2020/05/31

ロードバイクの28Cタイヤで轟沈

別にシリーズ化させたいわけではないが、「おお、これは面白いぞ」というサイクル用品を買って、思った通りではなくて轟沈し、牛肉に換算して無駄金を払ったことを後悔するというエピソードが続いている。


今回は28Cのロードバイクのタイヤ。

これ以上言わなくても結果は分かることだろう。

しかし、このタイヤは面白い。

朝、目を覚まして、妻の機嫌をチェックする。いつも通り子供に向かって切れている。

腹の底から響かせるような発声は母親によくあるが、私の鼓膜を振るわせる。

しかし、まだ大丈夫そうだ。今日こそ実走に行く。

明日6月1日は、パンデミック後の「新しい生活様式」が実質的あるいは本格的に始まる日になる。

感染者数がピークアウトしてから、しばらくの間があったが、ここからはどんな状況になるのか分からない。

世の中には、緊急事態宣言の解除を、感染症の終息だと勘違いしている人が少なからずいる。

頭の中では理解していても、つい気が緩んでしまっている人もたくさんいる。

第二波(中国からの一波、欧米からの第二波が合わさっていたので、正確には第三波)がやってくるかどうか。

公私ともにテンションを張りながらの毎日が続くことだろう。

この数日は自らの充電期間ということで、のんびりとブログを書いていたりもしたが、そろそろ更新が遅くなることだろう。

仕事が忙しくなると、数週間はブログが更新されないかもしれないが、大丈夫、私は死んでいない。

忙しくならないことを願う。

さて、愛車のクロモリロードバイクは28Cという太めのタイヤへの換装が済んでいる。今回のライドは28Cタイヤを試すという機会でもある。

そういえば、チェーンのオイルが足りなかったな。久しぶりのライドの前に、ロードバイクの最終チェックを行う。

BGMとして、オーディオから Coldplayの「A Sky Full Of Stars」 を流してみる。

曲も素敵だが、トレーラーの動画も素晴らしいな。肩肘を張らずに、自然体に物事を受け入れることの大切さを感じる。

似ても似つかないが、この時間はボーカルのクリス・マーティンさんになったつもりで走ろう。

昨今の社会的状況によって、私の気持ちは沈んでいて、何もしたくない感じがある。

けれど、素になって考えれば、地面が割れたわけでも、太陽がなくなったわけでもない。

マスコミやそれに紐づいた人たちが社会を煽ったこともあって、国民の心の中には酷くナーバスで重い感情が覆っている。

しかし、世界のデータを眺めて見れば分かる。日本のように、都市封鎖もせずに、ここまで感染症をコントロールしている国は珍しい。死亡者数だって一桁も二桁も少ない。

すると、今度は、日本のデータが信用ならないと言い出す人が出てきた。何があっても叩こうとするわけか。

しかし、人々が行政に対して不満を溜める気持ちも分かるわけで、とにかくテレビを消して落ち着くことが大切なのだろう。

今日のライドは、浦安市内のディズニー周辺を軽く走って、感覚を取り戻すというだけのコース。

いきなり100kmといった距離を走ろうにも、コンビニのトイレを借りることができるか分からないし、おそらく河川敷の遊歩道は人混みで大変なことになっていることだろう。

「浦安に住んでるんだったら、休日にディズニーに通ったりするんですか?」と言われることがあるのだが、私は家族と一緒にディズニーランドに行ったことがない。

若い頃、妻と一緒にディズニーシーに行ったことがあるが、以後は行く気もない。高い金を払って、一生懸命に行列に並んで、人工のアトラクションで騒いで、着ぐるみに手を振って、大して旨くもないスナックを食べて、それで楽しいとは思わない。

とにかく人が多くて、うるさくて、様々な臭いがして、感覚過敏の人には楽しむ前に苦痛がやってくることだろう。いや、それでも多くの人たちは楽しいはずだな。

ディズニーの周りをロードバイクで走ることは、平時ならあまり適さない。他県ナンバーの観光客の自動車が前を見ずに走ってきたりもする。

私が浦安に住んでいて、ディズニーの恩恵を受けることがあるとすれば、空港への高速バスくらいだな。

観光客が夢と魔法を楽しんでいる間、市民の私は押し寄せる観光客に対して苛立ちと絶望を感じている。

ただ、ディズニーが好きな市民にとっては、毎晩の花火が嬉しいらしい。人の感性は様々だ。

玄関先でビンディングシューズを履こうと思って取り出したら、肌寒い時期に取り付けていた爪先だけのシューズカバーがそのままになっていた。

そうか...時間が流れていたんだ...と神妙な顔になる。

一体、このパンデミックは何なのか。

感染症の脅威自体よりも、慌てふためく社会の混乱によるダメージが大きくはないか。

マスコミや政治、行政、職場、家庭、教育、学校、高齢化、さらには夫婦関係においてまで、それらの本質と課題が引きずり出された感じがある。

平凡に過ごしてきた社会や人の心は、ストレスがかかると、ここまでの変貌を遂げるのか。

私は、誰を守ろうとして、何と戦っているのだろう。

我が身を粉にして守る価値が、この社会にあるのか。

いや、そんなことを感じるのは職業人として正しくないな。

労働の対価として金を受け取っているのだから、仕事をするだけだ。

マスコミや一部の人たちの言動は目に余るものがある。

それが社会の本質だと勘違いしないようにしたいが、生活する中で目にする人たちの言動が気になる。

ストレスが加わった状況で我と欲が露呈した人たちは、数が少なくても目立つ。

緊急事態宣言が解除されてすぐに飲み屋に行って、酔っ払って電車に乗っている中年のサラリーマンを見かけたりすると、やはり、これも社会の本質の一つなんだろうなと。

ここまでストレスがかかって、平気でいられる人の方が少ないことだろう。

自宅がある日の出地区を出発し、シンボルロードを少し北上し、28Cのタイヤの感触を確かめる。

上の階に走り回る子供がいる騒がしい家族が住んでいたり、自宅で妻のボルテージが上がっていたりと、様々な脳への入力があって、私の心拍数は高いままだ。

これでも一時期よりは楽な方だ。

家を出てロードバイクに乗って走っていると、少しずつ心拍数が落ちていく。

運動をすると心拍数が上がるはずだが、逆に心拍数が90を下回るくらいに落ち着く。

風を感じ、日の光を感じる。

そこからケイデンスを上げると、心拍数が上がってくる。これが心臓の正しい使い方であり、心と身体の調和だな。

浦安市内の一般道は、予想通りに自動車が慌ただしく走っている。

まあこれが平時と言えば平時なのだが、新町も元町も、この街にはせっかちで我の強い人が多い。

人口密度が高い上に、自転車で、あるいは歩いて行けそうな距離を自動車に乗って移動する人も多いので、余計に道路が混み合う。

場所にもよるが、ここまでロードバイクでのサイクリングで走りにくい街は、千葉県内でも少ない。市川市や船橋市よりはマシかもしれないが。

さて、28Cの感覚は、走り出してすぐに分かった。

なるほど、1回のブルべのレースで、200kmや600kmといった尋常ではない距離を走るランドヌールたちが使うことがある理由はこれなのか。

太い28Cのタイヤで走ると、細身の23Cのタイヤに戻れなくなるという理由も分かった。

タイヤが路面をしっかりと踏みしめてくれて、とても安心感がある。

路面から伝わってくる振動も軽減されて、腕や腰の疲れも和らぐことだろう。

ロードバイクはとても面白いな。タイヤを変えただけで全く別の自転車のようだ。

しかし....重い。信じられないくらいに重い。

外出自粛期間でもスピンバイクを漕いでいたので、ペダルを回すことは辛くないが、トップスピードが全然伸びない。普段なら「これくらいで、時速30kmくらいだな」という出力で漕いでサイクルコンピューターを見ると、時速25kmくらいの数値が表示される。

タイヤの影響もあるだろうけれど、以前から気になっていた「Race 28 Wide」という極太のチューブの影響かもしれないな。

とにかく、走りが重い。まだ、ディズニーに到着していない入船橋の登りだけで自宅に帰りたくなった。

しかしながら、時速25kmくらいで走る分には、28Cのタイヤセットは快適だな。

まるで前後にサスペンションが取り付けられたかのような感覚だ。

路面の凹凸に対してハンドリングで気を遣うことも少ない。かなりの安定感だ。

ブルべだけでなくて、エントリーグレードのロードバイクに28Cのタイヤが標準仕様になってきているという理由はこれだな。

「ロードバイクに乗ってみよう!」と思った人が、クレジットカードを握りしめてセオやワイズに行き、注文からしばらくしてロードバイクが納品されたとする。

初心者の場合には、今までロードバイクに乗ったことがないのに、いきなりの車道での実走になる。

あの時の恐怖は、今でも覚えている。当時は23Cの細いタイヤが標準仕様だったから、転ばず無事に自宅にたどり着けるかどうかが不安で仕方がなかった。

あの時に28Cのタイヤがあれば、どれだけ楽だったろうか。

だが、ディズニーの周りの道路をグルグルと走ってみたのだが....ほとんど宣伝だと受け取っているサイクルメディアの売り文句は無視するとして、28Cを使っているベテランのライダーがブログに書いている程にこのタイヤが素晴らしいとは思えない。

どうしてだろう。最高速度が伸びないだけではなくて、走りがモッサリしている。

転がり抵抗が減ると言っている人がいるが、明らかにタイヤの摩擦による負荷を感じる。

また、28Cは衝撃吸収が良いという話だが、ここまでの吸収性が私のロードバイクに必要なのだろうか。

最短距離が200kmという過酷なブルベなら、疲れが違ってくるかもしれないが、私がサイクリングで走っても、せいぜい100km程度。

また、クロモリの鉄製フレームの場合には、25C程度であれば路面からの細かな振動が心地良い時もある。

そういった心地良さがない。28Cのタイヤがボムボムと振動を吸収して、走っていて暇になる。贅沢な悩みだ。

タイヤのことをひたすら考えながら、ディズニーの外環を周回する。これはこれで楽しい。

結局のところ、走っていて気持ち良い状態が、自分にとって適したセッティングなのだと思う。

そして、28Cタイヤは、私にとって、あまり気持ちが良くない。どうしてここまでモッサリしているのだろう。

ディズニーの周りには、所々に習志野ナンバーだけではなくて、足立ナンバーや杉並ナンバー、所沢ナンバー等を付けた自動車が並んでいる。

この人たちは、一体、何のために浦安に来たのか。休園しているディズニーを外から眺めようという人たちだろうか。

暇な人たちだなと思いつつ、休園していてもディズニーを眺めたいという依存...いや、熱狂的なファンかもしれないと思った。

しかし、浦安市民のサイクリストとしては、あまり歓迎したくもない。車線を塞がれて走りにくい。私の苛立ちが高まってくる。

これも人々の心の本質の一つか。

ディズニーシーの船舶の形をした張りぼて...いや、コロンビア号の前にロードバイクを停める。

NCM_305.jpg

再びサイクル用品の通販で轟沈したような気がするが、その理由を知りたい。

どうしてなのだろう。この違和感は、Race 28 Wideという重量級のチューブを軽いチューブに交換するだけで、改善するのだろうか。

そして、気づいた。

これは、失敗だ。

頭の中で Coldplayのアルバム曲を流しながら、クリス・マーティンさんの気分で走っていたのに、アノ曲が流れてくる。

ああ、この曲の脳内再生は、もはや止められない。

筋肉少女帯の「踊るダメ人間」だ。

そこから、私自身のイメージは、浦安のベイエリアに住み、ディズニーの周辺をロードバイクに乗って爽やかに走って休日を楽しむクリス・マーティンさん的な父親から、大槻ケンヂさん的ないつもの父親に戻った。

この曲は、私が何かの失敗をすると、必ず脳内再生される。

ネット上には踊るダメ人間のトレーラーが漂っていたりもするが、太宰治の「人間失格」のオマージュ、というかパロディだな。

そのトレーラーで所々に出現する仮面の男は、おそらく、デロリンマンというコミックに登場する「オロカメン」をモチーフにしていることだろう。

踊るダメ人間が収録されているアルバムのジャケットを見れば分かる。オロカメンそのものだ。

このアルバムのタイトルは、「断罪!断罪!また断罪!!」。このセンス、嫌いではない。

それにしても、自転車のタイヤといっても、前後で1万円の値段だった。これは痛い。

しかも、妻や子供たちの機嫌が良いタイミングを見計らって、大切な時間を使ってタイヤを交換した。

その結果が....これか。

私の表情もオロカメンになった。

中年親父の昔話だが、踊るダメ人間はライブの方が激しくて、天井からぶら下がっている首吊り人形と一緒に、両手をクロスさせて観客が一斉にジャンプすることが恒例だった。

あの一体感とシュールさは凄かった。

知らない人からすれば不謹慎だと怒るかもしれないが、ボーカルの大槻ケンヂさんは、筋肉少女帯の活動時に、うつ病やパニック障害に苦しんでいた。

彼は元々、後ろ向きな性格だったそうだが、急にバンドの人気が出てしまって耐えられなくなったらしい。

死の気配を感じて耐え抜いた人だからこそ、首吊り人形を笑い飛ばすことができるのかもしれないし、「ダメ人間の王国をつくろう、王様は僕だ!」とシャウトすることができるのだろう。

大槻ケンヂさんは、その後に寛解したが、現在でも疲れ切った人たちの話し相手になったり、ご自身の経験を書籍で紹介していたりもする。立派な人だ。

この教訓を心に刻むため、コロンビア号の前で1回だけダメジャンプしてから、居たたまれない気持ちで日の出地区に戻った。

今回のロードバイクでのタイヤ換装の失敗、それは、手組ホイールに28Cのタイヤを取り付けてしまったことだな。

私の手組ホイールは、職人さんに体重や走り方などを説明して組んでもらったものだ。

リムはマヴィックのオープンプロ、ハブがシマノのDURA-ACE、スポークはDTのコンペティション、11速に合わせて一部のスポークをDTのチャンピオンに変更して左右のテンションを合わせている。

ホイールの回転のバランスまで調整してもらったというこだわりの品で、この手組ホイールを使ってしまうと、完組ホイールに戻る気になれない。

自宅にはWH-9000-C35のホイールも吊るされているのだが、手組ホイールが我が家にやってきてからは、ほとんど使っていない。

加速や最高速度は完組ホイールの方が優れているのだが、職人が組んでくれた手組ホイールは、衝撃の吸収性や剛性が良くて、本当に走りやすい。

しかし、手組ホイールの場合には23Cのタイヤで走っている感じが、完組ホイールで25Cタイヤで走っている感じなので、そもそも28Cまでのタイヤは必要なかったようだ。

そして、パンデミックがやってくる前に、手組ホイールに25Cのタイヤを組み合わせたら走り心地がマイルドだったので、28Cにすれば、より安定して落車しにくくなるのではと思ったわけだ。

だが、手組ホイールに28Cを使ってしまうと、走りの重さばかりが目立ってしまって、ロードバイクの持ち味である爽快感や滑走感が減ってしまう。

確かに28Cタイヤはグリップが優れていて安心なのだが、走っていて楽しくない。

夜間の自転車通勤なら適しているかもしれないが、クロスバイクで走っているような感じだ。

オロカメンの表情のまま自宅に戻ってきた私は、家族に軽く挨拶してすぐに自室に引きこもり、ロードバイクを裏返して、ホイールを外した。

無言でホイールから28Cタイヤを取り外し、何らためらうことなく25Cのタイヤに戻す。

手組ホイールの場合には、23Cでの走行が不安、あるいは振動が気になるようなら、25Cに交換し、23Cと同じくらいのタイヤ圧にすると走りやすい。

これが、私なりの結論だな。

自転車通勤の用途であれば、28Cに極太チューブという選択もあり....どうなのだろう。通勤が楽しくないかもしれないな。

それにしても、痛い出費だった。

牛肉に換算すると、高級なステーキ肉が2枚くらい買える計算になる。

この痛い経験を教訓として、これからはもっと慎重になって轟沈しよう。