スマホの目覚ましで良くなる目覚め
それにしても、最近のスマホはすごいな。
企業や役所において、実力を超えた出世を目指すイエスマンが上司に張り付くかのごとく、スマホの様々なアプリがホーム画面に通知を送ってくる。
まるでホウレンソウだな。鬱陶しいのでセキュリティ以外の全てのアプリを非通知に設定。
しかしながら、眠る前にリラックス効果がある音声がタイマー付きで流れるという機能には驚いた。素晴らしいアイデアだ。
音声リストを眺めてみると、「波の音」というオプションがあった。なるほど気が利いている。
私は海の近くで生まれ育ったので、子供の頃は波の音を聞きながら眠りについたものだ。
故郷にはあまり良い思い出がないが、あの海は美しい。
今も海沿いの浦安市の新町で生活しているが、コンクリートで岸が固められた環境は、海と人との自然な関係とは言えない。
とはいえ、これだけ平坦な地形の場合、高潮や津波を想定すると仕方がないことだろう。
漁業によって生計を立てていた浦安の民は、生まれ育った町の慣れ親しんだ海が埋め立てられていく光景を眺めて、何を感じたのだろう。
浦安には水害との戦いの歴史がある。もしかすると堤防がある海が自然な形なのかもしれないな。
新浦安が故郷となっている妻や子供たちにとっては、この護岸の向こう側が見慣れた海だ。
私自身は故郷から遠く離れた浦安という街で住み、故郷に戻ることなく朽ちるのだろう。
仕事から帰ってきて風呂に入り、冷たいハイボールを引っかけた後、クーラーの効いた自室で波の音を聞きながら横になると、実に爽やかに眠りに入ることができる。
しかしながら、私にとって苦労するのは、寝付きよりも寝起き。
朝が来て、「ああ、また駅前まで移動して、長時間の電車通勤か...」と思うと気が重くなる。
気分という単純な話ではなくて、本当に体が動かない時がある。
私は浦安市という混み合った慌ただしい街が苦手だ。しかも義実家が近くにあり、都内への電車が地獄。
全てではないが我が強くてせっかちな新浦安の市民性。
赤信号を守らずに交差点を自転車で突っ切る住民がどれだけ多いことか。
この町が住みやすいだと?
私はたくさんの街で生活してきたが、ここまでピーキーな環境を経験したことがない。
それが活気や利便性だと言われればそうかもしれないが。
「二度と住むものか」と市外に転出していく人たちもいるし、「浦安に住みたくない!」と我慢しながら生きている人たちもいる。
ご当地サイトは、ご飯論法のように町の良いところばかりを切り取っているだけで、悪いところを取り上げない。当然だな。
そこで「浦安に住みたくない!」というサイトを立ち上げて、浦安のディープな闇を大公開しようと思いついたのだが、怖い顔をした人たちが寄ってくる上に、浦安出身の妻がキレるので未遂に終わっている。
それにしても、こんなに住宅やホテルを建てて、住民や観光客を集めてどうするんだ?
子育て世代が年寄りになったら、一気に高齢化して街の財政が厳しくなるぞ。
その一方で、ディズニー客は全国から押し寄せる。
これが街の発展か?街が金儲けや消費の対象になってはいないか?
ディズニーだ鉄鋼団地だ配送センターと商用施設を作って、電車や駅だけでなく歩道にまで人が溢れ、道路は大型車がひっきりなしに走る。
これが本当に住みやすい町の姿か?
仕方のない話ではあるが、ディズニーが再開して、再び電車や駅が混んできた。
マスクをつけたハイテンションな人たちが全国からやってくる。
観光客にとっては天国かもしれないが、私にとっては地獄だ。
人数を制限している段階ですでにうんざりしているが、本格的に再開したらありえない混雑になるのだろう。
ディズニーは地域住民の生活に配慮しているのだろうか。
通勤電車や駅構内では、人間の多様性を実感する。たった一回の出勤であっても、イラッとする瞬間が数十回ある。
こんな毎日を送るために、私は生きてきたわけではない。
...と我が判断を悔やみながら耐え続けて10年以上が過ぎた。
子供たちが私立中学に入学するまでの我慢だ。子供たちの学校の成約がなくなれば、さっさと浦安から引っ越す。
これで通勤地獄やストレスフルな街から解放されるはず。
子供たちが市川中や渋幕中に合格しても東京に引っ越す。
千葉県は面白いところだが、都内への通勤が面倒だ。残り少ない人生を通勤で浪費し、命を削りたくない。
朝に起き上がることができないくらいにストレスを感じると、スピンバイクのトレーニングも難しい。
特に、眠りから覚める瞬間のだるさが大きくて、意識を取り戻して浦安にいることを確認した時点で、再び眠りたくなる。
少しでも二度寝をすると、通勤時の気分は最悪で、午前中はずっと怠さが続く。
新しく購入したスマホを適当に操作していたら、目覚まし時計のアラームについても心地よい音楽が用意されていることに気がついた。
しかも、端末にダウンロードした音楽を目覚ましとして流すこともできるそうだ。
試しにアップテンポの音楽で目覚めてみると、これが実に快適だ。
それと、目覚めの憂鬱な気分は、起きてすぐにカーテンを開けて光を浴びることで随分と楽になることも分かった。
何だか原始的ではあるけれど、ここまで効果があると嬉しいものだ。
そこからスピンバイクでペダルを回し、軽く汗をかいた後でシャワーを浴び、冷たい炭酸水を喉に流し込む。
素晴らしき朝が始まっても、家から出れば街の人の多さに苛つき、電車の中でマナーの悪い人たちやディズニー客に苛つき、駅構内の乗り換えではスマホゾンビに苛つき、精神をすり減らしながらの出勤は変わらない。
それでも、HPがゼロどころかマイナスになるよりはマシだな。
子育ても家事も中途半端で、上の子供の受験についても妻に任せっきり。
電車通勤が嫌だ、住む街が嫌だとストレスを溜め、なんて無様な生き方なんだ。
けれど、この苦痛から解放されるまで、何とか工夫して耐えねば。
...と帰宅中の京葉線の中で録を記しているのだが、隣の席のサラリーマンたちが猛烈に酒臭い。
その中年男性たちは赤ら顔でマスクもせずに大声で話している。
夜の街で大騒ぎして、感染者として市役所から発表されるタイプだな。
オッサンAは感染経路不明、オッサンBはオッサンBと接触という感じで。
鞄の中から、活性炭フィルターを装備した高性能マスクを取り出して交換し、酒臭さもろともブロックする。
何事も工夫だな。