2020/05/18

28C対応のヤバいチューブが届く

今回の録はロードバイクのことしか記さない。いや、ロードバイクのチューブのことしか記すことができない。それくらいの衝撃だ。クロモリロードバイクのタイヤを25Cから28Cにサイズアップしようとして、注文していたコンチネンタルの28Cのタイヤが届いた。


それに合わせて注文しておいたチューブの迫力に圧倒されて、私の思考が停止した。もはや涅槃の境地にたどり着きそうだ。

この数年間で、ここまでの衝撃を受けたエピソードは数えるくらいしかない。

コンチネンタルのロードバイク用のタイヤの魅力の一つはタフネスであって、それを知らないロードバイク乗りはあまりいないことだろう。

コンチネンタルのサイクル用タイヤは、23Cと銘打っていても実際のタイヤ幅が24Cくらいあったり、25Cと銘打っていても実際のタイヤ幅が27Cくらいあったりする。

25Cでギリギリのフレームを所有していて、「そっか、25Cだから大丈夫だよね」と、コンチネンタルの25Cタイヤを装着してみると、フレームを擦ってしまって走行不能といった話も珍しくない。

そういえば、トレック乗りの私の友人は、昨今の25Cの流れを受けて、エアロフレームにコンチネンタルのGP4000の25Cを購入し、早速ホイールに装着したのだが、タイヤがフレームに擦りそうで使えないと嘆いていた。

実際には27Cくらいあるタイヤなので、路面からタイヤが砂を巻き上げたら、カーボンフレームが傷だらけになることだろう。

とても気の毒だが、私は4-SEASONしか使わないので引き取る気にもなれず、その25Cがどうなったのかを知らない。

23Cなら幅を23mm、25Cなら幅を25mmの規格に合わせるのがメイドインジャパンの心意気なのだが、コンチネンタルの場合には、包装箱に「Handmade in Germany」と書かれているくらいだから、規格なんて関係ないというレベルの職人気質なのだろう。

タイヤ職人がゴムを溶かして型に入れて、ロゴまで全て筆で書いたのならHandmadeという表示が正しいのかもしれないが、そのような細かなところは職人気質が吹き飛ばしてしまうのだろう。

では、本物のドイツ人と一緒に仕事をするとどうなのかというと、確かに強いこだわりがあったりもするが、物づくりについて日本人と似ているようで似ていないような感じだな。私はドイツ人のことがあまり嫌いではない。

そのドイツ人に対して、とても広い意味でメイドインジャパンについてどう思うのかと尋ねたところ、とても面白い返事がやってきた。

あくまで彼の主観ではあるのだが、ドイツ人の場合、より良い製品を作ろうとした時の考えの中心は、あくまで自分の中にあるそうだ。車にしろ、その他にしろ、自分がより良い性能だと思えるゴールに向かって進んでいく。

時に緻密に、時に大胆に。より良い製品を作れば他者が認める。しかし、その価値判断の主体は自分にあると。より良い製品は長く使っても壊れない。だからこそタフな製品を作る。そうすれば他者が認めざるをえないというロジックだな。

一方、ドイツ人の彼が考えるメイドインジャパンという存在は、より良い製品を作ろうとした時の考えの中心が、他者にあるのではないかという話だったな。

他者、つまりユーザーの好みや気持ちを察しながら製品を作っていくからこそ、どんな国の人たちの手に渡っても使いやすくて、長持ちする。

なるほど、そうかもしれない。

ドイツ人を敵に回すと大変に手強いが、いざ仲間になるとこれほど心強い人たちは少ないかもしれない。

日本人が英語を上手く話すことができないとイギリス人は馬鹿にしてきたりもするが、ドイツ人は馬鹿にしてこないことが多い。あくまで言語はコミュニケーションのための道具だという感じで、日本人のことを気遣ってくれる。

私なりに苦手なのはフランス人で、あのアジア人に対する以下略。

しかしながら、ドイツ人の男性いわく、妻にするならばドイツよりもフランスの女性の方がいいと力説していて、私には想像しえないヨーロッパの世界があるのだなと思ったりもした。

日本の関東出身の男性が、京都の女性の話し方や気遣いに魅かれるという感じなのだろうか。

実際に京都出身の女性と結婚すると大変だという話を知り合いの知り合いから聞いたことがある。

この地方では、本音と建前を使い分けることが文化になっているそうで、優しいと思って結婚してみたら実は厳しかったり、表向きは愛想がいいが、その裏では妻と一緒になって夫についてどんな悪口を言っているか分からない義実家との関係で苦労するとか。

あくまで知り合いの知り合いからの情報なので、それが本当なのかどうかは分からない。

その知り合いの知り合いは義実家との関係で精神を擦り減らし、心を閉ざしてしまったという気の毒な話を聞いた。

さて、25Cのサイズのタイヤが27Cくらいの幅があるコンチネンタルのタイヤなので、28Cになればどれくらい太いのかというイメージについては、ある程度は想像することができていた...はずだった。

そして、実際にGRAND PRIX 4-SEASONの28Cが届いたわけだが、包装箱を開けてタイヤを取り出す前に、すでにサイズ感が分かる。

23Cや25Cと比べて、明らかに包装箱が大きい。

そして、ホイールに履かせる前に、包装箱の中で折りたたまれて入っていたタイヤをメタルラックに引っかけて伸ばそうとしたのだが、あまりの太さに私の身動きが止まった。

このタイヤは、本当に28Cなのか?見た目だけでも30Cくらいありそうだ。

身動きが止まった状態で、どうしてこうなったのかを回想する。

パンデミックがやってきて、我が国では緊急事態宣言が発令され、外出自粛の要請がなされた。

その目的としては、感染の拡大を抑制し、医療現場の負荷を可能な限り抑え、重症あるいは重篤な患者の命を守るという戦略だと私は理解している。

そして、日本の中でも5月中に緊急事態宣言が解除される地域が出てきて、首都圏でも外出自粛が解除される時期が来るのではないかという実感がある。

今回のパンデミックは長丁場の戦いになる。ずっとテンションを張り続けていたら心身共に耐えられない。ある程度のところで生き抜きが必要になる。

室内トレーニングだけではなくて、実走に出かけたいというところがサイクリストの本音だろう。

とはいえ、医療現場での負荷をこれ以上増やさないためには、ロードバイクに乗っていて落車して入院という事態だけは避けたい。

整形外科のドクターはともかく、おそらく担当を越えてヘルプに入っているであろうナースの皆さんからの冷たい眼差しに耐えるだけの気力がない。

加えて、入院用のベッドが足りなくて手術まで自宅待機とか、救急車の中でたらい回しとか、日帰り手術といった事態も遠慮したい。

近場であっても、短時間であっても、ソロでとにかくロードバイクに乗るという想定の場合、落車しにくいように安定感のあるカスタムをロードバイクに施しておこうと思った。

25Cから28Cにタイヤを太くすれば、安定感も生まれるし、段差を気軽に越えて街乗りができるだろうと考えたわけだ。

そして、28Cのタイヤが届いた。今、ここだな。

タイヤが太くなるといっても、その厚みが同じままで外周が大きくなるだけだろうと私は想像していたのだが、どうやらタイヤの厚みも増している気がする。

いや、23Cでも25Cでも、地面に接する部分の厚さはあまり変わらないのだろう。むしろ、28Cではこの部分の面積が広いようだ。タイヤの幅が広がるのだから当然の仕様かもしれない。要は重くなる。

少しぐらいのグラベルならば、何ら気にせずに走り抜けられそうな感覚が、まだタイヤをホイールに付けてもいない状態で強烈にやってくる。

4-SEASONを使っていて、パンクをした経験は今までに1度しかない。夜中に通勤で葛西の付近を走っていた時のことだ。

突然、リアタイヤの圧が抜けて路肩に停車したのだが、3cmくらいある大きな木ネジがタイヤに突き刺さっていた。

しかし、4-SEASONは急にグリップを失うことも、バーストすることもなく、停車するまで耐えてくれた。

浦安ならまだしも、夜中の葛西で長居をしたくないと思った私は、タイヤブートを使っている余裕もなく、チューブだけを交換して走り始めたのだが、それでもコンチネンタルのチューブが4-SEASONからはみ出てくることもなく、自宅までたどり着いた。

それ以来、私は4-SEASONに高い信頼を置いていて、他の種類のタイヤを使わなくなった。

路面のコンディションが良い場合の走り心地で言えば、ミシュランの方が吸い付くようなグリップがあって好きなのだが、砂が浮いていても、路面が濡れていても、不意なタイミングで段差に乗り上げても、側溝でサイドを擦っても耐えてくれる4-SEASONの信頼性はとても高い。

とはいえ、カタログには、4-SEASONの重量が、25Cで240g、28Cで280gと記載されている。タイヤ1本で40gの重量増というのは、ロードバイク乗りであれば驚く話かもしれない。

包装箱をしげしげと眺めると、コンチネンタルタイヤの名物とも言えるマッシブなマダムが、もの凄い圧でこちらを見つめている。

最近では仕様が変更されたのだろうか。1人だったはずのマッシブなマダムが3人に増えていた。

ただ、太いタイヤにしようと思ったことは確かだし、それによってスピードが出なくなっても構わないと私は思った。とにかく安全性を追求したいと考えた上でのカスタムだからだ。

自称28Cのタイヤをメタルラックに干して形を戻している間に、別送で届いたダンボール箱を開ける。

こちらはタイヤのサイズの変更に伴って注文しておいたコンチネンタルの「Race 28 Wide」という名前のブチルチューブだ。2本単位の商品を3セット購入しておいた。

そして、箱を取り出してみると、どうも様子が変だ。

Race 28のチューブの箱と比べて、明らかに大きい。2倍くらいの厚みの箱だったので、2本単位のものが6セットも届いたのかと勘違いした。

きちんと測ってみると、Race 28 Wideの箱のサイズは、Race 28の1.5倍程度だ。しかし、今まで見慣れたチューブの箱と比べると、異様なくらいに幅が厚い。

嫌な予感がして、Race 28 Wideの箱の中身を取り出したところ、私の身動きがなくなり、思考が停止した。

ちょっと待て....このチューブをロードバイクに取り付けるのか?

Race 28 Wideというチューブは、ヤバいくらいのタフな雰囲気を漂わせている。

ここまでのロジックを整理したい。

コンチネンタルのロードバイク用の28Cタイヤを使おうと思った。うん、ここまでは大丈夫だ。

28Cのクリンチャータイヤを使うには、28Cに対応したチューブが必要になる。

いつも使っているコンチネンタルのRace 28というブチルチューブは、20Cから25Cまでのタイヤに対応している。

つまり、Race 28は、28Cのタイヤには規格外という非常にややこしい名前が付いていたりする。

そうなると、シュワルベが製造している15SVというブチルチューブも選択肢に入ってきた。このチューブの場合には、18Cから28Cのサイズのタイヤまで幅広く対応している。

しかしながら、コンチネンタルのことだから、28Cのタイヤだと言っているタイヤが本当に28Cである確証がない。おそらく30Cくらいの幅のタイヤを何の後ろめたさも感じずに世に出すことだろう。

そうなると、シュワルベの15SVのチューブでは使用時に無理がかかって、チューブが傷んでしまうかもしれないと、とても神経質な私は考えた。

カタログを探してみると、Race 28よりもサイズが大きいRace 28 Wideという製品が販売されていた。対応するタイヤのサイズは25Cから32Cだ。

タイヤとチューブの関係で言えば、28Cのタイヤがあったとして、①推奨される最大のサイズが28Cのチューブを使うか、②それ以上のサイズに対応するチューブを使うか、という判断になったら、②の方がチューブにかかる負荷は少ないことだろう。

ということで、Race 28 Wideを注文して、その製品が届いた。

ここまでのシミュレーションは適切だった。

しかし、包装箱のサイズだけではなくて、明らかに横幅と厚みがあるチューブを手にして、現実を受け止められずにいる自分がここにいる。

私はツールボトルに2本のスペアチューブを入れて走っているのだが、2本のRace 28 Wideをツールボトルに詰め込むという自信が湧いてこない。物理的に無理なんじゃないだろうか。

そういえば、Amazonでこのチューブを買おうと思った時、日本人からのレビューが異様に少ないことが気になっていた。

しかも、そのレビューの内容が「梱包も問題なくすぐに届きました」とか、「まだしっかりと使っていませんが期待を込めて5つ星です」とか、知りたいのはそこではないという評価ばかりだ。

より数が多い海外からのAmazonレビューを眺めてみると、確かに良い評価も認められたが、感情的になって大変なことになっている評価もあった。

ならば、日本人のブログでのインプレに頼ろうと思ったところ、どう見ても乗り込んでいるとは思えないニワカなサイクリストの「買ってみた!」シリーズのペラペラのエントリーしか見当たらなかった。

この種のアフィリエイトブログでは、アフィらしく段落で分けて、写真を貼り付けていたりもするが、「まとめ」の段落がまとめになっていない。サイクルブログによくあるパターンだ。

この程度のスカスカの文章ではなくて、もう少し細かく描写してくれないと製品のことが分からないのだが、他者のブログに文句を付けても仕方がない。

その製品を買うこともなく、メーカーの写真を無断転用して並べているアフィよりも良心的だと思うしかない。

とはいえ、写真を貼り付けることなく文章だけで録を記している私が指摘をしている立場でもないな。

サイクルブログでは、タイヤだとかパーツだとかを家庭用のはかりに載せて、「実測値との比較!」といったことがよくあるのだが、そのような面倒なことを私がするはずがない。

カタログ値で言えば、Race 28が100g、Race 28 Wideが125g。

25gの違いで、チューブのサイズがこんなに違うのか?Race 28 Wideをロードバイクに取り付けることが正気とは思えないくらいの太さを感じるぞ。

4-SEASONのタイヤを25Cから28Cにサイズアップすることで、1本あたり40gの重量増。そして、チューブをRace 28からRace 28 Wideに変更することで、25gの重量増。

合計で1本あたり65gの重量増か。

まあ、自分が数kg痩せれば問題ないというレベルの話なのか。

高速で回転する前後のタイヤがこれだけ重くなったらさすがに気づくのか。

いや、そもそもスポークが32本もある手組ホイールを使っている時点で、気にするような重さではないのか。

けれど、ここまで太いタイヤを付けて走ったら、どう考えても走りが重くなる。

タイヤが太いことの安定感による安全性というよりも、スピードが出なくて重いという鈍重さによる安全性の方が優ってしまう気がする。

4-SEASONのタイヤについては、もはや後戻りができないところにいるわけで、せめてチューブを他の銘柄にするという選択肢はあるのだろうか。

シュワルベの15SVの重量は105gだ。ストック箱をガサゴソと探していたら現物が出てきた。箱の中身を取り出して、Race 28 Wideのチューブの隣に並べてみる。

NCM_30.jpg

いや、これはどう考えてもサイズが違う。

私が頭の中でイメージするロードバイク用のチューブというのは、シュワルベの15SVでもゴツいと感じるくらいだ。

パナレーサーのR'AIRは28Cまでのタイヤサイズに対応しているが、76gくらいの軽量さで、とても薄い。

また、私は、以前、R'AIRを23Cや25Cのタイヤに取り付けて走っていたことがあって、走り心地は悪くなかった。

むしろ、チューブを変えるだけでこんなに走りが軽くなるのかと驚いた記憶がある。

しかし、グループライドでこのチューブを何度も破裂させた人を見かけたので、神経質な私は絶対に使うまいと心に決めている。

ということで、シュワルベの15SVやRace 28といった100g程度のブチルチューブが、走りと耐久性を天秤にかけた時の妥協点でもあったりする。

しかし、Race 28 Wideには、その天秤を支柱ごと折ってしまうくらいのインパクトがある。嘘だと思ったら、騙されたと思ってRace 28 Wideを買ってみればいい。25Cのタイヤにも対応しているチューブだが、25Cに入れるには勇気が要る。

実際のタイヤ交換でRace 28 Wideを使おうとしたら、「はたして、このチューブをロードバイクに使ってよいのだろうか。私の精神状態は大丈夫なのだろうか」という不安がやってくるはずだ。それくらいにゴツい。

シュワルベの15SVとRace 28 Wideを床の上に並べて、時に両者を手に取り、時に呆然としたまま10分間くらいの時間が流れた。

私なりに結論が全く見当たらない。

「まあそれでも、Race 28 Wideを使って実際に走ってみたら、思ったよりも違和感がなくて、使いやすかった!」という展開を予想することができない。

自転車通勤を続けていたとしたら、Race 28 Wideの用途もあることだろう。適正な空気圧であれば、どう考えてもリム打ちパンクなんてありえないし、尖った小石を踏んでも弾き飛ばしてしまうはずだ。

もしも、ロードバイクのライドというスポーツではなくて、バンジージャンプにおいてロープと足を結ぶという用途でチューブを使うのであれば、私は間違いなくRace 28 Wideを使うことだろう。

また、チューブを幹に回しながら大きな樹木を登るというエキセントリックなスポーツがあったとして、その競技でチューブを選ぶとすれば、私は間違いなくRace 28 Wideを使うことだろう。

しかし、ソロライドでRace 28 Wideを使ったら、一体、走り心地はどうなってしまうのだろうか。登り坂どころか、信号待ちのストップアンドゴーでさえ、「重い!」という悲鳴が出そうだ。

いくらタフな自転車用品が好きだとはいえ、限度がある。だが、せっかく買ったわけだから、一度ぐらい使ってみるか。

使ってもいないのに、ここまでレビューを引き延ばしてしまった。そのうち実際に使って、きちんとしたレビューを書いてみたい。

おそらく、そのレビューの需要はないと思われる。

[関連する録(実走編)]
ロードバイクの28Cタイヤで轟沈