GとかBとかCのようなラテ風味のサイクルライフ
浦安市の隣の市川市の街中を軽く走りながら、途中で停車してスマホで天気予報を確認する。日本気象協会の予報では終日晴れているそうだが、柏市や我孫子市の方角の空は真っ黒な雲が天高くまで分厚く覆い被さっている。
以前から気になっていたことだが、日本気象協会の天気予報よりも、自分の目で空を眺めたり、自分の肌で気圧の違いを感じた方が当たると思う。
観測や予報のための技術は日々進化しているはずなのに、日本気象協会やよくある天気予報はどうしてここまで外すのか、私は専門家ではないので分からない。
それだけ日本を含めた地球の天候の変動が不安定になっているのか、予報を外しても大してデメリットがないという旧態依然とした日本的な評価基準によるものなのかも分からない。
職業人が仕事で結果を出すことができなければ、当然だが何らかの形で批判や指摘を受ける。
日本気象協会の人たちが天気予報を外しても、彼らはサンシャイン60の55階から下界を眺めているだけなのか。
この協会は、旧運輸省が所管する法人として設立され、テレビやラジオでの気象予報や解説などを独占的に扱ってきた。つまり、役所の出先機関のようなものだと私は理解している。
気象の把握や予報がそれだけ重要なことだと国家が認識していたからこそ、このような組織が作られたはずなのだが、その割には天気予報を外す。
予報を10回外したらボーナスを減らすくらいの厳しさがあれば、サイコロを振っているかのような不正確さもなくなると思う。
「今日の天気はどうなるだろうか」と心配になったら、日本気象協会の「tenki.jp」にアクセスして、その通りにはならないと逆を張った方が当たったりもする。
加えて、最近では「SCW」というサイトの方が正確に天気を予報していると思う。「SC」とはスーパーコンピューターの略だろうか。
日本気象協会が受け取っている予算の100分の1であってもSCWに投資すれば、既存の天気予報サイトは必要なくなるかもしれないな。
さて、備忘録ついでに自転車のことを記そう。
現在の愛車は、ブリヂストン製のクロモリロードバイクのみ。
ホイールは、9000系のDURAハブおよび7000系の105ハブでそれぞれ組んでもらった手組ホイールの2セット。あとは雨の日用の完組ホイールが1セット。
手組ホイールのリムはTNIのAL22Wで、ホール数は32、リアだけオフセット。リムの外幅が24mmもある正真正銘のワイドリム。
どうしてTNIのリムなのかというと、マビックやDTスイスのリムがコロナの影響で欠品し続けているから。
それらに比べるとTNIのリムは半額で手に入る。あまり期待せずに組んでもらったのだが、想像以上に剛性があってよく回る。
スポークはプレーンの32本。9000系と7000系のそれぞれのホイールセットでスポークの銘柄が違うのだが、サピムの方がDTよりも柔らかい気がする。
タイヤは、全て28Cのコンチネンタルの四季。正式名称は「GRAND PRIX 4-SEASON」なのだが、面倒なので四季と略している。
このタイヤを使い始めてからパンクの回数は年間で1回もない。耐久性とグリップ力で定評があるタイヤだが、その評判はダテではない。
かなり前に葛西で大きなネジを踏んでパンクしたが、その時でさえバーストせずにチューブ交換だけで浦安にたどり着いた。
最近、105ハブの手組ホイールについては、四季ではなくてシュワルベのマラソンに変更しようかなと思っていたりもする。
砂利道が多いルートを走っていると、ブロックパターンのタイヤが欲しくなった。スリックタイヤはグラベルで本当に滑る。
急ぎではないので夏のボーナスが出た頃に考えよう。
クランクやディレイラーはR8000系のアルテ。ディレイラーについては、次回のオーバーホールくらいで105にダウングレードしようかと思う。
フロントシフターは、ようやくラピッドファイアのデッドストックが手に入ったので取り付けたが、リアシフターは相変わらずダイアコンペのWレバー。
シマノの11速に対応している純正のサムシフターがラピッドファイアのSL-RS700しかなくて、しかもこの製品が長期に欠品という事態になっている。
Wレバーの台座がフレームに溶接されているクロモリロードバイクで助かった。
11速のWレバーはシフティングがとても難しいのだが、数回のライドでようやく慣れてきた。
自動車に例えると、STIレバーがオートマで、Wレバーがマニュアルと表現している人がいるが、確かにその通りだと笑みがこぼれる。
マニュアル車を運転しているような面白さがある。
ラピッドファイアの入荷は秋になるそうで、探した限りではどこにも在庫がない。
メルカリで高額出品している輩までいて、ヤフオクや海外通販では中華の偽物が出回っている。まあよくある話だろう。中国人の価値観を実感する。
ということで、秋まではリア変速をWレバーで何とかするしかなさそうだ。
そして、最も大きな変更は、ロードバイクなのにドロップハンドルを取り外して、とあるメーカーが販売しているマルチポジションハンドルに換装したこと。
別に愛車をアピールしたいわけでもないし、喜び勇んで自己愛や承認欲求を満たすつもりもないので、写真は掲載しない。
だが、このカスタムは、私のサイクルライフの中で最も大きなことのひとつかもしれない。
数台を所有している中で最も愛着がないロードバイクのドロップハンドルをフラットハンドルに換えたところ、その1台がお気に入りの愛車になってしまったサイクリストのブログを見かけたりするが、気持ちがとてもよく分かる。
ロードバイクのフラットバー化は、ロードバイク乗りにとって余程のことがない限り越えない一線だと思う。
たとえ、ドロップバーの下ハンドルを握って走ることがほとんどなかったとしても、あのシルエットが良いとか、STIレバーを使うためには仕方がないと、前傾姿勢で首や肩を疲れさせながら走っている人は多いことだろう。
また、ガチのロードバイク乗りたちから、「クロスかよ!?」と嘲笑されたら嫌だなとか、ほとんどレースに出場したことがないのにレーサーを気取りたいとか、まあそういったこだわりがあるかもしれない。自分は速いんだ、自分は格好いいのだと。
それらのこだわりの中に自己愛がどれくらいあるのかというと、おそらくかなりの割合を占めている気がしてならない。
しかしながら、最近では、ロードバイクという趣味の楽しみ方に変化が生まれてきたことを実感する。
ロードバイクに乗るからといってガチである必要はなくて、かといってガチを小馬鹿にするわけでもなくて、「自分は自分、他者は他者、気にせずに自分が楽しいスタイルで趣味を味わいたい」という感じの流れ。
カフェに入れば必ずエスプレッソの濃いコーヒーを飲まなくてはならないのか? そんなことはない。
コーヒーにミルクを入れて気楽に飲んでもいいじゃないかというスタイルを、サイクルライフに当てはめたような感じ。まさにラテ系だな。
サイクリストが自分でスポーツバイクをカスタムして、着崩した感じで乗っている場合もあるし、そのスタイルを提唱しているショップもある。
有名どころとしては、広島のGとか、東京のBとか、愛知のCとか。
カスタムが好きな人たちならば、イニシャルだけですぐに分かると思う。
これらのショップでは、ロードバイクに太いタイヤを履かせたり、ドロップハンドルをフラットバーに変更するどころか、プロムナードバーを取り付けることだってよくある。
プロムナードバーとは、要はママチャリでデフォルトになっているハンドルだと理解すれば分かりやすい。
今まで通りのガチ路線を踏襲するマッチョなサイクルメディアの中には、「ロードバイクにプロムナードバーを取り付けるなんて、理解できない!」と怒っているコメンテーターがいたりもする。
サイクルショップのスタッフは、油まみれのエプロンを付けて、レースで勝つことを意識しないといけないのかという、タイヤのゴムと汗の臭いが漂ってきそうな体育会系のメディアだな。
経験もせずに理解できないと批判するよりも、実際に経験してから理解しうるか否かを判断した方がいい。
実は、私もロードバイクにいわゆるママチャリハンドルを取り付けるなんて、全く理解することができずにいた。
ところが、ロードバイクにマルチポジションバーを取り付けると、プロムナードバーと同じポジションを取ることができたりもする。
実際にそのポジションで走った時、ようやくそのスタイルの良さが分かった。
腰から下の動きはロードバイク、しかし、腰から上の動きと目の前に広がる視界はママチャリ。
高速のママチャリに乗っているかのような軽快さがあって、しかしロードバイクよりも走行が安定している。
この感覚だけは、実際に走ってみないと分からないことだろう。「なんだこの不思議な自転車は?」と驚いた。
しかも、「よし、これから乗るぞ!」という気持ちでロードバイクに乗る必要がない。
まるでママチャリに乗るように普段着で、もしくはサイクルウェアとの重ね着で走り始め、気が向けばもっと遠くへ、気分が乗らなければそのまま帰る感じ。
先ほどのショップの話に戻ると、新しいロードバイクライフの提案もあるのだろうけれど、自転車業界の経営戦略のひとつという意味もあるのかなと思う。
サイクルショップの経営においては、店舗にパーツやウェアを取り揃えて、それらを売ってマージンを得たり、自転車の整備における工賃を受け取ることで収入にしていることだろう。
その際、収入のメインは物販で、工賃は安めに設定したりサービスになることも多いはずだ。
だが、海外通販やAmazonなどのECサイトでサイクル用品が安売りされるようになり、いわゆるプロショップの経営は厳しくなった。
シマノとしては、日本のユーザーが海外の自転車通販サイトでパーツを購入できないような仕組みを用意したり、国内の通販でユーザーがパーツを手に入れても、自分でカスタムすることができないようにユーザー向けの取扱説明書の記載を削除し始めた。
ユーザーから見れば小癪な手段とも思えるが、小売店を潰さないため、メカニックによる自転車の整備を保つための対策なのかもしれないな。
また、この方向性は、ロードバイクが「競技のための機材」からスタートしたという経緯を反映しているように感じる。
ガチのロードバイク乗りたちの思考は、業界の方向性とよく合っている。
シフトケーブルさえ自分で整備することができないロードバイク乗りがいかに多いことか。
だが、サイクルショップがこれまでのやり方で経営を続けても成長の伸びしろは限られる。
その店でサイクル用品を買えば工賃が安くなるとか、車体を買えばアフターケアがあるとか、ショップのガチ乗りサークルに入会しないと一見さん扱いになるとか。
これらはよくあるプロショップのやり方だな。
他方、GとかBとかCといったショップの経営戦略は全く違う。
最初に、ユーザーにとってのオンリーワンの愛車を見つける、あるいは作ることから話が始まる。
カーボン製のフレームが上位という価値観がなく、丈夫で長持ちしてカスタムのベースになる金属フレームからスタートして、ユーザーが本当に気に入ったパーツを値下げなしで取り付けていく。
そもそもカスタムのベースがロードバイクに限ったわけではなく、昔風のマウンテンバイクだったり、ピストバイクだったり、ツーリングバイクだったり。
乗る人が気に入れば、何でもいいじゃないかという緩さを感じる。
しかも、フレームどころか、どこかで手に入れたパーツをショップに持ち込んでも構わなかったりする。
その店でロードバイクを買わないと面倒を見ないとか、そのようなこともない。
サイクル用品の小売りで利益を得るのではなくて、工賃で利益を得たり、新たなスタイルを提案して客との繋がりを固める形だからこそ、従来のプロショップのような気難しさがないのかもしれないな。
速く走るための機材としてロードバイクを見た場合、ホビーライダーにとってはどこまで行ってもキリがない。
海外のプロレースで登場するようなフラッグシップのカーボンフレームを手に入れたところで、それがリムブレーキだったりすると、「どうしてディスクじゃないの?」とか。
ボーナスと貯金を使い果たしてDURAコンポを手に入れても、「あれ、紐付きなの?」とか。
で、結局は河川敷で疾走しながら見知らぬロードバイク乗りが気になったり、サイクリストが集まる場所でピチパンのオッサンたちのマウント合戦が繰り広げられるとか。
移り行く季節や景色を眺める余裕もなく、オッサンたちが前傾姿勢で必死にペダルを回し、パワーメーターの数値で一喜一憂するとか。
まあそれも趣味の世界だから自由だな。
他方、GとかBとかCといったショップ、あるいはそのようなスタイルを好むサイクリストの場合には、ロードバイクが競技のための機材ではなくて、生活の一部とか相棒といった存在なのだろう。
レーサー出身の人が経営しているプロショップが多い現状では、ラテ系のショップを展開することに抵抗があるかもしれない。
速く走ることに主眼を置かず、普段着でも洒落ていて格好が良いというサイクルスタイルは、体育会系のマッチョな店長にはプロモーションが難しいことだろう。
ガチなロードバイク乗りはロードバイクの上では着飾るが、サイクルウェアを脱いだら洋服に関心がなく、ただのオッサンというパターンが多い。
加えて、コーヒーはブラックで飲むべしのようなこだわりが強かったりもする。
ショップの経営を考えた場合、そこにニッチが生まれる。そのようなショップと違った方向にすれば客が集まって利益が増えるということだ。
ロードバイクのガチ乗りに飽きてしまった、もしくは最初からガチ乗りしたくないというユーザーにとっては、いかにもなプロショップではなくて、子供の頃に通ったプラモ屋やホビーショップのような存在が望ましいということだな。
スポーツバイクが日常の一部になれば、自転車を床の間に飾る必要もない。
GとかBとかCといったショップのスタイルは日本においては革新的なのかもしれないが、とりわけヨーロッパではごく自然な自転車店の経営方法だったりもする。
ヨーロッパといっても国によって違うが、日本のママチャリのように使い捨ての自転車文化がなかったりもする。
とりわけ、愛車をカスタムして大切に乗ることを好む人が多く、街中のショップもカスタム中心の店構えになっているような印象がある。
ロードバイクについても、自分が求める自転車の姿が人それぞれで違うという感じだな。
リアキャリアと泥除けを付けたロードバイクを見かけることがよくあって、移動のためにロードバイクを選択した感が満載だったりもする。バタフライバーも珍しくない。
一方、日本でロードバイクが普及し始めたのはブームの後で、歴史としては浅いのだろう。
昔からロードレーサーに乗っていた人たちはいたのだが、一部の人たちに限られていたということか。
だが、10年くらい前にピークだったと思われる日本のロードバイクブームにおいて、ロードバイク乗りとしてのあるべき姿が固着化してしまったような気がする。
海外のプロレースを見て、そこで使用されている機材に近い自転車で、ピチパンを履いてペダルを回す姿がロードバイク乗りのあるべき姿だと考えている人たちが日本には多いように思える。
ナップサックを背負ったり、ニッカーを履いてロードバイクに乗るのは邪道だとか、ドロップバー以外のハンドルは理解できないとか。
そのような考え方も立派だな。
プロレーサーのような格好をして、他者と競って熱くなりたいという気持ちは、アスリートのモチベーションのひとつだと思う。
ガチ乗りをするロードバイク乗りたちが交通法規を守らずに疾走したり、自動車や歩行者に迷惑をかけているから問題になっているだけの話だ。
一方、趣味で使う道具なのだから、必ずしもレーサーの姿を追いかける必要はないという考え方もある。
ママチャリのように生活に寄り添ってくれて、より軽快で心地よく速く走ることができる自転車がほしいと思って、そのベースがロードバイクだったといった考えも素敵だな。
色々と考えながら、市川市の道の駅の近くにやってきた。
浦安市内も人と車が多くて鬱陶しいのだが、市川市もなかなかだ。
ここまで人口密度が高いのに、どうしてここまで道路の幅が狭いのだろう。
新浦安では短気でエゴが強い市民が多い印象があるのだが、市川では荒い市民が多い印象がある。新浦安というよりも、浦安の元町に雰囲気が似ている。
東京の足立区とか江戸川区、江東区の人たちもよく似ている気がする。地域性なのだろうか。
何を持って荒いのかというと、短気なのかどうかは分からないが、私なりには自分の欲求に素直という表現になる。
周りを見ずに道路を横切ったり、ママチャリで逆走したり。
ミニバンや軽自動車に乗っている人に多いのだが、交差点で横断している歩行者や自転車に苛立って、きちんと停車せずに車の先を突っ込んできたり。気に入らないと睨み付けたり。
また、男性については見た目も分かりやすい。
若い頃はヤンチャだったのかなというヘアスタイルとか。ワイルドな髭とか服装とか。
だが、浦安の元町にも言えることだけれど、彼らは新浦安の人たちよりも内面が分かりやすい上に、思ったよりも性格が悪くない。
話し込むと人情味があって内面が温かい人が多いと私は理解している。
同じワイルド系でも、浦安と市川と船橋では趣が微妙に異なっていて、10年以上もこのエリアに住んでようやく違いが分かってきた。
さて、ロードバイクのステムの長さや高さはこれで良さそうだ。
ステムの上下を逆にするなんて、ドロップバーを使っていた時には恥ずかしくて無理だったな。
現状では、ステムの上下なんて気を遣っている場合ではないほどにハンドルが目立ってしまっている。
問題は、マルチポジションバーの角度だけだな。
マルチポジションバーは、ハンドルの様々な部位を握って走ることができるのだが、様々な部位を握ることができるだけに、ハンドルの角度の調整が非常に難しい。
マルチポジションの中でもフラットバーのポジションであれば、ハンドルの角度はあまり気にならない。気楽に回転させても、手首や手のひらの位置があまり変わらない。
だが、前傾姿勢を取りたい場合のハンドルの部位を握ると、ドロップハンドルの調整よりも実に難しい。
自宅で計器を使って測定して驚いたのだが、ハンドルバーの中心から見て、たった1度の違いがあるだけで、手から伝わる感触が違うハンドルの部位がある。
私自身が感覚過敏を患っているということもあるのだろうか。
しかも、どのハンドルの角度が心地よいのかという判断は停まった状態では分かりにくい。
実際に走りながら、「もう少し送るか...いや、これでは送り過ぎか...ならばシャクろう...いや、これではシャクり過ぎだな...」と再び停車して、アーレンキーを片手にハンドル角を微調整する。
途中から、段々と腹が立ってきた。
自転車についての怒りではなくて、こだわりの強い私自身への怒りだな。
そして、案の定、黒い雲が広がって、雨が降り出した。
ここまで頑張ってハンドルを調整したのにシックリくる角度が見当たらない。
もう少しでその位置が分かるはずなのにと悔しい気持ちになったので、陸橋の下のスペースで雨宿りをしながら、ひたすらハンドルの角度を調整した。
おそらく、マルチポジションバーは、全てのポジションがシックリくるわけではなくて、乗り続けているうちに「慣れ」が出てくるようなパーツなのかもしれないな。
併せて、自転車で世界一周するような人たちがマルチポジションのハンドルを使用することがよくある理由も分かる。
長い道のりを走っていると、ハンドルの位置に飽きてきたり、肘や手首が痛くなったりもする。
ポジションを換えると暇にならないし、身体も楽になる。
よくよく考えると、自転車のハンドルに限らず、頭の中の思考や感覚についてもマルチポジションの方がよいのかもしれないな。
それをどうやって実現すればよいのかについては、今のところ分からない。
ハンドルの調整が一段落したら、雨が上がっていた。
途中のコンビニで冷やしうどんと鳥の唐揚げを買ってハンドルに引っかけて帰宅。
これはもうロードバイクというよりも、高速移動が可能なママチャリだな。うん、間違いない。
自室でロードバイクを眺めながら遅めの昼食をとる。
サイクリングが終わった後の食事は何を食べても美味しい。
とりわけ長い距離を走ったわけでもないのだが、重いロードバイクを乗り回しているからだろうか、脚部だけでなくて、全身の筋肉の位置が分かるくらいに心地よい疲労感を覚える。
ドロップハンドルの場合には、平地を走っていて肩や腕の筋肉が張ることがなかったのだが、マルチポジションハンドルの場合には何でもありだな。
色々な部位を握って走っているからなのか、大胸筋まで軽く張っている。これは力んでいるからなのだろうか。
関節がズキズキと痛む場合にはポジションや乗り方がどこかおかしいはずだが、全身の筋肉が張っているのであれば大丈夫だろう。
よし、カスタム後のロードバイクのポジションはこれで何とかなったな。
食事を食べ終わると、強い眠気がやってきた。そう、これがサイクリングの良さでもある。
力を振り絞ってスウェットの上下を重ね着して、布団も敷かずに昼寝に入る。
自室のカーテンは開いたままだ。窓の外から入ってくる光でさえ心地よい。
さらに眠気に耐えながら、スマホで「自然の音」という感じのテーマの動画を流す。
何時間もかけて延々と波の音や焚き火の音が続くというよくある動画。これを昼寝の時に流すと、リラックスしながら休憩することができるというわけだ。
今回は山の中を流れる小川の音を選択し、「よし、これで...」としばらくの眠りに入る。
夕食前に子供たちの声で目が覚めた。
HPがかなり回復して生きる気力が戻ってきた。自我が離れた感覚も、酷い目眩も感じない。
妻は買い物のために近くのショッピングセンターに出かけたらしい。
何とか起き上がって、家の中全体を掃除機でクリーニングする。これをやるかやらないかで妻の機嫌が違う。
ドロップハンドルで使用していたSTIレバーなどはメルカリで売り払ってしまった。
大げさではあるけれど、私のロードバイク生活はこれから次のステージに入るのだな。
とりあえず日焼けをして、外見だけでも健康的になってみるか。