2021/08/05

オールロードバイクとパスハンターにみられる相同性と相似性

千葉県内に広がる谷津道を探すサイクリングに魅入られた私は、このような道を走る上で適したスポーツ自転車を用意することにした。五十路が見えてくると短い人生だ。あまり躊躇せずにパナモリのシクロクロス用フレームをオーダーして、8月末の納品を待っている。

その際に私の中で認識が違っていた部分がある。悪路を走ることができるという売り文句のグラベルロードバイクというカーボン主体のフレームが気に入らず、太いタイヤが入るスチールフレームを手に入れてバラ完でカスタムしようと思っていたのだが、そのジャンルはすでに「オールロード」と呼ばれているらしい。


オールロードとは何かというと、「太いタイヤを取り付けることができて、ドロップハンドルにも対応していて、舗装路も未舗装の路面も走ることができるというスポーツ自転車」という解釈になる。

「これはオールロードです」といっているサイクル関連のネット記事を見かけるが、何をもってオールロードなのかという定義は非常に曖昧だと思う。

「それならば、ロードバイクだってグラベルキングのタイヤを取り付けて頑張れば砂利道を走ることができるからオールロードで、マウンテンバイクだってスリックタイヤを取り付けて舗装路を走ればオールロードで、ママチャリだってオールロードではないか」という突っ込みが入りそうだが、それらの指摘は強ち間違ってもいないように思える。

オールロードというジャンルは、フレームのジオメトリーやタイヤサイズ、フレームの素材、リアエンドの幅といった様々な規格が定められているわけではなくて、むしろ走り方や用途に応じて形作られたイメージや概念に近いような気がする。

どうして定まった規格がないのかというと、そもそもレースを想定していないので規格を定める必要がなかったという背景があるのかもしれないし、もっと自由にカスタムやサイクリングを楽しみたいというユーザーの気持ちが背景にあるのかもしれない。

自転車ではなくて自動車の世界でも、SUV (Sport Utility Vehicle)というジャンルがあり、オールロードの概念とよく似ているように感じる。

ピックアップトラックから派生したラダーフレームの四輪駆動車という純粋なSUVだけでなく、ラダーフレームがないクロスオーバーSUVという車種、さらにはスズキのジムニーでさえSUVに含まれる。

ジムニーがSUVに該当するのかという点は自動車業界でも議論されていることがあったりもするが、ジムニーを製造販売しているメーカーのスズキが「SUVだ」と銘打っているそうなので、SUVなのだろう。

さらに飛躍すると、スラッシュメタルのBIG4と呼ばれる「メガデス」というヘヴィメタルバンドのギタリストだったマーティ・フリードマンさんが、こぶしの利いた日本の演歌を耳にして、「これはロックだ!」と表現することがある。

著名なギタリストがロックだと呼ぶのだから、日本の演歌はロックなのだろう。世良公則さんに至っては、音楽に直接的に関係のない事象についてもロックだと表現することがある。

ロックというイメージは誰もが持っているだろうけれど、何をもってロックなのかは定義が難しい。その成り立ちには音楽だけではない様々な分野が関わっているからだな。

オールロードという言葉には、それらに似た感じがある。まあとにかく、細かいことはいいんだよという話だな。

車道を走ったり、街乗りで歩道を通過したり、店の前に立てかけることもあれば、砂利道や林道を走りたいこともあるというサイクリストの理想が形になったものが、オールロードなのかなと思う。

自転車業界としても、オールロードを求めるサイクリストのスタイルやニーズに応じる形で、「グラベルロード」というジャンルのロードバイクをリリースしているが、それらが大ヒットしているようには見えない。

スポーツバイクの初心者が、「ロードバイクはタイヤが細くて怖いから...」という理由で買っている気がしてならない。また、個人的には、カーボンフレームでディスクブレーキの既製品のオールロードに魅力を感じないし、倒れただけで走行不能になることもあるカーボンフレームの自転車で街乗りに出る気になれない。

むしろ、オールロードについては、既存の車種をユーザーやショップがカスタムしたり、フレームからバラ完することで品物を作り出すことが流行っている気がする。

ネットを眺めた限りでは、マウンテンバイクのフレームにブロックパターンではなくスリックパターンのタイヤを取り付けて、オンロードもオフロードも走ることができるようにした自転車は、MTBベースのオールロードに該当するらしい。

また、ディスクブレーキ仕様のロードバイクの中には太いタイヤを取り付けることができるモデルがある。

そのようなロードバイクにセミブロックの太いタイヤを取り付けたスタイルがグラベルロードバイクなわけで、つまりグラベルロードバイクは既製品のオールロードという私なりの解釈になる。

オールロードの分野でパイオニアとなっているのは、米国のサーリーというメーカーだな。

レースには脇目も振らず耐久性に全振りしたような鋼鉄製のフレーム、ドロップハンドルが付いているのに一目で分かる野太いタイヤ。

しかし、クロスバイクなのかというとそうでもなくて、もっと無愛想でタフで荒くれ者という感じのフォルム。「Surly」という英単語の意味とよくマッチしている。

「これはシクロクロスバイクのジャンルです」と銘打っているけれど、どう考えてもシクロクロスレースで使う人は珍しいであろう「クロスチェック」というモデルは、街乗り用のカスタムバイクで定番となっている。

世界一周のサイクリングではサーリー製のロングホールトラッカーやディスクトラッカーといったツーリング自転車が活躍している。

また、スポーツバイクを街乗りとして使う場合、タフなフレームと太いタイヤというサーリーのスタイルは、実用性や安定性が高く、カスタムの素材として適している。

ガチ乗り用のロードバイクのサドルバッグには必要最低限のタイヤリペアキットしか入っていないことが多いが、オールロードの大型のサドルバッグあるいはフレームバッグに、修理工具だけでなくコーヒーメーカーや調理器具まで詰め込んで楽しんでいるサイクリストは珍しくない。

趣味の品において、どのような道具を選択しようと、それは本人の好みの話だな。最小限の装備と軽いロードバイクで疾走することを好む人がいれば、丈夫なオールロードで着崩した自由なスタイルを好む人もいる。

すでにオーダーして納品を待っているパナソニックのシクロクロスフレームは、カンチブレーキ仕様のクロモリ製のフレームだ。

このモデルは、カーボンフレームとディスクブレーキ全盛の時代で販売が終了したのだが、ユーザーからの希望もあって復刻版がリリースされた。

おそらく、このモデルをシクロクロスのレースで積極的に使いたいという人は少なくて、オールロードバイクを組み上げるためのベースとして使いたいという人が多いのだろう。

アンカーのクロモリフレームも同じ販売形態だが、パナソニックのフレームはカラーオーダーまでが含まれているので、自分の好きな色に塗装し、ロゴの大きさや色、さらには自分が望むネームを刻んでもらえる。追加の料金を払えば、より複雑なデザインで仕上げてもらうことも可能だ。

つまり、カスタム志向のサイクリストにとってパナモリは絶好の素材になる。メーカーとしては、そのフレームをレースで使用しようが街乗りに使用しようが、売れれば構わないわけで、生産を終了したフレームが再び売れ始めたのだから良い話だと思う。

しかしながら、オールロードというスタイルが最近に限った流行と呼べるのだろうかと、ふと思った。

私のように谷津道を快適に走るためにスポーツバイクを組み上げる人は少ないはずだ。

だが、日本国内のサイクリングのスタイルの変遷を遡って調べてみると、用途に応じてスポーツバイクをカスタムしていく過程で、ある程度のスタイルが形成されたという例は珍しくない。

そもそも日本人は海外から取り込んだものに独特のカスタマイズを施す傾向がある。

分かりやすいところで言えば、カレーやラーメンだな。インド人や中国人から見るとオリジナルからかけ離れてしまっているが、彼らが食べても旨く感じるという謎な料理だったりもする。

海外で発明された電池を日本風にアレンジして大売れしたこともあるし、戦後に純国産で戦闘機を開発しようとして国内のマスコミや海外の国々からプレッシャーを受けていることは記憶に新しい。

日本人が本気でステルス戦闘機を開発したら、おそらくどの国のレーダー網も察知することができないだろう。

そして、まさかとは思ったが、やはり自転車についても同じようなパターンがあったようだ。

今回に限った話ではないし、出典も記載せずに適当な備忘録を残している私が堂々と指摘しうる話でもないが、ネット上の日本語の記事は情報が錯綜している。

私の仕事で専門としている領域についてウィキペディアを読むと、記載されている内容が大間違いだったりする。今回はさらに厳しい。日本の自転車の歴史についてウィキで調べてみると、あまり詳しくない私から見ても不確実だということが分かる。

とりわけ、以前と比べて随分と駆逐された感じがあるが、今でも検索結果に並ぶ金太郎飴のようなアフィリエイトブログたちが邪魔だな。

デブリを撒き散らしている私が言うのもおかしいが、これらのデブリはネット検索において他者に迷惑をかけている。

「おすすめランキング10選!」といった感じのいかにもなアフィブログを、ブラウザの一括設定で非表示にする機能がほしい。

それはさておき、私なりに理解している範囲で書き留めると、海外から日本に自転車が入ってきたのは1860年頃と言われている。当時の元号は慶応、つまり江戸時代だったわけだな。

海外から日本にスポーツ自転車が入ってきたのは、その100年後の1960年頃。フランスの製品が日本に持ち込まれたらしい。

歌手の小坂一也さんが「青春サイクリング」という歌をリリースしたのが昭和32年、つまり1957年。その後に発行された週刊誌の1ページには彼らしき人物がランドナータイプの自転車と一緒に映っていた。

当時あるいはそれ以前のフランスではブルベが開催されていて、制限時間内に決められた距離を自転車で走るというイベントを楽しむ人たちが多かった。

ブルベで使用されている自転車が日本に輸入され、それをモデルとして日本で生産された自転車が「ランドナー」だと私は理解している。

しかし、不思議なことがある。

当時のフランスのブルベで使用されていたモデルは「ランドヌール」と呼ばれていたそうだが、日本で「ランドナー」と呼ばれているタイプの自転車と仕様が異なっているように見える。

ホイールが大きくてタイヤの幅が細身な「ランドヌール」の方がレーシーな感じで、「ランドナー」はツーリングを意識したようなずんぐりした感じだ。

つまり、フランスの「ランドヌール」を日本で忠実に再現したモデルが日本の「ランドナー」ではないという理解になる。

物事を明確に定義し、あまりに明確過ぎてアレな感じもあるフランス人っぽくもあるのだが、650サイズのホイールや前後のキャリアを取り付けて長距離を走るという日本の「ランドナー」に相当する車種のことは、「グランツーリズム」といったカテゴリーに分類されていたらしい。

では、本来の「ランドヌール」というタイプの自転車が日本で普及しなかったのかというとそうでもない。

現在でも日本で販売されている「スポルティーフ」というタイプの自転車が、フランスで使われていた「ランドヌール」と非常によく似ている。

しかし、日本のスポルティーフの歴史を調べてみると、これは日本のランドナーをアレンジしたものだという記事が認められる。そもそも海外では「スポルティーフ」という言葉が使用されていない。

この辺の経緯が複雑で分かりづらい。ネット記事ではなくて、刊行されている書籍で確認してみたいものだが、フランスから輸入されて日本のランドナーやスポルティーフのモデルになった自転車は、実際には複数あったのではないかと私は推察している。

フランスから持ち込まれて日本で普及するプロセスのどこかで名前が入れ替わったのではないだろうか。

現在のようにググって調べることができなかった時代だ。フランスから日本に自転車を持ってきた輸入業者が自転車に詳しいはずもなく、インボイスに記載された名前が「ランドヌール」だったなら、日本の人たちは「そうか、これをランドナーと呼ぼう」という話なるだろう。

あるいは、グランツーリズムをベースにランドナーを作ってみたところ、より高速で走るためにはキャリアを外して700Cのホイールを取り付けた方がいいぞと日本の人たちが気付いてスポルティーフを作ったら、実際にはフランスのランドヌールと同じ形になってしまったというパターンだったのかもしれない。

もしくは、その時点ですでにランドヌールが日本に輸入されていたけれど、ランドナーというジャンルの自転車が出回っている状況において、いまさらランドヌールという名前を付けたジャンルの自転車を販売することもできず、スポルティーフという名前を付けたのかもしれない。

まあとにかく細かいことはいいんだよという大雑把なところが日本の良さでもあるし、中国では茹でて食べることが一般的な餃子が日本に入ってきて、それを焼いて食べた方が旨いことに気付き、日本では焼き餃子がデフォルトになったというエピソードに似ていたりもする。

大らかさというか、好い加減さというか、アレンジが上手い日本人の特性が面白い。

では、当時のフランスにおいてロードレーサーに相当するタイプの自転車があったのかという話だが、それらは「クールス」と呼ばれていたそうで、ツーリング車とは明確に区分されていた。

クールスからロードレーサーに派生し、そのロードレーサーがロードバイクになり、日本ではガチ乗り用のロードバイクにキャリアや大型バッグを取り付けてツーリングに出かける人がいたりもする。この辺の輪廻も興味深い。

さて、オールロードの話に戻ると、サーリーやオールシティといった米国のメーカーがオールロード用のモデルを製造販売しているけれど、日本におけるオールロードの歴史はもっと古い。

谷津道に適したスポーツ自転車のカスタムを構想していた時、昔の日本には「パスハンター」というジャンルの自転車があったことに気付いた。

パスハンターというジャンルのスポーツ自転車は、日本に特有の地形や環境を背景として生まれたものだ。海外で流行した後で日本に持ち込まれたものではない。

何かにつけて日本人を見下すフラ...いや、某国の人たちから見ると何だそれはと言われそうだが、これがパスハンターだという明確な規格が決められていたわけではなくて、険しい峠を走破するためにカスタムされたスポーツバイクの総称がパスハンターだったという私なりの理解になる。

1960年代に海外、とりわけフランスからスポーツバイクが日本に持ち込まれ、日本でスポーツバイクが製造されるようになり、1970年代から1980年代の日本ではサイクリングブームが生じた。

1970年代の後半になると、自転車ツーリングに飽きてしまった、あるいはより刺激があって楽しいサイクリングを求める人たちが出てきた。そのようなサイクリストたちがパスハンティングというサイクリングを始めたらしい。

パスハンティングは、険しい峠や旧道、林道などを自転車で走り、道が塞がっている場所や小川に出くわしたら自転車を担いで渡り、時には担いだまま山を登るといったエクストリームなスポーツだったそうだ。

谷津道を探索していると、確かに険しいルートや苔生した古道を見かけることがあって、これらを走ったら面白いだろうなと感じていた。また、千葉県内では険しい峠がないのだが、日本国内であればたくさんある。日本の地形を上手く活かしたサイクリングとも言える。

パスハンティングに用いられたスポーツ自転車はパスハンターと呼ばれていた。鋼鉄製のフレームに太めの650タイヤを装着したランドナーをベースとして、悪路を走ることを想定してドロップハンドルからフラットハンドルに換装したり、低速での走行を重視してギアを組み替えたり、自転車を担いで歩くことを考えて泥除けやキャリアを取り去って軽量化を施すことが多かったそうだ。

山を登ったり倒木や小川を乗り越える必要があったので、自転車に荷物を取り付けずに自分で荷物を背負い、トレッキングシューズを履いてペダルを回すことが多かったという話も面白い。

パスハンターのスペックについては、特に決められた規格があったわけではなくて、日本のビルダーがフレームを溶接してパスハンターを製造販売したり、小径の方が走りやすいと思ったサイクリストはミニベロをベースにパスハンターを組むこともあった。

大切なのは目的であって、それに至る手段についてはこだわらないという日本人の思考はさすがだなと思う。

さらに興味深いことがあって、最近、米国のベロオレンジという自転車メーカーが「パスハンター」という名前のツーリング自転車を販売した。どう考えても日本のパスハンターを意識していると思われる。

「おお、やっとパスハンターが復刻したのか!」とネットでベロオレンジのパスハンターを見て私は驚愕した。

これはかつての日本で使われていたパスハンターと似て非なるものだ。日本のアニメがハリウッドで実写化されて、あり得ない方向に進んだ感じだった。

おそらく、ベロオレンジの人たちは日本のランドナーをオフロード仕様にしたものがパスハンターだと思い込んでいる。

確かに、ランドナーをベースとした流れではあるのだが、本物のパスハンターはドロップハンドルではなくてフラットハンドルが多く、泥除けは邪魔なので取り外されていたはずなんだ。

ベロオレンジのパスハンターは、日本のランドナーにブロックタイヤを履かせただけで、ドロップハンドルや泥除けが残ったままだ。

しかも、ディスクブレーキ仕様。

険しい峠で転倒してディスクローターを曲げたら、その時点で走行不能だな。誰も助けてくれない山の中で。

それ以上に驚いたのは、とある日本のサイクルメディアの記事。「これが新世代のパスハンターだ!」とアピールしていた。

パスハンターでないことはメディアの人たちも分かっていて、新世代と表現するしか仕方がなかったのかもしれないな。

彼らのようなサイクルメディアは輸入品を日本で販売している代理店からデモ品を貸し出されて宣伝している。

スポンサーとの関係や自社の利益のためには製品を持ち上げるしかないし、まあこれが日本の自転車業界の現状なのかもしれないな。

しかしながら、全路面に対応するスポーツ自転車のニーズについては、自転車メーカーやメディアが旗を振るのではなくて、一部のサイクリストたちが自ら選択する形で高まってきているような気がする。

自転車業界としてはグラベルロードバイクという新たなジャンルを用意して、そこにサイクリストを誘導したかったのだろうけれど、日本に限って言えばその思惑がフルスイングで空振りした感がある。

パスハンターが活躍した頃の日本ならば未舗装路が多かったかもしれないが、今の日本で未舗装路を探すことは容易ではない。マウンテンバイクのブームが持続しなかった理由のひとつだと思う。

砂利道に適したロードバイクだと言われても、そこまで砂利道や未舗装路が好きなロードバイク乗りは少ないはずだ。

ところが、このようなスタイルが米国でオールロードと呼ばれていることに気付いた日本のカスタムショップの人たちが、街乗りを含めたオールロードという古くて新しいサイクリングのスタイルを提案したという形になっている。

そして、かなりエクストリームではあるが、昔の日本にはパスハンターというオールロードに近い形態のサイクリングが存在していたことに気付いた。イマココという感じだな。

自転車業界が規格を用意し、その枠の中でサイクリングを楽しむのではなくて、自分のサイクリングのスタイルに合わせて自転車をカスタムして乗るという方は、とても自由で楽しい。

別にレースに出たいわけでもないし、誰かと競いたいわけでもない。そのような人たちにとっては、ガチ乗り用のスポーツ自転車が適していなかっただけなんだな。

さて、フレームが納品されるまでの間、その他のパーツを少しずつ集めていたのだが、それらについても準備が整ってきた。

パナモリのシクロクロス用フレームは、35Cまでの太さのタイヤに対応している。とはいえ、どのようなタイヤを購入すればいいのか、今ひとつ分からない。

とりあえず、コンチネンタルの四季タイヤには32Cまでのラインナップがあるので、このモデルを使ってみることにした。

実際に届いた32Cの四季タイヤは外箱がすでに25Cの1.5倍くらいの大きさで、かなりの迫力がある。パンクした際に1本のCO2ボンベで足りるのか少し不安だが、高圧にする必要はないので何とかなるだろう。

また、手組ホイールに使っているAL22Wというリムは内幅19mmのワイドリムなので、32Cのタイヤを取り付けることは可能だと思う。他のメーカーの同じ内幅のワイドリムでは、40Cを取り付けている人もいる。

ブレーキについては、よく効きそうなカンチブレーキが見当たらなかったので、シマノのVブレーキを取り付けることにした。

ドロップハンドルの場合にはSTIレバーでVブレーキを引くために工夫が必要だが、マルチポジションハンドルに取り付けたフラットバー用のブレーキレバーはキャリパーブレーキにもVブレーキにも対応している。

また、現在のロードバイクに取り付けているGRXのシングルクランクやハンドル回り、R8000系のリアディレイラーやスプロケットはそのまま流用することができる。

シクロクロス用のフレームは、悪路での走行を想定してボトムブラケットが上部に位置し、リアセンターが長く設計されているが、その他のジオメトリーは現有しているロードバイクと同程度なので、ポジション出しはそれほど難しくないと信じたい。

オールロードを組み上げる準備が整っている一方で、その自転車で谷津道を走る日がすぐにやってくるとは思えない状況になってきた。

首都圏を中心としてコロナの感染爆発が起こりそうな様相を呈している。高度医療が可能な施設の現場は崩壊寸前だ。

かなり厳しい状態なのに、人々が開き直ってきたことが危うい。

日本では社会に対する反発から大規模なデモや暴動に発展することはないと思うのだが、人々が社会のことを考えずにサイレントな形で動き回ったり、マスクを外して大人数で酒を飲むことはある。

それらの暴走を抑止する上で恥の文化が役に立っていたのだが、ルールやマナーを踏み外すことを恥だと思わない人たちが増えてきたように思える。

このように箍が外れてしまうと、カタストロフィが自分を飲み込むような事態がやってくるまで現実を理解しないのかもしれないな。我欲を抑えないと感染の拡大は沈静化しない。

このような状況でもロードバイクに乗ってロングライドだレースだとはしゃいでいるオッサンや若者たちの姿には溜息が出る。

サイクリストに限らず、膨大な数の人たちの気持ちが緩んでしまい、結果としてこのような感染爆発を招いていると思うと、何だかやり切れない思いだ。

現状が落ち着いて感染の拡大がピークアウトするまではサイクリングを自粛して、オールロードのためのカスタムの準備をしたり、フレームが届いた後には実際にバラ完で少しずつ楽しみながら組んでいこうと思う。