2020/09/03

ロードバイク用の肩プロテクターを自作して2年が経過

前回の録にて、ロードバイクのライドで使用している腰プロテクターについて記したので、忘れないうちに鎖骨を保護するための肩プロテクターについても書き留める。自作といってもオートバイ用の市販品の流用。


個人用の備忘録なので、同じことをやったのに鎖骨が折れたではないかといったクレームには応じない。

ロードバイクに乗っていて落車した場合に最も骨折しやすい部位が鎖骨だ。

ツイッターでは頻繁に鎖骨骨折のツイートが流れ、その多くが肩をメスで切り開いて、チタンプレートとボルトを使って骨を固定するという外科的処置がなされる。

ロードバイク乗りにおいて、どれくらいの人たちが鎖骨を骨折するのだろうか。

生涯を通じてという計算であれば、10%どころではないと思う。

ロードバイクのチームやサークルがあれば、その集まりの中に鎖骨骨折歴のある人が何人もいたりもする。

落車と鎖骨骨折の相関は非常に高い。

しかし、マウンテンバイクやBMXなどと比較して、ロードバイクの場合にはヘルメットとグローブ以外の保護具の使用は一般的ではなく、鎖骨を守るための肩プロテクターは見当たらない。

ということで、鎖骨を骨折したくないロードバイク乗りや、すでに鎖骨を骨折してチタンプレートが入っているロードバイク乗りにとっては、肩プロテクターがほしいところだ。

マウンテンバイク用に肩プロテクターが縫い込まれたインナーシャツは販売されているが、非常に高価だ。

インナーシャツが合わないと厳しく、蒸れて暑そうな印象もある。どうやって洗濯するのかという課題もある。

パッドは大丈夫なのにインナーの生地が傷んだら交換になるのか。

そこで、オートバイ用の肩パッドを自分で加工して、ロードバイクのライドで使うことにした。

この方法は私のオリジナルではなくて、ブルベレーサー(ランドヌールとお呼びするのか?)のクロスさんがブログでご紹介くださっている。

面識や承諾のない直リンクは失礼なので避けることにした。

肩プロテクターに限らず、一度のブルベで600kmを走破することもあるスーパーランドナーのお話はとても勉強になる。

重要な情報をブログにてご紹介くださったクロスさんに、心から感謝申し上げます。

その原理はシンプルで、オートバイのライダージャケット用の肩パッドにマジックテープを貼り付けて、サイクルジャージの裏側と肩の間に固定するという方法だ。

マジックテープは前後左右に肩パッドがずれないように留める役割があって、実際には自分の肩で肩パッドを支える形になる。

ロードバイクの場合には、肩パッドを載せるくらいが精一杯だと思うし、シンプルなだけに加工が難しい。

そもそも、どの肩パッドが自分にとって使いやすいのかも分からない。

肩パッドにマジックテープを貼り付けるのはともかく、サイクルジャージにどうやってマジックテープを取り付けるか。普通に洗濯してマジックテープが剥がれると困る。

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1年くらいの間、ああでもないこうでもないと試行錯誤して、この形に落ち着いた。

「これだけ?」という印象がある。本当にこれだけ。

インナーに肩パッドを縫い付けたり、ジャージにポケットを作ろうとしたり、剥がれないマジックテープを探したりと、失敗の連続だったが、この状態でさらに1年間使用して不具合がないので、たぶん私なりの解なのだろう。

まず、用いた肩パッドは、コミネ(KOMINE) 社が販売している「SK-812」という肩パッド。

Amazonで1600円くらいの価格だった。

肩パッドにはプロテクションのレベルがあって、これはレベル2に該当するそうだ。レベル1はもっと柔らかい。

肩パッドは各社から様々な製品が販売されていて、10種類近くあった。

サイクル用品のように高額ではないので、それぞれを取り寄せて、第一段階のスクリーニング、つまり選別を行った。

方法は原始的で、自分の肩にこれらのパッドをテーピングで固定して、自宅のマンションの柱に肩を打ち付けてみた。

何も付けない状態でコンクリートの柱に肩を打ち付けると、当然だが痛くて悶絶する。

この痛みを経験しないとスクリーニングが始まらない。

また、この衝撃よりもはるかに大きな力が鎖骨にかかるのだから、落車で骨折することも納得する。

興味深いことに、オートバイ用の肩パッドの中には、肩への衝撃を受け止めきれず、素肌に柱の角の感覚が分かるくらいに柔らかい製品がいくつもあった。

そういえば、オートバイのライダージャケットには、肩部分に硬質のシェルがすでに縫い込まれているタイプがある。

柔らかい肩パッドは、それらのジャケットのシェルの裏側のポケットに入れて、クッションとして使うのだろうと勝手に思った。

そして、自分の肩を柱に打ち付けてみて、痛くない肩パッドを3種類くらい選別し、実際の使用感を調べた。

これもまた原始的な取り組みで、インナーに肩パッドをテーピングで取り付けて、その上にサイクルジャージを着用し、ロードバイクで浦安から都内までの通勤を繰り返すだけ。

このような時、生来の感覚過敏は便利で、肩パッドのフィット感や可動域のわずかな差異を感じることができる。

普段の生活では重荷でしかない感覚過敏だが、その鋭敏な性質を活用して仕事に取り組み、子供たちを養っているわけだ。

架空の話だが、もう一度生まれ変わる時があったとして「感覚過敏をオプションで追加しますか?」と尋ねられたら、どのように答えることだろう。散々苦しんだので、二度と生まれ変わらないようにしてくれという斜め上の答え方をするかもしれないな。

最終的に、コミネのSK-812という肩パッドを使うことにしたのだが、ここからが大変だった。

この肩パッドの表面は何らかのコーティングが施されているらしく、マジックテープの粘着面が貼りつかない。

仕方がないので、マジックテープを貼る部分のコーティングを剥がすことにした。

使うものは、マイクロファイバー雑巾と消毒用のエタノール。

マイクロファイバー雑巾の片隅に消毒用のエタノールを含ませて、肩パッドを軽く擦っていると、光沢のあるコーティングが剥がれて、下地が見えてくる。

あまり擦りすぎると内部のスポンジまで出てきてしまうので注意する。

その後、一晩放置して、アルコールと水分を飛ばす。

100円均一のマジックテープだと固定力や耐久性が十分ではなく、幅も足りないので、マジックテープには金をかけることにした。

Amazonにて、「ドリームコーポレーション製 強力タイプ面ファスナー 黒ブラック 幅50mm 単品裏糊付」という商品を購入し用いる。

「バリットくん」という商品名のマジックテープだが、業界最強という宣伝はダテではない。

トリモチのように強力な接着面だ。「バリッと」という擬態語は何かが破れる時の姿だと思うが、一度貼り付けたバリットくんをジャージから無理に剥がすと、ジャージがバリットくんになるので注意したい。

また、実際の幅は40mmくらいだったが、とても幅が広い。

このマジックテープはオス側とメス側が別売されていて、それぞれ長さを変えて購入することができる。

オス側がフック面で、触るとざらついている方。

メス側がループ面で、触るとフワフワしている方。

いくつかのサイクルジャージやサイクルジャケットにマジックテープを貼り付けて、一つの肩パッドを使い回す場合には、メス側のマジックテープを多めに用意する。

バリットくんのように、オスメスが別売のマジックテープの方が無駄がない。

肩パッドに取り付けるマジックテープは、ザラザラしているオス側を用いる。

オスメスを逆、つまりサイクルジャージにオスのマジックテープを貼り付けると、肩パッドを使わない時にマジックテープがインナーシャツや素肌に触れて痛くなる。

マジックテープを50mm×40mmの大きさに切って、角を5mmずつくらい落とす。これを肩パッドのコーティングを剥がした部分に貼り付ける。

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肩パッドのコーティングを剥がした部分はスポンジが露出しているので、念のため、グルーガンでマジックテープの裏側にボンドを十分に塗布してから貼り付ける。

ボンドを融解させて熱圧着させるグルーガンは、ホームセンターで千円未満で手に入った。操作は大して難しくはないし、子供たちの夏休みの課題工作や日用品の補修にも使えたりする。

強度を高めるために、マジックテープの縁の部分にもグルーガンでボンドを塗っておく。

これを一晩くらい放置すると、マジックテープが肩パッドに固着する。

肩パッド自体の寿命が2〜3年というメーカーの情報があるが、2年経った今でもマジックテープは全く剥がれていない。

加えて、コミネのSK-812の特徴としては、パッド自体に網目状の穴を開けるのではなくて、裏面に細かな凹凸の加工を施すことで、内部で蒸れないように設計されている。素肌につけてもあまり違和感がない。

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しかし、素肌の上に肩パッドを乗せると、夏場は汗が肩から腕に向かって流れていくので、私は半袖のインナーシャツを着て肩パッドを使っている。

手を挙げてハンドサインを出す時などは肩パッドの縁が尖っていて痛い場合があるので、ハサミを使って角を落としておく。

あまり深く角を切りすぎるとスポンジ部分が露出するので、カットは最小限に留める。

次に、肩パッドを取り付けるためにジャージを加工する。

バリットくんのメス側(柔らかくてフワフワしている面)を80mm×40mmくらいのサイズでカットする。

肩パッドのマジックテープと同じサイズでカットすると使い始めてから位置の微調整ができなくなるので、サイクルジャージに取り付けるメス側は大きめにカットしておく。

また、ナデ肩やイカリ型といったように、人の肩の形は様々で、同じ人でも右と左で形が微妙に違う。そのため、マジックテープを貼り付ける位置は現物合わせになる。

この作業が最も難しい。

その方法は人それぞれで構わない。私の場合は以下の通り。

いきなりサイクルジャージに貼り付けて位置が合わないと、マジックテープが剥がれなくて困るので、ジャージに貼り付けるメス側を、肩パッドのオス側に取り付ける。

この時、メス側の接着面のシールを剥がさずに、セロハンテープなどでシールとマジックテープを仮止めしておく。

このシールに適当な両面テープを貼り付けて、ジャージの裏側に軽く接着するように両面テープの付着面を露出させる。

その後、実際にサイクルジャージを着用し、オスメスのマジックテープを取り付けた肩パッドをジャージの下に入れる。

肩部分が狭いレースフィットのサイクルジャージの場合には、肩パッドを入れると脇の下が痛くなることがある。

そのため、少し大きめのジャージか、肩部分のサイズに余裕があるジャージを選んで加工する。

また、肩パッドの位置合わせは、正立した状態ではなくて、前屈したライドのポジションで行う。

肩パッドが自分の肩にフィットし、真横に倒れた時に鎖骨を保護することができそうな位置を探す。

肩パッドが適切な位置になったら、メス側のマジックテープのシールに取り付けた両面テープを使って、マジックテープをジャージに軽く取り付ける。

肩パッドを肩の上に乗せたまま、オスメスのマジックテープを外す。

この時点で、メス側のマジックテープだけが両面テープでジャージの裏側に張り付いた状態になる。

マジックテープが剥がれないようにジャージを脱ぎ、マジックテープの位置をマークする。

この段階までたどり着いてから、メス側のマジックテープのシールを取り外して接着面を露出させ、位置をマークしたジャージの裏側に接着する。

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念のため、もう一度ジャージを着て、肩パッドの位置を確認する。

ここでマジックテープがずれていたら、最初に焦り嘆く。

次に正気を取り戻して慎重にバリットくんを剥がし、新しく用意したバリットくんを貼り付ける。

この状態で一晩くらい放置すると、マジックテープとジャージが固着して、洗濯しても剥がれなくなった。

実際の肩パッドの使用感はどうかというと、最初の頃は肩に物が載っている感じがあったが、途中から慣れた。

サイクルヘルメットを使い始めた頃と同じ感覚だ。

バックパックを背負っているので、肩パッドがあまり目立たないし、タイトなウェアを着たロードレーサーが身に着けると、むしろ見栄えがいい感じがする。

自分の骨格に合わせたプロテクターというのも趣がある。今では、これがないと逆に落ち着かない。

他のロードバイク乗りから小心者だと笑われたこともない。むしろ、鎖骨を折った後のリハビリだと勘違いされるようだ。

頻繁に落車することはないが、ライドでは目の前に何が飛び込んでくるか分からないし、大丈夫だと油断した時に転んだりもする。

また、立ちゴケで鎖骨骨折なんてダサいと思われるかもしれないが、意外とこのパターンが多い。

肩パッドを選別している時に素肌で肩をコンクリートに打ち付けてみて改めて実感したのだが、人間の肩部は、まるでロードバイクのリアディレイラーのように脆い。

複雑な肩関節の上に、薄い筋肉が乗っていて、皮で覆っているだけ。

立った状態で真横に倒れただけで折れるような部分なのに、何も保護せずに疾走するところも肩部とリアディレイラーは似ているな。

だが、一昔前は、ヘルメットさえ装着せずに疾走していたわけだ。ロードバイクの走行時の安全対策は、他のスポーツよりも遅れているのかもしれない。

より速く走ることを追求する過程で取り残されていることの一つかもしれないな。

例えば、プロボクサーは試合で顔や頭に何も付けずに殴り合うが、スパーリングではヘッドギアをつけるそうだ。

アマチュア選手だってヘッドギアを付けることだろう。

ロードバイク乗りはどうなのか。

プロは落車した時の転び方が上手く、衝撃を巧みに避けている感じがある。余程の突発的なアクシデントでない限り、転倒しながらも思考して対処しているのだろう。

一方、アマチュアの落車は、頭が真っ白になったまま、なすがままに吹っ飛んでいく感じだ。落車しながら転び方を考えている余裕はない。

それなのに、プロの本番のスタイルをアマチュアがそのまま真似して、交通整理がなされていない公道を布一枚で走る。

本来ならば、ユーザーがオートバイ用の肩プロテクターを流用して対応するのではなくて、サイクル業界が開発した方がいいと思うのだが、まあこれが現状だな。

肩パッドとマジックテープの材料費で3千円程度、グルーガンは千円程度。一式を用意してもタイヤ1個分で肩を保護できると考えれば安い。

今では冬用のジャケットにもマジックテープを貼り付けて、フルシーズンで肩プロテクターを付けて走っている。

ヘルメットを付けずに走っているロードバイク乗りを見かけて「危ないなぁ...」と感じるように、肩プロテクターを付けずに疾走しているロードバイク乗りを見かけると同じ気持ちになる。

ただ、公道をロードバイクで走る限りは、いくら鎖骨や大腿骨を保護するプロテクターを装着したところで万全とは言えない。

落車や怪我のリスクを常に抱えた状態で走っていることを自覚し、あまり無理せずスピードを緩めて走ることが最大の防護なのだろう。

ロードバイクという乗り物を趣味にしていると、速く走ることに意味があるわけで、安全との板挟みになることもある。

けれど、仕事があり、子育てを続けている父親が趣味としてロードバイクに乗る場合には、やはり安全を優先したい。

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