャックナイフを抑制することができそうだが、R8000系のキャリパーブレーキのような漸次性がない感じがする。
そうか、思い出したぞと自宅に戻り、テクトロが販売しているカンチブレーキ用の舟に、BBBのウルトラストップというキャリパーブレーキ用の柔らかいシューを取り付けて、ブレーキタッチをマイルドにしてみる。
この方法は10年くらい前にVブレーキ仕様のミニベロに乗っていた時に使っていた。Vブレーキがキャリパーブレーキのような感覚になり、アルミリムへの攻撃性も少ない。
さて、10月にはコロナの緊急事態宣言が解除され、待ちに待ったサイクリングのシーズンが訪れる。随分と長い時間を耐えたわけだが、その日が近づくと準備に焦る。だが、その感覚がいい。
しかし、医療現場が崩壊しているにも関わらず、その状況を無視してスポーツ自転車に乗って走り回る輩がたくさんいたことを忘れない。世の中には思ったよりもアレな人が多いということか。
別に法律や条例で禁止されているわけでもないし、走ったところですぐに入院するような事故に遭うという話でもない。
しかしながら、社会の情勢を眺めて自らの行動をコントロールすることは大切だと思うわけで、そのようなことを考えないサイクリストは、もはや自分が理解しえない考えの持ち主だということがよく分かった。
ここまで逼迫した状況であるにも関わらずロードレースが開催されて、そこで落車事故が発生して骨折等の怪我を負った人までいるらしい。そのような人たちに対して同情を感じることはない。
我欲を追い求めた結果でしかないし、社会から批判を浴びたフェスの参加者と精神構造が同じなのだろう。
とりわけ、ツイッター上で自分のロードバイクの画像をヘッダーやアイコンに貼り付けて、緊急事態宣言下でも突っ走り、有意義な時間を過ごしたとアピールしている人たちの多くは、もはや別の世界にいる人たちだということがよく分かった。彼ら彼女らは社会だけでなく、政治や行政についても関心がないようだ。
自分が楽しく感じることを優先し、それらを他者に承認してもらいたくて仕方がない人たちというわけだな。自転車以外に自分の存在を認めてもらう手段がないというわけか。
そのような人たちについては存在自体を意識の中から消し去ることにして、医療が苦しい中で迷惑をかけないようにと感じながら自転車のカスタムに趣味の時間を費やした。
ここまで病床の占有率が下がってくればサイクリングに出かけて大丈夫だろうと走りたくなったが、やはりもう少しだけ我慢してみようと思った。
私は根拠に乏しいことを信じるタイプではないが、「験担ぎ」については信じるタイプだ。心のどこかに引っかかることがあると、集中が途切れてトラブルが生じる気がする。トラブルに巻き込まれても自分が納得しうる状態になっていれば諦めも付く。
短い時間のテストライドでは全てを察することが難しかったが、32Cのワイドタイヤの面白さに気付くことができた。23Cから35Cくらいまでのタイヤを同じフレームで試すことができるのはオールロードの醍醐味だと思う。
23Cから25Cに換装すると走り自体はモッサリした感じになるが、最高速が極端に落ちるわけでもなく、むしろ安定して走ることができるという感触があった。
25Cから28Cに換装すると走りがさらにモッサリした感じになって最高速が落ちるが、25Cでは味わうことができない安定感があった。
では、普通のロードバイクでは換装が難しい32Cのタイヤに換装すると何が起こるのかというと、これは非常に面白い。
28Cと32Cのタイヤで走ってみた場合、同じように感じることもあるし、全く違うように感じることもある。その違いに何があるのかというと、おそらく空気圧なのだろう。
32Cタイヤの限界まで空気圧を高めると、実際に走っていて28Cとあまり変わらない感じがする。しかし、太さとしてはママチャリと同じくらいのサイズなので、空気を高圧に入れる必要もない。それらをコントロールすることで乗り味が変わってくるということか。
加えて、パナソニックのクロモリフォークにはナカガワのエンドワッシャーのような部品が初期仕様として取り付けられているので、フロントの剛性が異様に高い。これには驚いた。
まるで、フロントホイールとフロントフォークが溶接されているようなダイレクト感がある。ちょっとした坂道でスタンディングで漕いでも全く撓ったり歪まないという感覚が手に取るように分かるのだが、タイヤの空気圧が高すぎると路面の凹凸が振動として手に伝わる。
フロントとリアのタイヤの空気圧を調整するなんて、25Cタイヤを使っていた頃には気にしたこともなかったが、32Cタイヤになると様々なセッティングが必要になるのだろう。
しかしながら、歩道に乗り上げても怖くないという点では、32Cタイヤの恩恵を十分に感じることができた。最高速としては格段に落ちてしまうのだが、谷津道を気にせず走ることができるパスハンター仕様のスポーツバイクが欲しかった私にとっては、十分すぎるくらいの完成度だと思った。
将来的には、11速ではなくて9速くらいに変速系をダウングレードしてもいいかなと思うのだが、そろそろ子供たちが私立中学に進む時期だ。余計な出費を抑える必要がある。
事故に遭って使用不能になるといったアクシデントを除けば、これからこのオールロードに乗ってサイクリングに出かけ、浦安市から引っ越した後には通勤でも使用することになる。
寝床の真横にラックを立てて組み上がった自転車を縦置きで固定し、夜になって寝る時も、朝になって目覚める時も、この自転車を眺めている。
大して予算をかけずに安上がりで仕上げたけれど、細かなところまで自分のこだわりが込められている。
「よろしく頼むよ」と思いながら、来たる日を待つ。そろそろ稲田は黄金色に色付く季節だろうか。谷津道を訪れる時が楽しみだ。
このような時、組み上がったスポーツバイクの写真を貼り付けて、「どうだろ、すごいだろ」といった感じでアピールするネットユーザーがいたりもするが、私にはそこまでの自己愛も承認欲求もない。