かなりこじらせたラファマニア
ホイールはWH-RS300という105グレードの完組クリンチャーホイール。
タイヤはコンチネンタルの4-seasonsの28C、チューブもコンチのレースワイドという極太チューブ。
今風のホイールなのでフロントのスポークの数が少なくて心許ないが、走り始めれば気にしなくて済む。
この1年半くらいの間、職人が組んでくれた手組ホイールを使ってきたので、完組ホイールとの違いはすぐに分かった。
完組ホイールにも様々な種類があるわけで、数万円の廉価なホイールをもってして完組ホイールと一般化することは難しい。
けれど、やはり完組ホイールは剛性がとても高くて、踏んだ力がダイレクトに推進力になる感覚がある。この価格でこれだけの性能の製品を世に出すとは、さすがシマノだな。
私がどうして数万円のホイールに28Cタイヤを取り付けて走って試しているのかというと、とあるベテランのブルべライダー(ランドナーとお呼びするのだろうか)が、このスタイルを好んでおられることをブログで拝見したから。
一回のブルべで600kmとか、そういった尋常ではない距離を走破するライダーのホイールやタイヤはどのような選択なのかということに私は興味があって、なるほど確かに興味深かった。
高価なホイールでは軽量化に重点が置かれているため、短期間の剛性は高くても、長距離を走っているとトラブルが生じることがよくあるらしい。
軽量化のために部品に肉抜きが施されているからだろうという話だった。
他方、軽量化をあまり気にしていない設計によって作られたホイールは当然だが重くなってしまうけれど、鉄下駄にならない程度の価格のホイールでは耐久性が高いそうだ。
鉄下駄と軽量ホイールの境目を判断することは難しいが、3万円程度の価格帯にそのホイール群があるらしい。
そのようなホイールを新品で購入して2年くらい使い続けた後、再び新品と交換する走り方が最もトラブルが少ないという話だった。
なるほど、高級ホイールを使い続けてもスポークが非常に丈夫という保証はなく、どうしても金属疲労は生じうる。
ロングライドで走っている途中でスポークが1本でも折れれば、その場で走行不能になってタクシーで帰ってくることになりかねない。
だが、どうしても腑に落ちなかったのは、そのランドナーが28Cのタイヤとワイドリムのホイールを気に入って使っておられることだった。
28Cのタイヤを使ってしまうと、23Cを使う気持ちが失せてしまうらしい。エンデューロレースであれば25Cを使うかもしれないが、ブルべでは基本的に28Cが一択になるそうだ。
加えて、ワイドリムと28Cのタイヤの組み合わせに何か理由があるのだろうか。
以前、ナローリムの手組ホイールに28Cのタイヤを取り付けて走ってみたのだが、そこまで素晴らしいとは感じられなかった。
安定性は確かに高いのだが、走りがモッサリしていて楽しくない。
では、彼のスタイルと同じく、完組のワイドリムホイールに28Cを取り付けて走るとどのような感じになるのだろうか。実際に試してみたくなったわけだ。
浦安市を抜けて市川市の妙典の辺りまで走ると、確かに完組ホイールと28Cタイヤの組み合わせの特徴が分かってきた。
なるほど、そういうことか。
最近の私がどうして28Cのタイヤにこだわっているのかというと、コロナによって医療が逼迫していることに起因する。
できるだけ落車しないように気を付けようとすると速度を出して走ることは難しくなるわけで、それよりも安定性のあるタイヤにした方がいいかなと思った。
また、以前のように100kmくらい走らないと走った気がしないというスタイルはコロナ禍に見合っていない気がしている。
往復で50kmくらいのライドで満足感を得るためには、むしろ重いタイヤを使った方がトレーニングになるのではないかと考えた。
さて、RS300に28Cのタイヤを取り付けて走るとどのようになるのか。
実際に走ってみると、かなり昔にこの感覚を味わったことがあるような気がした。
私はWH-RS81-CL50というディープホイールを所有していたことがあって、CL35のセミディープの方が走りやすいということでサイクリーに売ってしまったが、あの時の感覚に似ている。
RS300はローハイト、RS81はディープなので、その感覚が似ているということはおかしくもある。
漕ぎ出しが重いけれど、ある程度の速度に達すると失速せずにホイールが回り続ける感じがよく似ている。
ディープリムホイールは見た目が格好良く、一度回り始めた際の安定感が空力特性によるものだと勘違いしているホビーライダーは多い。
もちろん、50km/hといった高速走行であればリムの高さの影響があるかもしれないが、せいぜい30km/h程度の走行で空力によるエアロ効果が生じるとは思えない。
むしろ、リムの外周が重くなることによるジャイロ効果のようなものがあるのではないかと私は考えている。
つまり、別にディープリムにしなくても、廉価ホイールのように重いリムが使われている場合には同じような感覚になるのではないかという結論に至る。
大枚を叩いて自己満足していた私自身ではあるが、当時は夢を買っていたと思えば後悔はない。
しかしながら、今回のRS300は28Cのタイヤを取り付けている。
これによって何が生じたのかというと、走りがマイルドになり、タイヤがしっかりと地面を掴んでいる感触がある。
また、路面が荒れていても乗り越えていく力強さがある。
一方、このような特徴は接地抵抗を増やしたりもするわけで、走行速度は明らかに落ちた。
だが、25km/h程度のペースで走り続ける時には実に楽だ。膝や腰への衝撃も少ない。
スピンバイクを外で漕ぎ続けている感じだな。
以前、マヴィックのオープンプロというリムを使った手組ホイールに28Cを取り付けた時は、タイヤがねじれる感じがあったり、今ひとつ剛性がなくて力が逃げている感じがあった。
おそらく、RS300はリムの幅を広げたワイドリムなので、28Cという太めのタイヤでもタイヤの断面が歪にならずに走行することができるのだろう。
クロモリ製のフロントフォークなので、完組ホイールで走ると地面からの衝撃がハンドルに響いてくるのだが、さすがに28Cくらいになってくると両手への負担が減る。
これがフルカーボンのロードバイクであれば、28Cのタイヤを使うことで長距離のライドが楽になることだろう。
だからこそ、先のランドナーは廉価なホイールに28Cのタイヤを組み合わせて走っておられるのではないかと思った。
この完組ホイールは想像以上に使いやすいのだが、やはり私は手組ホイールの心地良さが忘れられない。
チューブについても改善の余地がある。25Cと28Cで併用可能なチューブを探そう。今使っているチューブは重すぎる。
ということで、1週間近く続いている手組ホイールの職人との打ち合わせについて最終的な結論が得られそうだ。
前後ともにワイドリムを採用し、少し軽めのものを選択。スポークはできるだけ剛性が高いものを使って、テンションを高めに組んでもらおう。
2年間を目安にリムとスポークの張替えをお願いしても大きな出費にはならないと思う。
それにしても28Cのタイヤは面白い。その感触を確かめながら走っているその時のことだった。
信号待ちで停車していたら、後方から何だか嫌なラチェット音が聞こえてきた。
どう考えてもシマノのハブとは思えない大袈裟な音だ。
さらに、耳障りなディスクブレーキの音鳴りが聞こえてきた。
バックミラーで後方を確認すると、魚っぽい顔というか、まあそのような感じのライダーが背後で停車している。
魚っぽい顔を具体的に説明することは難しいのだが、ほら、こう、唇の辺りが前に突き出している感じ。
サザエさんでこのようなキャラクターがいた気がする。マスオの同僚だったろうか。あの世界では魚っぽい人ばかりだったりもするが。
信号が青になり、案の定、背後のロードバイク乗りは私に何のサインもなく追い抜いて行った。
ロードバイクはフルカーボンのよくあるフラッグシップモデル。
100万円くらいの価格だろうか。我が家もこの前、子供の塾の費用で同じくらいの金額を振り込んだ。
私立中学校に子供たちを通わせると、この金額が子供の数の分だけ毎年続くのかと思うと気が重い。
片道1車線で自動車が並んでいるのに、彼はドライバーへの合図もせずに疾走し...と思ったら、想像以上に遅い。
さっさと彼が視界から消えてくれることを望んでいるのだが、すぐに赤信号につかまって私が背後に停車する形になった。
ロードバイク乗りにも様々なタイプがあって、その人の後ろを走ると心地良い人もいるし、不快で仕方がない人もいる。
前者は10年くらい乗り続けたベテランが多いのだが、後者は自己愛が高めなナルシシストが多い。
ナルシシストのロードバイク乗りによくあるパターンとしては、大して稼ぎが多いわけでもないのにフラッグシップモデルのロードバイクに乗って見栄を張る傾向がある。
まあ、他者がどのような自転車に乗ろうがその人の自由なわけだが、問題は走り方にある。
自らの脚力を誇示したいのか何なのか分からないが、大して速くもないのに痩せ我慢して必死にペダルを漕いだりもするわけで、余裕がないのでコース取りどころか周りが見えていなかったりもする。
とにかく先頭で突っ走っている俺ってカッコいい的な。
このように狭い範囲でマウントを取っても仕方がないだろう。余程に他にやることがない人生なのか。
そのような人は自己肯定の塊のようになっていて、何が生じても自分の責任ではないと開き直り、自分は特別な存在だと信じ込んでいたりもする。
逆境でも前向きになることは立派だが、自分よりも優れた人を見かけると執拗に攻撃を繰り返す。
その陰湿さによって人が寄り付かず、社会や集団から無視あるいは異端視されることも多い。
なので、そのような人をへこませることはとても難しい。
なぜなら、あまりに自己肯定が強すぎるので、自己否定という概念そのものがなかったりもするからだ。
自分がおかしいのではなくて、他者がおかしいと主張している人たちの中によくいるタイプだな。
実際に特別な力があってエリート層にまで上り詰める自己愛な人も結構いて、私が住んでいる街でもそのような父親を見かける。
だが、往々にして自らが有する虚像と実像とのギャップがあり過ぎて、ネット上だけで虚勢を張る人も珍しくない。
そんなことくらい、詳しく調べればすぐに分かるし、あまりのギャップに冷笑することもある。
そのような人たちは、自分が得意とするテーマ以外には触れようとしない。自らが作り上げた虚像が壊れてしまうからだろう。
格好良く飾っていても実物を確認すると普通のオッサンだったりもする。
君はどこまで盛ったら気が済むのかと。
それにしても、私の前を走っている人物の走り方は粗暴で品がない。
自動車の列に平気で割り込みながら、急にコースを変えて左側に寄るような奇妙な走り方。しかも、ハンドサインを出さないなんて尋常ではない。
彼に巻き込まれて事故に遭うことが嫌なので、かなり距離を離して走っていたのだが、一向に視界から消えてくれない。
再び赤信号で彼が停車し、数メートル後ろに私が停車するという形になった。
そして、真後ろから彼の姿を観察して、背筋が寒くなった。
ヘルメットの銘柄までは分からないのだが、サイクルジャージ、サイクルパンツ、レッグカバー、ソックス、さらにはシューズに至るまで、全身に「Rapha」というロゴが入っていた。
体型はスリムなのだが筋肉の付きが悪く、全身タイツ状態で「ヌルッ」としていて気味が悪い。宇宙船から降りてきたかのような。
噂に聞くラファ星人の降臨だな。
ラファユーザーの粗暴で愚かなライドシーンの動画が炎上したこともある。
しかも、推定40歳前後の男性が、黒をベースにしてピンク色っぽいロゴやサシが入ったウェアで統一している。
欧米人なら似合うかもしれないが、どのような色彩センスなのだろう。
派手なカラーリングで自分が目立たないと気が済まないのだろうか。
これは危険だ。毒虫と同じ警戒色だと私は感じ取った。
さらに、ラファとは関係がないが、彼は襟足からうなじにかけて青々と刈り上げている。
その刈り上げの意味を知りたい。
ここまで刈り上げてしまっていて、ヘルメットの中の髪の毛はどのようなヘアスタイルになっているのだろうか?
昔の裸電球のような感じなのか、それともヘルメットの中まで刈り上がっているのか。
美的な価値は人それぞれだが、私には彼の姿が気持ち悪く感じた。
格好だけでなく、この人は自分自身に陶酔してしまっている。コロナ禍の医療機関の逼迫なんて全く気にしていないはずだ。
そうか、もしかして彼は私がビギナーだと勘違いして誇示しているのか?
自己愛高めの人はビギナーが大好きだ。自分が優位に立って偉そうにしたいからだろう。逆のパターンは毛嫌いするが。
危ない。強烈に自己愛なロードバイク乗りに遭遇したようだ。
どうやら私は自己愛性パーソナリティ障害を有している人に絡まれやすいタイプのようだ。これが初めてではない。何度もある。
私自身の強力な劣等感や自己否定が、彼らのナルシシズムとの間で磁石のように引き合うのだろうか。
正確には、自己愛な人たちが近づいてくるだけで、私が近づいているわけではない。
彼は、弱虫ペダルのように滅茶苦茶なライン取りで公道を走っておきながら、それが格好良いと感じているようだ。
Z字を描きながら自動車を右側から追い抜くロードバイク乗りを久しぶりに見かけた。
まさしくラファユーザーの炎上動画とソックリだ。
あのような走り方は漫画の中の話だと思うのだが、オッサンになっても漫画と現実の区別がつかないのだろうか。
しかも、どうして彼は信号待ちで私を意識するんだ。
チラチラと無言でこっちを見るな。気色が悪い。
そうか、ナルシシストは他者から評価されて悦に浸る習性がある。この人は私に褒めてもらいたいのか。
ああ、気持ち悪い。そのヌルッとしたシルエットは悪夢に出てきそうだ。
ところで、ラファというサイクルアパレルのメーカーについてはファンもいるしアンチもいる。
パールイズミやシマノなどと比べると倍近い、もしくは倍以上の価格のサイクルウェアで、機能性が高く、しかもお洒落だということでサイクリストの人気を集めているらしい。
同時に、価格が高いことで一種のステータスシンボルのようになっているようだ。
私が10年以上前にロードバイクに乗り始めた頃には、このポジションはアソスだったと記憶している。
アソスは今でも高価だが、カラーリングやデザインが限られている。
まあとにかく、レースに出るわけでもないのにコンポをDURAに換えて、「俺って、これくらいの機材を買うことができるのだぞ」と見栄を張る人がロードバイク乗りにはとても多い。ウェアについても同様。
ボーナスを使い切ってしまう独身男性までいるらしい。結婚資金はどうするのだろう。
要は、機材にしろウェアにしろ、とても狭い範囲でのマウンティングの道具になってしまうということだ。
私はそういった人たちが苦手で、実際に話をしてもあまり楽しくなかったりする。
なので、そのような人たちに遭遇しないような市街地を中心に走っている。
サイクリングロードや公園の外周などでは、自己顕示と承認欲求の塊のような若者やオッサンがたくさんやってくるので気持ちが悪くなってしまうのだ。
うーん、どうなんだろう。
女性については何も言わないが、男性の格好良さというのは、金を払って手に入る部分から離れたところにあるのではないかと思う時がある。
学歴が全てではないけれど、知能が高い上に真面目に学校に通っていれば、それなりの大学や大学院を卒業あるいは修了していることだろう。
そこから地道に働いていれば、それなりの職場で活躍していることだろう。
それらの軌跡が機材やウェアに反映されているのであれば素敵なことだ。
他方、いくら機材やウェアが素晴らしくても、本人にモラルやマナーがなくて自己愛が旺盛、しかも中身が空っぽだと、格好が悪いどころか気色が悪い。
ロードバイクという趣味をどのように味わおうと、それは人それぞれなわけで、私がとやかく言う必要はないが。
けれど、「カッコいいぜ、俺の愛車!」「俺のパワー、さすがだぜ!」という感じで自分に酔いしれてしまって、自動車のドライバーにまで迷惑をかけるサイクリストが格好良いはずがない。
仕事と家庭を両立させ、その上で交通マナーを遵守してロードバイクという趣味を楽しんでいる姿が粋だと思う。
それにしても、10年以上もロードバイクに乗っていると、格好や走り方だけで中身が分かるようになってきた。
全身がラファになっているラファ星人の中には利己的な人が多いという印象はあったが、ここまで分かりやすいと別の意味で驚く。
ラファというメーカーやショップに非はないが、ハイステータスやハイセンスといったイメージを求める自己愛な人たちが寄ってくるということか。
結果、ラファを身に着けてロードバイクで暴走する人たちが目立つという図式になるわけか。
自己顕示や承認欲求が強めな人を見極めるための便利なフラグになるかもしれないが、ラファが気の毒だな。
ダイエーやイオンの衣料品コーナーでラファのサイクルウェアを安売りすれば、自己愛な人たちが寄ってこなくなるとは思うが、イメージ戦略としてはアレだな。
まあ、ラファのウェアを着て暴走を繰り返す愚者とどちらのイメージがマシかという話だが。