2020/11/30

肩凝りと腰痛の緩和にトレーニングチューブを流用

あまりに爺臭すぎると揶揄されそうなテーマではあるのだが、五十路が近付くと笑っていられないことがある。それは自分自身の老いという避けられない話。


三十路の新米パパだった頃やいわゆるアラフォーの頃は、自分の記憶では少し前という感覚だ。

しかし、厄年を越えてからの時間のスピードが非常に速い。これは新たな発見だ。物理的な時間の流れが変わるはずがなくて、脳が認識する時間の感覚が違う。

この現象には、共働きの子育てが忙しすぎて毎日が慌ただしいということも関係するのだろうか。

若い頃は少しくらい食べすぎても体型が変わらなかったが、五十路が見えてくると太りやすくなった。代謝が落ちてきているのだろう。

少ないカロリーで生活することができると喜んでいる場合ではなくて、心臓や血管、骨、免疫系に費やすエネルギーも減っている。

どうしてエネルギーを使わなくなってきたのか?当然だが身体機能が落ちてきて、メンテナンスが疎かになってきたということだな。

つまり、死に向かって着実に時間が進んでいる。

さらに、職業人としても老いを感じるようになってきた。

五十路になってもスポーツに熱心で健康的な生活をアピールしているオッサンはネット上にたくさんいる。

職業人として残り少ないクライマックスの時期に、スポーツに熱中するだけの暇があるとは素晴らしい。余程に余裕があって、やり残した仕事のない生活なのだろう。

20代や30代の頃は、「この人は陽当たりの良いデスクに座って、書類やパソコンを眺めているだけじゃないか。ハンコを首輪に取り付けた猫でも座らせておけばいい」とフラストレーションを溜めたこともあったが、その考えは間違っていた。まさに若気の至りだな。

今のように歳をとって同じ立場になると、自分の裁量と責任が大きくなり、一行の文言のために思案する機会も増えた。その解釈と対応によって今後の展開が大きく変わるからだ。

押すところは押し、引くところは引き、若い頃には口に出していたことであっても、今は喉で止めるどころか腹で押し込めて表情に出さないことも多い。

若い頃はそういったベテランたちに守られて仕事をしていたのだなと、感謝の気持ちが湧く。

そのような面倒事は明らかに面倒なので、私は可能な限り遠慮して前線に立ち続けているわけだが、さすがに厳しくなってきた。

ベテランは毎年のように引退していく上に、需要が増えすぎて補充が間に合わない状況だ。

物や建物は金を出せば手に入るが、訓練された人員を集めることは容易ではない。時間も手間もかかる。

十分に経験を積んだ人員が他の場所に移ってしまうこともある。今の職場に嫌気が差したケースもあるだろうし、より良い活躍の場が用意されたというケースもあるだろう。

まあとにかく、結果として私のような老兵を前線に送らざるをえなくなるわけだ。

若い頃には自分が五十路になってこのようなことをやると想像していなかった内容もたくさんあって、悲しくもあり、嬉しくもある。

どうして嬉しいのか。これまでに培った経験を閉じて椅子に座ったままの生活よりも、仕事の実感があるからだな。

手先の感覚や微細な動作は歳をとってもあまり変わらないが、目が弱ってきた。

普通に物を見る分には問題ないが、細かな焦点がずれてくる。その違いを指先の感覚で補いながら仕事を続ける。

経験とは大したもので、何千回、何万回と続けた作業が無意識のレベルまで染み付いているのだろう。

目と同じく、驚くほどに劣化が進むのは関節だな。

趣味でロードバイクに乗り、スピンバイクトレーニングも続けているので、太ももからふくらはぎにかけては筋肉質になっている。関節も全く痛くない。

しかし、腰から上の筋力の低下は明らかで、関節がすぐに痛くなる。同じ体勢を保持することが多い仕事では、肩凝りや腰痛が厳しい。

首を動かすだけでメキメキという不快な異音と痛みがやってくる。あまりに肩凝りが辛くなって両腕が上に挙がらなくなった。

妻の勧めで近所の整骨院に通ってみたのだが、鍼治療のオプションなどを追加すると、1時間弱で5千円近い料金を請求された。

私はいつも思うのだが、整骨院の保険適用については整形外科医の診断書の添付を義務付けるなど、より厳格化した方がいいと思う。

ただのマッサージのように保険を使って整骨院に通っている人が多く見かけられる。

何より、整骨院のスタッフに色々とウンチクを聞かされることが不快でならない。人体の解剖学くらい心得ている。

これはロードバイクのプロショップで、ひとり店長やショップチームの常連からウンチクを聞かされることに似ている。

だが、プロは流石だと思う。肩や首の痛みはすぐに取れて楽になった。

整骨院の施術の原理としては、硬くなった筋肉や腱にマッサージや電気で刺激を与えて、血行を良くすることなのだろう。関節をポキポキと修整する時もあるが、基本は揉みほぐしだな。

けれど、仕事で再び関節が痛くなるので整骨院では埒が明かないし、時間も金もかかる。スタッフとの会話も面倒だ。

上半身を鍛えてマッチョになる気持ちはないのだが、スピンバイクを漕いだ後の下半身くらいに筋肉や腱周りをほぐすことができれば、原理的には整骨院のマッサージに近くなるだろう。

彼らは外から筋肉や腱に圧力を加えてほぐしているわけで、それらを自分で動かしてほぐせばいいという仮説に至る。

そのような用途で使うことができそうな道具を探していたら、見慣れないものがヒットした。

トレーニングチューブという道具があるらしい。

筋トレというとダンベルやバーベルを想像するのだが、我が家にそれらを持ち込みたくない。場所を取るし、使えなかった時の廃棄が面倒だ。

早速、Amazonで購入してみた。

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STEADYという会社のトレーニングチューブで、値段は3千円程度。整骨院に1回行くよりも安い。

チューブは負荷に応じて色分けされていて、カラビナというフックで着脱が可能。

手でチューブを引っ張るためのハンドルも付属している。

自室に置いているスピンバイクは、パワーマジックという15万円くらいする機材だが、価格に劣らず重量も凄まじい。

このスピンバイクにトレーニングチューブを引っ掛けてハンドルを引っ張ると、身体の向きや動作に応じて僧帽筋や大胸筋、広背筋など、様々な筋肉に刺激を与えて鍛えることができるはずだ。

実際に使ってみた。

これは素晴らしい。

私は大学時代に体育会系の部活で本格的なウェイトトレーニングを経験したことがあるのだが、トレーニングチューブはバーベルやダンベルのようなダイレクト感が少ない。

一方で、いくつかの筋肉を滑らかに使っている感覚があり、筋肉への負荷は水泳に近いのかもしれないな。

野球部の学生が廃チューブを使って投球のトレーニングをしている光景を見かけたことがあるのだが、このように滑らかな動きによって筋肉を付けるためなのだろうか。

また、肩甲骨周りが凝っている時にはチューブの負荷を高めて、ストレッチのように関節を引っ張ることもできる。とても気持ちがいい。

工夫すると腹筋や背筋のトレーニングにも使える。自重による負荷のようなストイックな感じがなくて楽しめる。

翌日には、スピンバイクを回した下半身のように心地良い張りや軽い筋肉痛が残り、筋肉が関節を支えているという安心感がある。

今までのように肩や腰が固くなって痛くなることも減った。

これは良い道具を手に入れたな。

勢い余って本格的なトレーニング機材を揃えたり、プロテインを飲んでマッチョにならないように気を付けたい。

しかし、筋トレが趣味でムキムキになっているオッサンの気持ちが分かった。

身体が老いたと悲しむのではなく、老いても身体を鍛えようという前向きな生き方だな。

けれど、私としては肩凝りや腰痛対策の健康器具としてトレーニングチューブを使うことにしよう。

自宅にスピンバイクと筋トレ機材があって、マッチョを趣味にしてしまうと、ロードバイクの趣味を止めてしまうかもしれない。

身体を復活させる筋トレという活動は、老いを実感するようになったオッサンにとってかなり大きな魅力があると、トレーニング後の風呂上がりに裸で鏡の前に立ちながら思った。