2020/11/02

中年親父が美人と会話すると元気になるという予定調和

元町で人間ドックを受けてバリウムと下剤を飲み、ミニベロで新町の自宅に戻っていたら、想定通りに新浦安駅の近くで腹が下り、中町の新浦安駅前にあるイオンに立ち寄った。そこでの買い物の話。


バリウムを大まかに流して楽になったので、このまま帰るのは忍びないと思い、イオンで買い物をすることにした。

最近のイオンはリニューアルで洒落た感じになったな。ターゲットとなる年代層をきちんと見定めて、客が欲しいと思う商品やサービスを的確に配置している。

夫婦共働きで複数の子供を育てていると、毎日が慌ただしくて身なりに気を遣っている余裕がなくなる。

夫が太って腹が出ても、妻の頭に白髪が混じっても、とにかく時計が回り続ける。

バッグや服も実に適当だ。子供たちが産まれた時期からずっと使っているものがたくさんあり、消耗して使えなくなって補充する感じ。

四十路や五十路になってくると、男が格好を付ける要素が自分自身というよりも外的なものになってくる気がする。

自動車とか住居とか職業とか年収とか。

一方で、中年親父の本当の格好良さとは何かと考えてみると、見た目や稼ぎといった判断基準ではなくて、コツコツと地道に働き、妻と連れ添い、子供を育て、ささやかな趣味を楽しむという生き方そのものではないかと思う。

加齢に伴う腹周りの増大や、頭髪の劣化といった変化は仕方がないことだが、こまめに身体を洗って清潔さを保ったり、年相応に深みと余裕のある話し方をしたり、ベテランであっても礼儀正しくて腰が低い中年親父を見かけると、格好が良いと思う。

この格好良さを反転させた状態が、若者から嫌われるオッサンなのだろう。

しかし、目の前の中年親父がどのような性格で、どのような生き方をしてきたのかについては、隠しようのない場所に刻まれる。

それは「顔」だな。

意識的に笑みを浮かべることは可能だが、無表情になった時の男の顔は、その人の内面が発露していると思う。

険しい顔の人は苦労が多い人生だったのかなとか、柔和な顔の人は人と接することが多い人生だったのかなとか。

とはいえ、昭和の初期には「女は愛嬌、男は衣装」と言われることがあったように、子育て中の父親だからといってあまりにみすぼらしい格好は良くないな。

そこで、イオンの中のスポーツオーソリティという店で厚手のトップスを探す。

サイクリングが趣味ということは、すなわちスポーツが趣味ということなので、特に抵抗感もなくスポーツ用品店に入ることができる。

中町のイオンのショップの凄いところだが、たまにAmazonのタイムセールよりも安い値引きで商品が売られていることがある。

人通りの多い都内であればすぐに売れてしまうはずが、新浦安の場合には大半の客が地域の住民なので絶対数が少なく、見つからずに売れ残っていたりもするのだろう。

予想通り、ハンガーの中に赤札が付いたオークリーの長袖を見かけた。型落ちなんて関係ないわけで、これは買わねばと手に取って店内をうろつく。

しばらくすると若い女性店員さんが買い物かごを持ってきてくれた。このような丁寧さも浦安の特徴だ。

店舗だけではなくて、不動産屋から市役所までこのような感じ。ビジネスとはいえ、とても丁寧で優しい。

赤札は付いていないが、このノースフェイスのジャージは素晴らしいということで、買い物かごに入れる。

おやおや、これも赤札が付いていないが素敵だなと思い買い物かごに入れる。

やはり通販よりも店舗の方が選定が楽だな。赤札のトラップに落ちた気もするが。

よし、これだけ買い置きしておけば、4年間くらいは大丈夫だろう。

買い物かごが一杯になってきたところで、先ほどの女性店員さんが再びやってきて、会員になると通常10%値引き、この期間は20%値引きになると、会員入会を勧めてきた。

スポーツオーソリティは全米最大のスポーツ用品のチェーンだと思うので、ハロウィンからクリスマスの時期にセールがあることは納得する。

会員の勧誘はよくあるが、今回はポイントカードではなくてクレジットカード機能が付いた会員カードだ。

当然だがクレジットカードの審査もあるし、クレジットカードを増やしたくない。

だが、子供たちのバッグや靴はスポーツ用のモデルが重宝するし、アウトドア用のジャケットも10年近く同じものを着続けている。そろそろ替え時だな。入会した方がリーズナブルか。

しかも、接客してくれた店員さんがあまりに美しい。栗色のカールした髪を後ろで束ねて、目の色が淡いブルーだ。

新浦安には外国人とのハーフが珍しくないし、カラーコンタクトなのかもしれないが、顔や手の肌が透き通るように白い。

しかもマスク姿なので、目元の美しさがさらに強調される。吸い込まれそうな瞳とは、まさにこの状況だな。

そういえば、若い人たちの間ではカラーコンタクトで瞳の色や大きさを変えることがあるらしい。

スレンダーで引き締まったスタイルや長い手足はファッションモデルのようだ。

真面目に考えると、以前、海外出張で訪れた国でJCBカードが使えず、VISAカード1枚だけで何とかするという状況があった。

このカードが盗まれたり、システムが不具合を起こしたら、私は外国で飯を食うこともできなくなると焦った。

今回を機に、Masterカードを作っておくか。

オッサンが若手に飯をご馳走する際にも、ゴールドカードよりもスポーツショップのカードを出した方が面白い。

この思考の間、店員さんが私のようなオッサンを見つめていて、年甲斐もなく照れる。

何度も入会を断られてきたのかもしれないな。私が入会を承諾するととても喜んでいた。

オッサンなんてチョロいもんだと思われたかどうかは分からない。

ということで、レジに買い物かごを運び、入会希望だということを伝えると、本当に商品が20%割引になった。

AmazonのようなECサイトに対抗する手段としては、なかなか迫力があるな。

入会希望の旨を伝えて、先ほど声をかけてくれた青みがかった瞳の店員さんを呼ぶ。

会員の勧誘に成功すると、ショップだけでなく声をかけた店員にもメリットがあるのかもしれない。

一瞬、レジの女性店員の目つきが曇ったので、たぶんそういうことだろう。

腸に残ったバリウムの波が再来するかもしれないので、さっさと申込用紙に書き込んで帰ろうかと思ったら、まさかのモバイル手続き。

新しいスマホに慣れていないので、店員さんのタブレットを貸してもらいながらの手続きだ。

デジタルに疎い中年だと思われたようで、入力項目をひとつずつマンツーマンで教えてくれた。

それにしても、容姿も美しいが性格も穏やかで上品な女性店員さんだな。かなり頭の回転が速くて、会話がとても楽しい。

彼女の父親は私よりも少し年上くらいだろうな。グレイやルナシーの存在を父親から教わって、それらが子供にとって懐メロとして認識されるという関係だな。

クレジットカードの審査なので、入力項目がやたらと細かい。勤務先も入力し、予定調和で驚かれる。

やけに話題が合うなと思ったら、店員さんも新町にお住まいだそうで、ご近所さんだった。

たぶん、夕食時の家族の会話のネタになるだろうな。

ただのエロオヤジなら妄想を膨らませるのだが、私は父親のことが気になった。

ここまで美しくて気立ての良い娘さんがいて、近い将来に誰かと結婚して、一緒にバージンロードを歩くわけだ。

相手がハイスペックな新郎ならば諦めもつくが、世の中は往々にして凸凹な組み合わせになる。

凄まじい感情の波がやってきて、父親は大号泣しながら写真に収まることだろう。

...という話を我が家の夕食で家族に紹介したわけだが、妻は夫に関心がないので無味乾燥な発言が続いた。

まあそんなものだと諦めて夕食を続けていたら、上の子供が凍っている。

「それは浮気か!?浮気なのか!?」と私を問い詰めてくる。

私はただスポーツショップの店員が美しくて楽しい人だったという話をしただけだ。

義実家あるいは小学校の同級生うちで何か吹き込まれたか。上の子供は明らかに勘違いしている。

しかし、何事も勉強だな。

美しい女性と会話をすると気持ちが元気になるのは男のサガなのだろう。

それが趣味になったり、家庭のクライシスを招く父親は品がないと私は思うが、彼らを引っ張る衝動の正体が分かった。

中年親父をまともに続けると、その生活は限定的にストイックで、しかも生き甲斐というものが不明瞭になってくる。

少しの時間であっても胸ときめく瞬間がほしいということか。

つまり、中年親父の頭の中には、デフォルト仕様としてエロオヤジというアプリが入っているというわけだな。

そのアプリにロックをかけて起動させない、あるいは妻に対してのみ起動させることが望ましい父親の正しい姿であって、さらに後者がブロックされて自家発電に頼るという悲しき構図もあることだろう。

しかしながら、エロオヤジになることを封印したとしても、美しい人を美しいと思う感性まで失いたくないものだ。

それを専門用語でムッツリと呼ぶのだろうか。