裸足ペダルと鼓童で室内サイクリング
父親の場合、心の拠り所が妻や家庭であれば幸せな方で、往々にして趣味という場を望む。
育児中によくあるのがスマホゲームやオンラインの漫画。
育児中は危険だということでガンダムなどのプラモデルの趣味を止めるのもこの時期だな。
また、独身時代に楽しんでいたロードバイクといった趣味を楽しむ時間と金がないとマレー熊のように嘆くことがあるのもこの時期だ。
育児中にロードバイクのライドに出かけられるか否かは、子供の育てやすさ、実家のサポート、本人の気概といった様々な背景があるが、結局は夫婦関係に依る。
その点では、うちの妻はサイクリングという私の趣味に寛大だな。
ロードバイクの室内保管さえ許さない奥さんがいたりもする世の中で、とても有り難いことだ。
子供たちが大きくなって父親を相手にしてくれなくなり、さあ余裕ができたと思いきや、仕事が忙しくなるだけでなく、気持ちが老いてくる。
太った腹が気になっても酒を拠り所にしたり、妻以外の女性とのささやかな交流を画策することがあるのもこの時期だな。
釣りやスポーツサークル、地域活動に取り組む父親がいたりもするし、仕事に没頭する父親もいる。
最近ではアウトドアやキャンプを趣味にしている父親も多い。ガーデニングや囲碁将棋といった渋い趣味もある。
副業と趣味を兼ねて株式投資やFXに熱中し、多額の資金を失って悲惨な状態になったりもする。競馬や競輪もこのラインだな。
私の場合はロードバイクやスピンバイクに乗って禅を組むことで死なずに生きているわけだが、とりわけスピンバイクと禅は相性が良くもあり悪くもある。
静的な脳のメンテナンスとして禅を行っているので、汗だくで心拍数を上げるようなペダリングは適していない。
軽い負荷でゆったりとペダルを回しながらマインドフルネスのようにリラックスするわけだ。
最近の眠りの浅さは、おそらく心肺や筋肉が疲れていないからなのだろう。
その一方で、起床時や通勤電車に乗った時には心拍数が100近くになっているので、自律神経が何か間違っている。
経験とは大したもので、慌てることもなく、クリニックにかけこむこともない。
バーンアウトで感情が枯渇して死の気配を感じた時に比べれば全くもって楽だ。
そもそも脳神経を介して生じる現象には明確な機序が存在している。
現在の科学で解明されていないことは多いが、悪霊が取り憑いたわけではない。
浦安で生活することが明確なストレス源になっていて、子供たちの環境や小学校生活を考えると引っ越すこともできない。
ストレスが増大した理由は簡単だ。
コロナの外出自粛ムードが緩み、電車や駅が混み合うようになった。
ディズニーが再開して、またあのハイテンションな観光客が生活環境になだれ込んできた。
これは通勤地獄の一丁目だ。
大学が再開し始めて、電車や駅にハイテンションな学生たちがやってくる。
集まって酒を飲んだり、アピール全開あるいは世の中をナメたような喋り方をする若者たちのことは、私が実際に大学生だった頃から嫌いだった。
理系はともかく文系については、全国共通の学力試験を一斉に開催して、その点数で就職を決めれば、こんなに大学生が遊び呆けることはないはずだ。
遊ぶ時間がないくらいに勉強させればいいのに。
コロナの第三波が来るとすれば、このような若者たちが感染を広げることだろう。
原因と結果がここまで分かりやすいのだから、子供たちが私立中学に入学して市外に引っ越すまで耐えるのみ。
目眩と動悸が辛いので、Amazon Musicという音楽配信サービスで自律神経を穏やかにするという触れ込みの様々なヒーリングミュージックを聞いてみたが、案の定、全く効かない。
眠る前にはそれらも良いが、目覚めると心臓が激しく鼓動している。
禅をやっても心拍数が高い状態だ。都内への電車通勤と浦安市での生活のストレスは大きい。
これだけ疲れているのに、妻や子供たちからの労いの言葉はない。
私が体調を崩さないことを前提にデザインされた家庭だな。リスクヘッジが甘い。
ここで放置するとダメージが蓄積する。
私は父親として子供たちを育てる責任があるので、倒れるわけにはいかない。
自律神経のバランスが崩れたなら、バランスが取れるように外から情報を入力すればいいわけだ。
ストレスで体調が悪くても、私は薬には頼らずに自転車に頼る。
スピンバイクに乗って汗だくでペダルを高回転することができそうな環境を用意して、正しい理由で心臓を高回転させることにした。
サイクリングによって目眩が緩和するという傾向も私個人に限れば再現性がある。
バーンアウトしかけた時にも地球半周分の距離をロードバイクで走って脳を回復させた。他の人に効くのかどうかは分からない。
とはいえ、浦安から都内へのロードバイク通勤の途中で交通事故に遭い、健康なのか不健康なのか分からないタイミングで電車通勤に戻った。
週末のロードバイクの実走だけでは内容が足りないので、必然的に平日は室内トレーナーを用いたサイクリングになる。
ところが、レース志向ではないロードバイク乗りが室内トレーナーで頑張ることは大変だ。
スピンバイクにしろローラー台にしろ、室内でペダルを回すと暇に感じて飽きてしまうことが多い。
最近では、Zwiftが流行っていたりもするが、オンラインで他者と競ったり一緒に走ることでモチベーションを上げる仕組みなのだろう。
全世界で一斉にZwiftが流行し国内でもズイフターが増えたが、「やっぱ実走だよね」と飽きてしまう人たちが目立つ。
この流行は、SNSやオンラインゲームのようなブームに近いのかもしれないな。
人の脳は複雑な刺激を受け続けると慣れてしまう。
実走と程遠い動きをする欧米風のポリゴンのようなキャラクターに自分を投影することができる人たちは素晴らしい。
よほど素直な人たちなのだろう。
室内サイクリングにおいては、ペダルを漕ぎ始める直前のモチベーションが落ちることもある。要は面倒くさい。
何が面倒かというと、部屋の中なのにわざわざ靴下とビンディングシューズを履くこと。
やろうと思えばすぐにシューズを履くことができるはずだが、慌ただしい平日の朝などはその一歩が面倒でトレーニングをパスしてしまうことがある。
起きてすぐ、もしくは時間が空いた時に裸足でそのままペダルを漕ぎたい。
ということで、スピンバイクのビンディングペダルを外して裸足用のペダルに交換した。
裸足で漕ぐことができるペダルは種類が少なく、私が知る限りはMONOLIFEのエアロバイク互換ペダル一択。
通販で3千円程度。
このペダルはエアロバイクのために設計されたものだが、ロードバイクトレーニング用スピンバイクのパワーマジックに取り付けることができる。
また、このペダルの軸の径はビンディングペダルと同じなので、ローラー台にセットしたロードバイクでも使用することができるはずだ。
この裸足用ペダルは値段の割に品質が良い。また、商品には担当者からの丁寧な手紙が添えられていた。
裸足用ペダルを使用する際には、何せ裸足なのでクリートの調整も必要なく、カントは自分の足裏と足首で調整する。
興味深いことに、サドルについてはビンディングシューズを使用していた時と同じ高さで十分だ。
しかし、ビンディングペダルから裸足ペダルに交換すると、明らかにケイデンスが落ちる。
いかにビンディングシューズの効率が高いのかを実感するが、裸足の方が楽しくて爽快なので戻すつもりはない。
足の裏に触れるとくすぐったい。足の裏には手のひらと同様にたくさんの神経の末端があるからだ。
人が靴で歩いたり走る上で、足裏の感覚がここまで鋭敏である必要はないはずだが、人類の進化の中で残った性質であり、昔は何か大切な役目があったのだろう。
東洋医学や青竹踏みといった民間療法において足のツボを刺激するという方法は必ずしも非科学的なことではなくて、人間の生理学的な性質を用いたものだな。
裸足でペダルを回すと心地が良いのは、手っ取り早くて足が窮屈ではないだけでなく、足裏からの刺激によるものではないかと思う。
ビンディングシューズ比べてケイデンスが上がらないのは仕方がない。頑張ってペダルを回そう。
BGMをかければ気持ちが上向いてケイデンスが上がるかなと、ハードロックやEDM、アニソンやジャズまで試してみたが一向に高まらない。
そこで、Amazon Musicにアクセスして片っ端から様々なジャンルの曲をかけていたら、「鼓童」というグループの「暁」というアルバムを見かけた。
アルバムのデザインは古風で、どう考えても和太鼓による演奏だな。
多少ナメた気持ちで鼓童の太鼓の音を聴いたところ、一気に引き込まれた。
祭りなどでよくあるピーヒャラピーヒャラという笛の音や、今風の和太鼓と他のジャンルとのセッションではなく、太鼓で真っ向勝負をかけている。
ハードロックのバスドラムよりも遥かに腹の底に響く重低音。
演奏者の呼吸まで聞こえてきそうな躍動感。
不思議なことに、彼らのようなアップテンポの太鼓の合奏は古くから世界各地で行われている。
アフリカから始まった地球規模の人類の移動とともに太鼓やドラムが世界に広がったと考えると、古くからこの楽器と人との関係が続いていたということだな。
その太鼓の音を日本人に合うように熟成したものが和太鼓で、日本人の実直で真面目な性格がよく表れていると思う。
鼓童という名前は「鼓動」に由来していて、確かに心臓の音に似た重低音が聞こえる。
彼らの曲は間違いなくスピンバイクやローラー台トレーニングのテンポに合うはずだ。
早速、鼓童の太鼓に合せてペダリングを試みてみると、予想通りにケイデンスが上昇した。
鼓童の太鼓のテンポに合わせてペダルを回そうとすれば、ケイデンス90では間に合わない。110くらいが丁度いい。
フラットペダルの室内トレーナーでケイデンス100なんて無理だと思っていたが、1時間くらいの間、ケイデンス100を維持することができた。
気持ちやモチベーションは大切だな。
トレーニングが終わると全身汗だくで全身に心地良い疲労感が残り、動悸も目眩も消えた。
これを繰り返せば何とかなりそうだ。
通勤中にイライラしたら、全身の筋肉痛をひとつずつ確認することで気を紛らわせることができる。
とにかく工夫して耐えるステージだな。