2020/06/27

夢と魔法の国がある街の事情

この数日、浦安市内で新型コロナの陽性者が連続して確認されているが、あと数日でディズニーが再開するらしい。


久しぶりに浦安市の公式ツイッターを眺めてみると、相も変わらず浦安市に対して匿名のツイートで絡む市民が散見されて気が重くなる。

メタデータから関連するアカウントを特定。その後、本アカを特定。

ああ...いつもの帰属意識高い系の人たちのサブアカだな...と思ったら、本アカで不平不満を投げ込んでいる市民までいる。

プライベートの写真まで公開している本アカでそのようなことをするから、画像解析によってフルネームや配偶者の顔写真まで以下略。

気持ちは分からなくはない。

だが、浦安市の公式ツイッターは、市民に対して即時性のある情報を伝えるための手段だ。

市民がリプライ欄にコメントを投稿して改善を要望するものでも、個人の不満を発散するものでもない。

市民として気づいたことがあれば、市役所に電話やメールで伝えると、この街の行政はきちんと受け取ってくれる。

対応しうるか否かは別だが、信用に足る行政だと私は思う。

どうしても難しいようであれば、政治的な意図がないことを明示した上で市議会議員に情報を伝えるという方法もあるが、市役所の職員はそれを嫌がる。

市民との間での心が通った建設的な会話、できれば少しの感謝と励まし。

それらが市職員の疲労を和らげ、職務へのモチベーションを高めると思う。

浦安市民のツイッターユーザーのほとんどは、市の公式ツイッターのリプ欄にメッセージを投稿しない。それがマナーやモラルだと私も思う。

ツイッターは便利なツールだが、人や社会にトラブルを生じうる機能を改善するつもりがないようだ。

それらの機能を残すことでユーザーをつなぎ止め、利益を得たいという企業の都合もあるのだろう。

ところが、これだけの数の市民が生活している街だからなのか、市の公式ツイッターのリプ欄にメッセージを投げ込むという市民が希にいる。

自分のアイデアが当を得ていると思っているのか、他の市民が参加したムーブメントを狙っているのか、それとも考えが及ばないことを理解していないのか。

私の目には、奇行に走るツイッター依存者にしか見えない。

ツイッターはバカ発見器と揶揄されることがある。

その人たちが馬鹿だとは思わないが、行政の仕組みを理解していないこと、それと空気を読まずに行動することは分かる。

なるほど、確かに発見器だな。

そのようなリプ欄に個人が主観を投げ込んだら、市が発信する情報にバイアスがかかる可能性がある。

浦安市が真面目に取り組んでいるのに、まるでサボっているようなイメージを植え付けたり、デマが拡散したり、炎上するリスクもある。

ツイッターユーザーが自分の意見をツイートすることは個人の自由だが、浦安市の公式ツイッターに直接的に絡むことは歓迎しない。

だが、現実的なマターとして、7月1日からディズニーが再開することを懸念している市民は多いと思う。

平時からディズニーのスタッフの練度は高く、今後の感染拡大の抑止についても万全を期してくれるはずだ。

しかしながら、そこにやってくる観光客はどうなのか?

ゲートをくぐる前から夢の中、あるいは魔法にかかっているような人が多い。

ゲートから出た後も、夢と魔法から覚めない人たちが頭にネズミの耳を付け、車輪の付いたバッグを引っ張りながら駅や歩道を練り歩く。

想像しただけで心拍数が上がる。

この街に住む市民にも様々な考え方があって当然だが、日の出地区に住む私個人としては、ホテルに滞在するディズニー客の迷惑行為に困っている。

舞浜地区のホテルと比較して、ディズニーから離れた日の出地区のホテルは客層が違う気がする。

様々な訛りのある日本語が飛び交い、とりわけ、髪の毛を染めた若者たちや家族連れの夫婦の態度は以下略。

朝夕はキャリアバッグを引く人たちで歩道が塞がり、深夜のコンビニでは長い行列ができる。

遠くまで旅行にやってきて、夕食がコンビニの弁当でも構わないが、市民の私は仕事と通勤で疲れて浦安に帰ってくる。

声のボリュームとテンションを下げてほしいところだが、ディズニー客の旅気分を壊さないように気を遣う。

浦安市の財政において、ディズニー産業からの税収の割合はあまり大きくない。

千葉県内の他の自治体関係者でさえ勘違いしている人がいるが、この街のインフラやサービスは、ディズニーからの税金が柱になっているわけではない。

それを知っている私は、当然だがディズニーに感謝しない。

妊婦や子連れが満員の路線バスで市内を移動し、ディズニー客が専用バスで快適に市内を移動する。

これが夢と魔法の国の外側だ。

ただし、このテーマパークはこの街、いや、この国にとって大切な存在なので、面倒事があっても我慢している。

ディズニー客にとって旅の恥は何とやらかもしれないが、私はそのホテルの近くの住宅街で生活している。

たくさんのディズニー客がJR京葉線を利用すると、舞浜駅や新浦安駅が混み合い、真っ直ぐに歩くことさえ難しい。

市外や県外の人たちからは「こんなところに住宅がある方がおかしいだろ!」という突っ込みがやってくるかもしれない。

住民の私でさえそう感じるが、実際には順番が逆なんだ。

浦安市は、条例によって舞浜地区のリゾートエリアと他の地区の市民の居住エリアを明確に分けておく必要があった。

最近では、市民が生活しているエリアまで、ディズニー客を狙ったホテルが増え、住み心地が悪化した。

街は人が住んでこそ街たりうる。それが分かっているのだろうか。

どうして、浦安市は住宅地でのホテルの建設を許可したのだろう。知ったところでどうなる話でもないが。

観光客や修学旅行生が押し寄せる状況が戻ってくるだけでも憂鬱だ。さらにコロナのことまで頭によぎる。

「だったら住むなよ!」という批判が飛んできそうだが、その通りなんだ。

妻の実家がある浦安には住みたくなかった。それが原因で体調さえ崩したこともあり、仕事も滞った。

早く引っ越したい。

新婚の頃、「新浦安は治安が良くて、便利で住みよい街だ」と義父母は圧してきた。

無視して都内に住んだら、義実家から色々なアレがあった。

妻も浦安での子育てを望んだ。

そして、新浦安に引っ越した。

すぐに東日本大震災がやってきて、液状化で街が崩壊し、私は被災者になった。

風呂にも入れず、猫砂で大便を垂れるという状態になった。

それから5年後くらいに、あまりに不便で無駄な電車通勤のストレス、それと義実家を含めた家庭のストレスが積み重なり、私はバーンアウトを起こした。

そして、引っ越してから10年以上が経ち、新興感染症が終息していない段階でディズニーが再開。

感染者を含めた多くの人たちが浦安にやってくることだろう。

踏んだり蹴ったりだな。

結婚を機に私の人生はより豊かになったはずだ。子供たちが生まれ、私は父親になった。

浦安に引っ越したことだって、子供たちや妻、義父母にとっては良かったはずだ。

しかし、私にとっての浦安は、必ずしも住みやすい場所ではなく、災いが続き、ストレスが溜まる街だ。

ディズニーの再開は決定事項であって、もちろんだが地域経済ならびにそこで働く人たちの生活にも関係する。

このテーマパークは、我が国において唯一無二の存在だ。たくさんの人たちとって、とても大きな存在だと思う。

子供だけではなく、大人だって非日常的な空間でリラックスすることは重要だ。家族の思い出にもなる。

ディズニーが再開できないような社会情勢にはなってほしくない。

ただし、ディズニーはディズニーだけで成立しているわけではない。旅行者が滞在するホテル、利用する公共交通機関、浦安市内のインフラなど、様々な存在があってこそ、ディズニーが成立している。

浦安市はディズニーを誘致した側だから強く言えないのかもしれないが、とりわけ新浦安の人たちがディズニーを大歓迎しているかどうかは意見が分かれる。

私のように我慢に我慢を重ねている市民だっていることだろう。生活においてデメリットはあるが、メリットは少ない。

その再開は数日後のことなのに、これからの展開を読むことは難しい。

他国のように遊園地で新型コロナウイルスのクラスターが発生しうるかどうか。

全国から人が集まるような状況で、群集の中に感染者が含まれていて、地方からやってきた旅行客が感染したとする。

その場合、ローカルな視点をどこに設定するかで話が変わってくる。

地方からの旅行者がディズニーで感染した場合、その後の潜伏期を考えると、その旅行者において陽性が判明したり発症するタイミングは、浦安から地方に帰った後になることだろう。

その場合には、ディズニーから地方に戻った先の自治体でのマターになることだろう。

浦安市あるいは市民としては対応の施しようがなく、感染のリスクも少ないと思う。

では、その前段階として、すでに新型コロナウイルスに感染した状態の旅行者がディズニーにやってきた場合を考える。

このウイルスは、無症候もしくは発症前の段階で人から人に伝播しうることが知られている。

つまり、体温チェックは必ずしも通用しない。かといって旅行者全員に検査を実施することも非現実的だ。

となると、浦安市内のホテルにおいて感染者が滞在する可能性を想定する必要がある。

ディズニーだけでなく、ホテルにおける対策が鍵になってくるな。

明日はランドだシーだと盛り上がっている宿泊客が、落ち着いて対応してくれるかどうか。

さらに、ディズニーが再開することで、JR京葉線内はさらに混み合うことだろう。

浦安市民に限らず、いわゆる千葉都民にとっても懸念の一つになりうるということか。

かといって、先行きが暗い我が国において、好き嫌いはともかく、多くの人々の心を明るくすることができる貴重な場所を閉じ続けることは難しい。

なんだか気が重いな。

浦安市に引っ越してきたことは、私自身の人生においては間違った選択だった。

23区に住み続けていれば、「へぇ、浦安は大変だな」と構えていられるが、市民として状況を受け入れることになる。

この臨場感は半端ない。

プライベートな悩みはともかく、市民としては、ディズニー客が滞在するホテルにおいては、感染を防止するための対応を徹底してもらわざるをえない。

それは浦安市民にとって無関係なことではない。

新型コロナウイルスに感染したディズニー客がホテルに滞在している時に発症すると、どこの医療機関を受診するのかという話になる。

これはタクシーの運転手から聞いた話だが、平時であれば、ホテル側あるいは旅行客がタクシーを手配して、浦安市内の医療機関を受診するそうだ。

今回は、どうやって滞在者を医療機関に運ぶのか。

また、医療機関におけるクラスターの発生は、よく知られている。

これが最も心配だ。

医師や看護師が感染した場合のダメージは大きい。重篤化しやすい高齢者も病院に通っている。

浦安市内の医療機関は、平時であっても浦安市民を守ってくださっているが、ディズニーの再開によって、さらにシビアな状況になることだろう。

では、陽性が確認された旅行者は、どうやって自宅に帰るのか。

治癒するまで浦安市内の医療機関のベッドを使うという形になるのか。

こんなに狭い街で、軽症者が一時的に滞在する施設を用意することができるだろうか。

加えて、ディズニーに関係したクラスターが発生したら、市川にある保健所だけでクラスターを解析することができるかどうか。

あまりに旅行者の人数が多く、往来する地域も複雑だ。保健所の手に負えないかもしれない。

すると、千葉県が政府に支援を要請し、我が国の精鋭部隊が浦安に派遣されるのだろうか。

小中学生の男子なら胸が熱くなる展開かもしれないが、マンガや映画のように格好の良いものではない。

市内の産業において働く市民、ならびにその家族をクラスターに巻き込んでしまった場合、浦安市のPCR検査センターで対応しうる人数なのか。

そのようなことまで、ディズニー、あるいはディズニーに関連して営業しているホテル群は責任を取らないことだろう。

いや、責任を取らないというよりも、取ること自体が困難だろう。ここまで減益を覚悟で営業を自粛して、ギリギリまで耐えてきたはずだ。

しかし、もちろんだが、全国から集まる客たちは、そこで住む人たちのことなんて気にしない。

この街は消費の対象でもある。それも浦安の現実の一つだな。

市内の医療機関でクラスターが発生したら、浦安に住む人たちの生活にも影響するかもしれない。

日本中から浦安に集まってきて、夢と魔法を楽しんで盛り上がる人たちの多くは、自分のことしか考えていないと思う。

自分は大丈夫だという根拠のない自信を裏返せば、サイコロを振るような確率論。

けれど、暗鬱とした世の中で、たまには明るい場所で笑いたいと願って何が悪いのかという主張も分かる。

また、ディズニーや関連産業だって営利を考えなければならないし、スタッフの生活もかかっている。

そのような背景の中で、感染の拡大を回避するには、行政と医療機関と企業が連携してスキームを構築しておく必要がある。

浦安という街は、その準備ができているか。現状でも精一杯なのに、さらにハードルが上がるというのか。

このような状況を想定して街がデザインされているはずがないし、市民の一人として、色々と覚悟する必要があるな。

ああ、浦安から東京に戻りたい。

どのベクトルからでも、その結論に着地する。