2020/06/04

レスポンシブな、あまりにレスポンシブな

ネット黎明期から親しんだ小部屋風のPC表示とスマホ表示で交互にスタイルを変えるという昔ながらのサイトデザインを好む私は、このご時世でも頑なにそれを守ろうとしていた。


しかし、さすがに限界を感じてきたので、仕方がなくHYPSENTのサイトをレスポンシブウェブデザインに変更することにした。

「レスポンシブな、あまりにレスポンシブな」というブログ(ここでの呼び名は録)のタイトルは、芥川龍之介の「文芸的な、余りに文芸的な」という文学評論のオマージュのつもり。

サイトを立ち上げる時、どのようなブログでも大まかな書き方の柱が必要かなと思い、自分が最も書きやすいスタイルで録を続けていくことにした。

 【昔の録】
  或文豪の文章スタイル

子供の頃から芥川龍之介の小説を読んでいたけれど、最近では彼の晩年の「私小説」的な作品が面白く感じる。

とりわけ、数年前から閃輝暗点と偏頭痛に苦しんでいる私としては、「歯車」という作品がとても興味深い。

私小説は、自分が経験したことを素材として文章にしていくというスタイルの小説のこと。

小説の中でのエピソードには脚色があったりもするが、それらのベースには筆者の経験が存在していて、時系列を比較するとよく分かる。

私小説のスタイルにも種類があって、筆者が経験したことをそのまま記述していく「客観描写」と、筆者が感じたことや考えたことを中心に記述していく「内面描写」という区分けになる。

芥川龍之介は志賀直哉の作品を好んだと言われている。志賀直哉の私小説は内面描写という印象があり、芥川龍之介の歯車や河童に通じるものがある。

では、「文芸的な、余りに文芸的な」において、芥川龍之介が誰と論争を交わしたのかというと、その相手は谷崎潤一郎だ。

まあ今でも大学の入試において、若者たちがこの評論についてもさらっと暗記するのかもしれない。

入試の受験勉強というものは、そこから一歩踏み込んだところに本当の面白さがある。

谷崎潤一郎の深淵な性的感覚については、あまりに深淵すぎるのでスキップし、この論争について回想する。

芥川龍之介と谷崎潤一郎が、「いつ」論争を交わしたのかというと、昭和2年(1927年)。「改造」という雑誌でお互いの意見を掲載した。

「何」について論争を交わしたのかというと、そのテーマは小説の「話の筋」の面白さや芸術性について。

芥川龍之介は、谷崎潤一郎のように非日常的な筋の面白さで読者を魅了したり、それをもって芸術的と呼ぶことに異を唱えた。

谷崎潤一郎としても、作風やポリシーがあるので反論したわけだ。

ブロガーであれば、ここまで来ると「なんだ、昔も同じような議論があったのか」と感じることだろう。

最初から最後まで「話の筋」が組まれたエントリーが並ぶブログがあったり、「話の筋」が整っていなくて筆者の経験をもとに二転三転するエントリーが並ぶブログがある。

アフィリエイトブログは前者のパターンが多くて、その他のブログも往々にして前者が多い。話の筋があった方がエントリーを書くことが楽で、しかも手っ取り早く情報を得たい人たちにとっては望ましいことだろう。

HYPSENTの録は後者に該当すると思う。話らしい話もなく、頭の中を文章にするだけ。

芥川龍之介が「文芸的な、余りに文芸的な」で主張したことや、歯車のスタイルを真似ていたりもするのだから、自然なことだな。プロスポーツ選手に憧れて、その姿を真似している少年くらいのレベルでしかないが。

さて、サイトをレスポンシブウェブデザインにすることにした理由だが、今のご時世では、PC/スマホの二段構えは不具合が多いから。

同じインターフェイスを使って録の文章を打ち込むわけだが、実際にはPC表示用のサイトとスマホ表示用のサイトがネット上に存在することになる。

検索エンジンとしては、どちらのサイトにも同じ文章が並んでいるわけで、判別が大変になるようだ。

それどころか、このクラシックなスタイルで記事を書き続けると、逆にサイトの検索エンジン最適化(SEO)の効果が大きく落ち込むらしい。

JimdoやWix、忍者ブログなど、一通りのブログサービスを使ったことがあるが、ここまでキーワード検索でヒットしない状態は経験したことがない。

クローラーがHYPSENTのサイトを巡回しているはずだが、「なんだこれ?」と混乱して、「まあ、いいか」と、そのまま帰ってしまうのだろうか。

さらに、私の端末では、ブラウザにアンチウイルスソフトをプラグインで組み込んで、ネット検索一覧に表示されたサイトの安全性を表示するように設定しているのだが、HYPSENTの安全性を確かめることができないようだ。

他のオンラインサービスを使ってサイトの安全性を確かめると、とりわけ問題は認められない。

つまり、PC表示だけのURLしかないサイトはともかく、PC表示に加えて独自にスマホ表示を用意しているサイトというのは、昨今では時代に取り残されているということだろう。

ネットに関わる企業としても、わざわざ少数派のユーザーのためにシステムを維持するとなると、コストがかかり過ぎてしまうわけで、それならば相手にしないという対応もあるのかなと思う。

これは情報通信分野に限らず、例えばサイクル業界でもよくあることだ。以前は23Cのタイヤが主流だったが、サイクル業界は25Cを推し始めた。

それでも23Cを使いたいサイクリストはいるはずだが、今度はホイール自体のワイドリムが主流となってきて、細身の23Cのタイヤ自体が使えないという話になってきた。

ディスクブレーキについては、あまりに推しが強すぎてユーザーとしても賛否両論になり、逆にロードバイク業界の衰退を招くリスクがあるような気がするが、それでも少なくない数のロードバイク乗りたちはディスクブレーキが普通のことだと、それを受け入れてしまう。

カーボン全盛であってもクロモリの鉄製フレームのロードバイクに乗り、23Cにも対応した手組のホイールを使う私としては、時代や周りが何を取り入れようとも、自分自身が好むスタイルを保ちたい。

けれど、さすがにウェブサイトのデザインは仕方がないな。レスポンシブで昔風のデザインを表現するしか手段がなさそうだ。

同じブログサービスでも「Jimdo」ならばレスポンシブウェブデザインを選択することは容易だ。

しかし、FC2ブログの場合にはテンプレートが限られている上に、設定がとても面倒になる。

HTMLに加えて、CSS(Cascading Style Sheets)まで、ああでもないこうでもないとカスタムを繰り返すことになる。

Jimdoであればタイトルや本文の欄、背景をクリックするだけで設定を変えられたりもするのだが、FC2ブログでは言語を書き換える必要があるわけで、慣れないとファビコンを変えるだけでも一苦労だ。

文字の色を変えたい時には、RGBの色見本のサイトにアクセスして、その番号を言語に書き込むという昔ながらのカスタムが必要になる。

しかも、運営会社からのサポートがあまりなかったりする。

金太郎飴のように量産されるテンプレートのデザインではなくて、自分だけのオリジナルのデザインをつくることを楽しく感じるユーザーがいることも事実で、私にはそれだけのスキルはない。

せいぜい、テンプレートとして用意されているデザインの中で気になる点をちょこまかと変えるくらいだ。

だが、Jimdoや他のブログサービスの場合には仕様として変更が難しいような細かな設定...例えば大きすぎるタイトルとか...そのような変更をサイトに加えることができたりもするわけで、これはこれで良しとしよう。

前回までは、PC表示とスマホ表示のそれぞれにおいて、黒を背景とした白文字のデザインを使っていた。クラシックな感じに見せようとして、線などを使った装飾を施したりもした。

今回は、日本の文化でよく使われる墨色をベースにして、限りなくシンプルに仕上げてみた。

文章は変わっていないのに、ウェブデザインが変わるだけで、内容の印象は随分と変わるようだ。

しばらくは細かな修正を続けていく。